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「ガンコロリン」 海堂尊

『ガンコロリン』


ガンコロリン

 著者:海堂尊
 出版社:新潮社




・『健康増進モデル事業』
・『緑剥樹の下で』
・『ガンコロリン』
・『被災地の空へ』
・『ランクA病院の愉悦』

以上、5編からなる短編集。

『健康増進モデル事業』
ひとり暮らしのサラリーマン、木佐誠一のもとに厚生労働省医療健康推進室から封書が届き、厚生労働省第三種特別企画・健康優良成人策定委員会のモデルに選ばれたと書かれていた。日本国民から無作為に三名選ばれ、半年間、健康を追求し、健康の大切さや素晴らしさを理解するために立案されたという。毎日上司に小言を言われ身体が不安になった木佐は、いかがわしいと思いながらも手紙に書かれていた電話番号に掛ける。担当者である久光に会い、いつの間にか契約締結が完了してしまった。翌日からアシスタントもつけられ人間ドッグを受け、日本一の健康マンになるためのプロジェクトが開始された。人工的な治療は一切許されてないため、不健康の原因を除去していくためアシスタントは木佐のストレス源を次々と除去していった。そのお蔭で健康になるだけでなく、仕事もとんとん拍子で出世し私生活も充実した毎日となった。だがプロジェクト最終審査で三人のモデル中最下位になってしまいアシスタントが外されてしまった。そしてまた木佐の周辺環境はがらりと変わってしまった。

待ち合わせた最上階のレストラン『星・空・夜』ってあのシリーズのレストランだよね?しかもここにいた独り言を大声で言う小太りの男性ってあの方だよね??どうやら室長であるあのお方がこのプロジェクトを企画したみたいだけど、面白いこと考えるなー。このプロジェクトに関わった久光やアシスタントも十分に面白い(久光さんは違う本でも出てきたような気がする)。このアシスタント、業務を完遂するため名前と過去の経歴を一切合切捨ててるので、呼び名は木佐が"アニキ三号"と付けてしまう。アニキって…元阪神の金本選手のファン?んなわけないか。

このプロジェクトいろんな意味で凄い。最初は楽しそうな企画かと思ったけど(やはり歩くことは健康にいいことなのだ)、一人の人間を健康優良にするため周囲がどんどん粛清されていくのはちょっと怖い。木佐が最下位なら他の二人のアシスタントは一体どんなことをやってのけたんだろう?なにより一番怖いのは、次年度のモデルには税務署と国会議員が選ばれてるということ。そこにアシスタントが張り付いたら…結末がおそろしすぎ。風刺ききすぎ。くわばらくわはら。

『緑剥樹の下で』
南アフリカのノルガ王国ステラ・キャメル、ベルデグリの木の下で少年トンバはセイと呼ぶ男に勉強を教わっていた。この木の下で教えることには意味があった。長老が呪いの木だから近寄るなと恐怖ばかりをあおっている。非科学的で間違った考えに異議を唱えるためにわざとこの木の下で教えてるのだった。ある日、トンバの幼い妹のシシィが病気になった。長老はの木に近づいたことで祟ったというがセイはマラリアだと診断するも、二日後に少女は旅立った。セイは祟りの謎の真相を突き止め、長老のところにいた陛下にも伝え、その日を境に祟りは潰滅した。病気の息子アバピを診てもらうため陛下はセイに参内の要請をする。高度な手術が必要だったため、政府軍とゲリラの戦闘と最中、セイが国境なき医師団の宿営地まで少年を送り届けることになる。だがその後セイは危険で無法地帯となっているステラ・キャメルに戻っていった。

情勢がすこぶる悪い南アフリカのノルガ王国で、治療をしながら少年たちに勉強を教えている日本人医師の話。少年がこの男性のことをセイと呼んでいたので私は途中までノルガ王国のセイという名前の男性だと勘違い。ベルデグリの木のことを、シラカバという故郷の白い木を思い出すと言ってる時点で日本人と気付くはずなのにそれさえも気づかず…。さらにさらに、陛下がセイのことを"トカイ"と呼んでたけど、私にはセイはあだ名でトカイというのがこのノルガ王国の男性の正式名なんだと解釈。で、陛下の息子の病気について話すシーンでバチスタ手術という言葉が出てきてやっと気が付いた。

トカイ……と、渡海っ?!セイって?渡海征司郎だ!そういえば『モルフェウスの領域』での感想で、「涼子が中学生の頃、アフリカの領事館で知り合った医務官ってあの人?まさかここで登場するとは思わなかったのでちょっと嬉しい♪」って私書いてる!そうそう、渡海先生のことだと思った記憶が!そうだった、アフリカにいたんだった。医務官だったのにどんな経緯でこの町に……。あまりハッピーな終わり方ではないのでその後の渡海先生が心配。

で、バチスタ手術が必要な陛下の息子アガビ7歳は……、wikiで『チーム・バチスタの栄光』の登場人物欄に「アガピ・アルノイド:南アフリカ、ノルガ共和国の反米ゲリラ少年兵。7歳。アメリカで受け入れ拒否されたため東城大学医学部付属病院でバチスタ手術を受けることになる。」と書かれてる!反米ゲリラ少年兵になってるけど、名前も年も国名も一緒。同一人物かな?

