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「写楽 閉じた国の幻」 島田荘司

『写楽 閉じた国の幻』

写楽 閉じた国の幻

 著者:島田荘司
 出版社:新潮社





<簡単なあらすじ>
写楽―――寛政6年(1794年)に江戸に突如現れ、10ヵ月の間に140数枚にも及ぶ作品を発表、その後、姿を消した浮世絵師。大きな謎に包まれており、本名、出身地、生没年だけでなくどんな人物だったかさえ一切記録が残っていない。


・10ヵ月という短期間のみ現れなぜ忽然と姿を消したのか
・当時江戸一と言われた版元の蔦屋重三郎は、どんな理由で無名の写楽作品を高待遇で大量に出版したのか
・前期と後期で大きく作品の質が異なるのはどうしてか
・歌舞伎のスターだけではなく、当時誰も描かなかった脇役の作品が多数あるのはなぜか
・写楽の一部始終を知っているはずの蔦屋重三郎、蔦屋工房の絵師たちは、なぜ誰一人写楽に関し口を開かなかったのか
700ページ弱という長編ですが、簡単に言うと人生のどん底を経験した一人の浮世絵研究家が、偶然手に入れた肉筆画をきっかけに、ある事故で知り合った女性教授の助言に助けられながら写楽の疑問を検証し謎を解いていくという現代編と江戸編から成る大作ミステリー。

<感想>
このミス2位という理由だけで借りしまったのですが、写楽が誰なのかわかっていないということしか知らず、様々な仮説があるということも知りませんでした。こんなに謎だらけだったなんて初めて知りびっくり。
写楽に関する通説や時代背景、当時の絵師たち、彼らの特徴など知らない私ですが、これでもか!というぐらい(多少しつこつぎるぐらい)様々な仮説、写楽の特徴、時代背景を延々と書いてくれてるので前半部分で基礎中の基礎だけは何とか知ることが出来ました(と思ってます)。だけどド素人なのでこれらの説明や作中に出てくる資料など、どこまでが真実でどこからがフィクションなのか全くわからない~^^;

仮説を立てる→調べる→実証できず→仮説を立てる→調べる→おや、もしかして?
とこんな風に一つ一つ可能性があるものに関して立証していくのですが、ここに重要な助言をしてくれるのが日本語・英語・オランダ語OKの片桐教授。時おり意味深な言動をするので、重要な何かに絡んでいるんでは?なんて思ったりも。が、現代編がなんとも中途半端に終わってしまったので真相はわからず…。

そのあたりの事情は後書きに書かれていました。予想以上に写楽に関するストーリーが長くなりすぎたようで、残念なことに現代編のストーリーが書ききれなかったらしいです。なるほどねー、どうりで現代編は中途半端感がありました。20年以上も研究してきた写楽に関する事柄を早く書きたかったのか、さっきまで家族についての内容だったのに写楽に関しての記述になるとまるで論文を読んでるみたいにトーンが変わります。丁寧なんだけど長い!写楽、時代背景の説明記述だけでは小説じゃなくなるので、主人公のストーリーが添えられたという感じを受けました。事故は必要だったのかな?と思ったのですが、一応結果としては暗示的なものがあるので必要だったと。でもちょっと弱いような気が…。やはりまだまだ書き足りなかったんでしょうね~。

江戸編は最初、江戸っ子調の会話が読みづらかったのですが、江戸編Ⅲになって蔦屋重三郎の会話や街中に引き込まれ、時代背景は別として活気があって洒落っ気があって楽しそう。生きてます!って感じがして読んでいて楽しかったし感動すら覚えました。現代編での主人公の仮説を再現してるかのようで、版元の蔦屋重三郎を中心にどのように写楽が生まれ、どのような形で世に出すようになっていったのかが鮮明に。
時代を変えなければ!という気持ち、蔦屋重三郎がなぜそこまでして写楽の作品を世に出したかったのかという理由には蔦屋重三郎の前向きな思想が感じられます。ってかね、人物像とか時代背景については調べて書かれてると思いますが、会話の殆どは著者の想像域ですよね?このまま蔦屋重三郎のその後がわかる江戸編Ⅳが読みたいなー。

写楽はもちろんのこと、版元と絵師との関係や当時の歴史、歌舞伎、オランダ事情などこの本を読んで勉強になりました!あっさり写楽の正体が…と思っていたら意外なところに辿り着いたのでびっくり!著者が提唱する写楽の正体は今まで言われている通説をひっくり返すような結果なのかな?それとも今までもこの説はあったのかな?学術的にいい線いってるのかどうかはわかりませんが、写楽が誰であったかという謎解きは面白かったです。著者が疑問に思った5つの謎も確かに解ける。
200年経った今、残された資料から推測するしかない写楽の謎、もっと突飛な仮説でも小説なら面白く読めると思うのですが、20年以上も研究してきた著者だから、ある程度確証に自信を持って出した結論がコレだったんでしょうね。確実に実証された資料もあるみたいですが、島田さんの提唱する写楽の正体も仮説の一つなんだなと思うとやっぱり写楽の奥は深い…深すぎます。

ところでドイツの美術研究かユリウス・クルトが写楽をレンブラント、ベラスケスに並ぶ世界三大肖像画家だと激賞したそうですが、島田さんの出した結論だとするとユリウス・クルトが言ったことはどうなるんだろう?写楽とされた人物のことになるのかしらん。そうなるとなんかおかしなことにならない?まぁいいっか。

最後に写楽や他の絵師の描き方の特徴を述べる際に、図版も一緒に掲載してくれてたら嬉しかったかも。ついでに年表なんぞもあったらもっともっと嬉しかったかな。って欲張りすぎだねこれは(笑)。

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