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「クジラの彼」 有川浩

『クジラの彼』  

クジラの彼 (角川文庫)

 著者:有川浩
 出版社:角川書店 角川グループパブリッシング






・『クジラの彼』
・『ロールアウト』
・『国防レンアイ』
・『有能な彼女』
・『脱柵エレジー』
・『ファイターパイロットの君』
以上6編からなる短編集で制服ラブコメシリーズ第1弾。

『クジラの彼』
数合わせのために合コンに参加した聡子は、そこで潜水艦乗りの冬原と出会う。意気投合した2人はそのまま付き合うことになった。呼び方が"冬原くん"から"ハル"に変わった頃、順調にいっていた交際に変化が訪れる。冬原が出航日も期間も寄港予定も部外秘の長い航海に入り、いつ連絡がくるかわからない遠距離恋愛に。不安な日々を送る聡子は、職場で社長のボンクラ息子に気に入られ残業や夕食にしつこく付き合わされていた。自衛隊三部作の一つ『海の底』に登場した冬原の番外編。

冬原と聡子が付き合っている途中で、横須賀でのパニック的大事件が起こっているため『海の底』の事件時とほぼ同時進行の番外編。潜水艦をクジラに例え、「沈む」ではなく「潜る」と言った聡子のセンスが冬原にはかなりの殺し文句だった模様。が、めったに会えずメールですら2ヶ月ぶりな上そっけないない内容。こりゃ辛い。久しぶりに会うと思わず言ってはいけない(でも好きだから言ってしまう)言葉を発して後悔する聡子。待ってもらう立場の冬原は聡子のためにと思って発する言葉が聡子には痛い。でも冬原は聡子のことをよくわかっており信頼してるからこそ、彼女の前だけ弱い部分を見せるわけで。待ったり待たせたりする中で信じ続けるのはお互い信頼してないと難しい。聡子が一般の女性ということで、今作品の中で一番理解しやすく言動も普通で、お互いの絆が深まり良かったねーと素直に思えた内容でした。

『ロールアウト』
航空設計士の宮田絵里は、航空自衛隊から受注を受けた次世代輸送機について、要望をヒアリングしに小牧基地を訪れた。そこで案内役の高科三尉から男子トイレ内が通路と言われ、仕方なしに通る絵里。だがトイレにまつわる戦いはまだ序曲だった。高科三尉から「トイレをコンパートメント式にしてほしい」という要望を受けるが、各部との兼ね合いで難しかった。だが高科三尉から現実を見せられた絵里は、個室トイレの要望が通るように頑張るが、社内の風当たりが強くなっていくばかりでなく、高科三尉との仲を誤解され厳しい立場に。数日後、高科三尉はある行動に出る。

遠回りであってもちゃんとした通路があるのに、外部の女性に説明もなく男子トイレ内を通らすの?近道ならせめて最初に一言、説明をしてから通すのでは?とか、言いたいことはわかるけど高科のメーカー側の絵里への横柄な口の利き方はどうなの?(絵里の顧客に対する態度もしかり)とか、絵里の方も男子トイレを通るのも仕事と割り切りるとか、どうしても嫌だだったら1人でも遠回りの通路を使うって言えばいいのに、とか、いろいろ疑問に思うこともありましたが、実際に使う自衛隊員にとっていかにトイレが重要なのはわかりました。でもよ、でもよ?この展開で恋愛に発展するのは多少無理があるような…。最後のやり取りはクサすぎて苦笑しちゃった。

『国防レンアイ』
陸上自衛官の伸下は、同僚女性で腐れ縁の三池が失恋するたび一方的に呼び出され、毎回毎回飲みにつき合わされ愚痴を聞いていた。"ある事"が起こってから伸下は車で行き、お酒を一滴も飲まず足代わりにもなっていた。そういう関係だが、実は8年間、伸下は三池のことを想い続けていたのだった。ある日、2人で行ったレストランに三池の元彼と偶然鉢合わせ…