『ガンコロリン』
サンザシ薬品の創薬開発部の木下部長は、営業上がりのため新薬を作り出す研究部門で悩んでいた。なのでこっそり方針転換し新薬をここで開発するのではなく、新薬を開発している大学の研究室とタイアップすることにした。一年が過ぎ、極北大から画期的な薬を開発したと報告があった。早速北海道にある極北大薬学部倉田研に行くと、開発した倉田教授、助教の吉田が新薬について説明する。一言でいうと「飲むだけで癌を抑制できる夢の予防薬」でノーベル賞級以上の開発だった。倉田教授によってガンコロリンという名を付けられた新薬はあれよあれよと異例の早さでIMDA(国際薬事審議会)の薬事申請も通り認可される。日本医師会は懸念を表明するも、ガンコロリン発売後は癌が治る成果を出した。それによって癌治療の外科手術が激減し、外科医の腕は落ちてしまい消化器外科も消滅してしまった。このため外科医は絶滅危惧種と言われたが、癌が撲滅されたためそんな状態も容認されてしまう。ガンコロリンが発売されて二十年、ついにガンコロリンが効かない新たな新型悪性生物の癌が出現。外科手術を必要とする患者は増える一方。だが外科医は絶滅寸前状態で手術できる外科医はいなくなってた。

怖い。物語だとわかっていても現実味があって怖い。新薬を必要とする人から見ると、癌が治る夢のような予防薬が開発されたとなると一刻も早く認可されて欲しいと願うもの。一方で、それによって副作用しかり、何かしらのデメリットもあるわけで、この話はものすごく皮肉な結末になってる。まさかこういう結果になろうとは(><)。地球の免疫機構の戦略は人間より優秀すぎる。新型悪性癌→新薬開発→新型→新薬→新型……と永遠に続くんだろうな。

IMDAに取材に来ていたのは別宮葉子。そう、『螺鈿迷宮』『死因不明社会 : Aiが拓く新しい医療』『医療防衛 -なぜ日本医師会は闘うのか-』で登場した女性。取材で凍眠しているスリーパーの話をしているけど、スリーパーってもしかして『モルフェウスの領域』と何か繋がりある?『ナニワ・モンスター』でもサンザシ薬品が出てくるとか出てこないとか?ガスコロリン対策委員会の菊間は浪速で診療所をやってる開業医って書かれているので、『ナニワ・モンスター』に登場した菊間徳衛かと思われる。ちなみにサンザシの木下部長は調べてみると『ブラックペアン1988』にも登場してるらしい。

『被災地の空へ』
東北地方で大地震が発生。極北救命救急センターにDMAT(緊急災害派遣隊)が招集され、センター長代理の速水晃一は総勢5名で現地に向かう。満島を筆頭に蝦夷大、みちのく大救急、陸奥総合病院、出羽医療センター、浪速市、高尾総合病院のDAMATが揃い受け入れ準備をしていたが、やってくる怪我人は軽傷者ばかりで、津波で溺死した遺体の方がはるかに多かった。速水は死体検案書を書くことになったが、不満げな速水に対し総指揮の岸村が退屈そうな顔で仕事するのは仏さんに失礼だと注意する。また、極北救急で透析患者を引き取ってもらう際に速水に輸送機で患者を搬送してほしいと言う。速水はこの申し出にうなずく。

重傷者を治療することももちろん大事だが、岸本は救急医として命を引き戻すのも、医者として死者を看取るのもコインの裏表。片方だけできるやつはいないと言う。また、極北に搬送する患者と一緒に戻したのも医者として大切なことを教えてくれ、速水先生の成長を考えてくれてのこと。こうやって耳を傾けることが出来る速水先生は医者としてさらなる飛躍をしていくんだろうな。

速水先生はもちろんあの速水先生。看護師長の五條郁美は『極北ラプソディ』にも登場。五條と久しぶりに会った浪速ヘリのパイロットは極北救命のドクターヘリパイロットってことで大槻さん?二人が話す気の利く元極北救命センターCSは越川CS?『極北ラプソディ』の登場人物が多いので、この話は『極北ラプソディ』のその後って感じ?

『ランクA病院の愉悦』
売れない作家の終田千粒(ついたせんりゅう)はツイッターでウケ狙いでこんなペンネームにしたが、見事スベってしまい「おわりだ」と読まれる悲しい結末になっていた。片頭痛が悩みの終田はランクC病院に行くことにする。ランク付け病院というのは……たまたま世の流れで大勝した阿房政権が勘違いして浮かれまくり、TPPによって医療格差が出現。公立病院は一回の支払いが十万以上のランクA、一万以上十万未満のランクB、一万円未満で済むランクCに格付け。という訳で終田はランクC病院で直接先生の診察はない機械によるATMのような人工知能を掲載した自動診断ロボットのトロイカ君に診察してもらい薬を処方してもらう。そんな時、編集者Pが仕事を持ってきた。内容は雑誌「週刊来世」からの依頼でランクA病院とランクC病院を受診し、比較検討し満足度を個人的判断で決めるというものだった。早速依頼人RとランクC病院に行き、その後にランクA病院に行って診断をする。そして終田はあることに気付く。

阿房政権がTPPも参加って……。微妙に名前は違えど現実味ありありだぞ?で、物語ではTPPに参加した途端に自由診療移行にあたり前払いがクレジットカード決済に。支払できなければ受診できないという当たり前のようで一部の人には厳しい結果に。しかも日本医師会によるとランクC病院は診断ではなく星占いレベルと平然と言ってのける。診断を受けたいならランクB以上の病院に行けと。でも結局はどのランクに行っても結果は一緒。こんな医療制度イヤだ(><)。

自動診断ロボットのトロイカ君での診察は、画面上であてはまる項目を選ぶ。「イエス」「ノー」「?(よくわからない)」。「?(よくわからない)」を選ぶと東城大学医学部・不定愁訴外来の紹介状のプリントが出てくる。一応ここに取材依頼するも取材拒否。紹介状持ってるなら受診して欲しかったな~。もしかしたらあの先生が診察してくれたかも(^m^)

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