冒頭の1.5ページに書かれている女性陸上自衛官に対する伸下の考え、女性の私でも納得!そんな中、職場恋愛をし痛い目にあった三池は、新隊員女子にその教訓を兼ねて檄を飛ばしてる。しっかし8年間も隊内恋愛はしない!と頑なに言い切っている1人の女性を想い続けるって凄いなぁ。しかも今までの恋愛遍歴を事細かく知ってる相手を。恋多き三池だけどそれなりに悩みはあるみたいですが…。伸下のレストランでの男を感じさせる対応には私も惚れ惚れ。結果、行き着くまでの経過がどうであれ、恋愛下手と思われる2人の恋の結末は、やはり信頼感が大きくものを言うのかしらん。というよりこんな三池を受け入れる男性は伸下しかいない?!

『有能な彼女』
自衛隊三部作の一つ『海の底』に登場した夏木の番外編。『海の底』で最後に再会して以来、海上自衛隊の夏木は防衛省の技官となった望と付き合っており、上陸の際にはウィークリーマンションを借りて一緒に過すようになっていた。"30過ぎたらプロポーズするの気後れするよ"と10年来の付き合いがある冬原に言われており、まさしくその渦中にいた。結婚を考えてないわけではないが、彼女は若くて美人なだけでなく、技官としても優秀で夢も希望もある主流派として前途洋々。対し自分は隊内で問題児な上、潜水艦乗りで連絡が取れない事が多く、さらにいつも言葉で望を傷つけてばかりという引け目があった。

『海の底』で夏木は恋愛に不器用だはわかってましたが、こんなに自分に自信が持てない男性だっけ?航海に出る度に望みは自分を待っていてくれているかと不安になったり、自分と結婚するのは望みにとって重荷ではないのか、そもそも望は自分と結婚する意志があるのかと。それよりびっくりしたのが望の変貌ぶり!夏木としか本気で喧嘩できないとか、いくら泣かれるより怒ってた方がマシって言われたからって、同性の私から見てもかなりメンドクさい女性になってる…。夏木さん、いくら引け目があるからといっても少し甘やかしすぎなんじゃ^^;ってかこんな自分と付き合い続いているのはすべて望のお陰と夏木自身が思ってるんだからどうしようもない。恋愛が2人を変えたのか、もともとの性格が明るみに出ただけなのか?どっちにしろ、勝手にやってちょーだいって感じでした(笑)そういや本作の中で夏木と聡子が既に結婚しており、既に子供が2人もいる!夏木&望よりも、夏木&聡子の方が興味津々。

『脱柵エレジー』
自衛隊駐屯地や基地から隊員が脱走することを隊内用語で"脱柵"と呼ぶ。脱柵の理由として人間関係が巧くいかない、訓練についていけない、規則だらけの集団生活が嫌になった等々。そして多くはないが昔から色恋沙汰があった。ある日、彼女に会いに脱柵しようとしていた若い隊員がいたが、上司の発見により未遂に終わった。そんな若い隊員たちに清田二曹は自分の経験談を繰り返し話していた。

彼女に会いたいと言われ、見つかれば重大な処分が待っているのに脱柵する若い隊員たち。だが彼女はまだ若く自分の言った言葉に責任がない。で、結局は辛い結果が待っているという。そんな話かと思っていたら、最後にそこ?!しかもなんだろうこのキレイなまとめ方は…。男性30歳、女性25歳なのになんか落ち着いた恋だなぁ。同じような年頃の『有能な彼女』と比べて雲泥の差。といいつつ、この2人も1年後には『有能な彼女』と同じようになってたりして。

『ファイターパイロットの君』
「パパとママが初めてチューしたところはどこ?」と5歳の誕生日を迎える娘から聞かれた春名高巳は、妻でありファイターパイロットの光稀と初めてデートをした時のことを思い出す。自衛隊三部作の一つ『空の中』に登場した高巳と光稀の番外編。

家庭に入らずパイロットの仕事を続け、娘が生まれて半年で訓練に復帰したことが高巳の両親は納得いかない。そのことが光稀の耳に入らないようするが、やはり少なからず入ってしまう。そんな時、高巳は自分が至らないからだと悔しがる。妻の仕事を十分理解し、娘には母親がどんなに素晴らしい仕事をしているかちゃんと聞かせる高巳。なんて良い夫であり良い父親なんだろう。光稀の初デートもありえないほどのウブさで可愛いし、仕事も一生懸命で家族も大事にしてる。光稀の職業は特殊ですが、家庭を持ちながら働く女性の大変さや、義理の両親からのプレッシャーという面では一番現実に近い話かも。愛情が溢れていてこの短編集の中で一番好きな話でした。ドッグタグのくだりには笑ったw光稀さん可愛いすぎ。


カップルのうち片方だけが自衛隊だったり、両方ともが自衛隊だったりの6編。今回もラブ路線まっしぐらの作品でしたが、中にはこんな彼女イヤかも…と思ってしまった作品もちらほら。でも『有能な彼女』と『ファイターパイロットの君』は、未確認生物や巨大巨大エビが大量発生というトンデモない状況で知り合ったカップル。これを乗り切ったんだからある意味最強カップルなのかも^^裏表紙に「制服ラブコメシリーズ第1弾!」とあり、第2弾は『ラブコメ今昔』とあったので読まなきゃ!と思ったら3年前に既読でした^^;第3弾はあるのかなぁ?

-2 Comments

孔雀の森 says...""
TKATさん、こんばんは♪
今思い出しました!
冬原クンって、イケメンなのですよね。
聡子は合コンの席で、その顔が好き、みたいなことを
言ったんでしたっけ?
「沈む」でなく「潜る」と言った聡子に惚れた冬原クン、
自分の仕事に誇り持ってるんだなあと感じました。

夏木クンのことはよく覚えていないのですが、望に対して
あんまり自信がない様なことを思っているんですね。
望もなんだかややこしい感じですね。
このへん、もう一度読んでみたいです。
でもなんだかんだいってもお互いすごく好きなんですよね。
望にとっては初恋成就ということかしら~

春のポカポカ陽気の中、胸キュン気分をいただき、
さらにあたたかくなりました。(暑いくらいかな:笑)
ほんとにありがとうございました!!
2012.04.09 23:30 | URL | #W/rA3xXw [edit]
TKAT says...""
孔雀の森さん、こんばんは☆
そうですそうです、冬原クンはイケメンなのです^^
キャラ的には「図書館戦争」の小牧教官って感じですね~。
有川さんの本に登場する男性って、口が悪かったり容姿が普通でも
基本、"イイ男"が多いですよね。
実際こんなできすぎた男性いないよっ!って突っ込みたくなるぐらいw

>聡子は合コンの席で、その顔が好き、みたいなことを 言ったんでしたっけ?

すごい!すごいです!4年前の感想にコメントして申し訳ないなぁと
思ってましたが、孔雀の森さん驚異の記憶力です!
数年前に読んだ本の内容を思い出すのは頭の活性化に繋がるのかしら?
孔雀の森さん、私の古~い日記にもどんどんコメントください(笑)。

>春のポカポカ陽気の中、胸キュン気分をいただき、 さらにあたたかくなりました。

桜も満開の中、幸せな本を読むとこちらまで胸キュン気分になりますよね♪
胸キュンという言葉を聞くと、どうしてもYMOの『君に、胸キュン。』の
サビの部分が頭の中をこだまします(笑)。古っ!
2012.04.10 19:48 | URL | #- [edit]

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有川 浩『クジラの彼』
  出版社: 角川書店      刊行年: 2007年 <内 容> 以下6編の短編小説集です。 ①クジラの彼 ②ロールアウト ③国防レンアイ ④有能な彼女 ⑤脱柵エレジー ⑥ファイターパイロットの君
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