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「恐ろしい話」 ちくま文学の森7

『恐ろしい話』 ちくま文学の森7 

恐ろしい話
 編者:安野光雅/森毅/井上ひさし/池内紀
 訳者:堀口大学/大山定一/山口清/阿部主計
    小池滋/丸谷才一/池内紀/種村季弘
    渡辺一夫/中西秀男/杉捷夫/田中西二郎
    河盛好蔵/深町弘三
 出版社:筑摩書房 <ちくま文学の森7>


『「出エジプト記」より』 文語訳「旧訳聖書」
『詩人のナプキン』 アポリネール
『バッソンピエール元帥の回想記から』 ホフマンスタール
『蝿』 ピランデルロ
『爪』 ウイリアム・アイリッシュ
『信号手』 ディケンズ
『お前が犯人だ』 ポー   
『盗賊の花むこ』 グリム兄弟
『ロカルノの女乞食』 クライスト
『緑の物怪』 ネルヴァル
『竈の中の顔』 田中貢太郎
『剣を鍛える話』 魯迅
『断頭台の秘密』 ヴィリエ・ド・リラダン
『剃刀』 志賀直哉
『三浦右衛門の最後』 菊池寛
『利根の渡』 岡本綺堂
『死後の恋』 夢野久作
『網膜脈視症』 木々高太郎
『罪のあがない』 サキ
『ひも』 モーパッサン
『マウントドレイゴ卿の死』 モーム
『ごくつぶし』 ミルボー
『貧家の子女がその両親並びに祖国にとっての重荷となることを防止し、かつ社会に対して有用ならしめんとする方法についての私案』 スウィフト
『ひかりごけ』 武田泰淳
この中からいくつか紹介。
『詩人のナプキン』
画家のプレロオグの家には4人の詩人が時々訪ねてき晩御飯をご馳走になっていた。ナプキンを順次4人が使っており、しかも洗ってなかったため肺結核にかかってた1人の菌が皆に感染してしまう。そして誰もいなくなった後、そのナプキンを拡げると・・・。
プレロオグは4人がこんな結末になると意図的にしたんじゃないよね?でも途中でプレロオグが言った通りになってしまう、そして最後の言葉から考えると4人の詩人は知ってたってこと?うーん、単純な話だと思ってましたが考えれば考えるほどわからない・・・

『爪』
元刑事のモロウは食べ物が美味しいある店で5年前にあった殺人事件を思い出した。お金を隠しておいた箱がこじ開けられ、てこずった犯人の爪が残っていた。そこで爪がはがれた犯人を捜すが、それを知った犯人はある行動にでる。
ラストはどちらかと言えば古典的感じがするのですが、私の中のウイリアム・アイリッシュも古典的なイメージがあるのであまり違和感なし。個人的には好きなラストなんですが、今読むとありきたりすぎでいまいちインパクトないかな~。

『信号手』
ある男性が信号手に声を掛けた。その掛け声から信号手といろんな話をすることになった男性。彼の悩みは大事故が起こる前に信号手は幻の声が聞こえるという。この信号手はどうなるのか。
読んでいくうちに信号手に声を掛けた男性がもしかして・・?!なんて期待を持たしつつ、信号手が聞こえる声とは一体なんぞやという疑問からめちゃくちゃドキドキしながら読みました。結果はなるほどね~という感じでしたが、信号手という時代を感じる中でも「どうなるの?!」という期待感は十分に持てます。

『お前が犯人だ』
資産家のシャトルワーズィが行方不明になった。彼の親友オールド・チャーリーは親身になっていろいろと対策を立てるが不良っぽいシャトルワーズィの甥がますます怪しくなるばかり。ところがひょんなことから真犯人が明らかになってしまう。
犯罪を犯す時、いつどこで誰に見られているかわからない。また度を過ぎた率直さは疑問を持たれたり反感を買ってしまうことがある。このからくりを明らかにした人物は、犯人に対し制裁をしたということでしょうか。ちょっと尋常じゃない方法だけど^^;

『盗賊の花むこ』
美しい娘は父親によっていいなずけができた。だが娘はいいなずけをどうも好きになれない。ある日嫌々ながらもいいなずけの家に行ったが、そこで盗賊たちが若い娘を切り刻んで煮立てて食べているのを陰で目撃してしまう。婚礼の日、娘は夢で見た話と前置きをした上で、皆の前で自分が目撃した内容を話し出した。
これってグリム童話の一つなの?!娘が盗賊と結婚する前に、盗賊の悪事を皆に知らせて悪者は処罰されるという話。これだけ聞くと普通のストーリーですが、塩をかけて人肉を切り刻んで煮て食べるって・・・私が子ども時分にこの童話を聞かされたらトラウマになってるよ~(><)。淡々としたストーリーの中、何気に残虐な行為が含まれてます^^;

『断頭台の秘密』
死刑因のところに高名な外科医がやってき、ある申し出をした。首を刎ねられたあとすぐ右の目蓋を3度閉じてほしいと。医学的に動くのではなく、人間の自我であるかどうかを確かめたいと。死刑因は承諾するが・・・。
医学のために実際ありそうな話。恐ろしい話ではないけど、医学的ではなく怪談のような趣旨だったら恐ろしい話になったのかも。

『剃刀』
床屋の芳三郎は剃刀を扱う名人だった。珍しく風邪を引いた芳三郎だったが、弟子に任せずフラフラしながらも自ら仕事をしていた。そこに若者が入ってき、顔を剃りはじめるが風邪のためどうもうまくいかない。疲れきった芳三郎はとうとう客の顔に傷をつけてしまった。その時ある感情がプツリと切れてしまう。
疲れている時に限って仕事がたて込み、うまくいかない状態でイライラ感だけがつのっていく。相手がのほほんとしてるとその態度が癪に障る。そんな中、自分が今までしたことがないミスをしてしまった時、何かが壊れてしまい狂気と化してしまうという話。苛立ちが極限まできてしまった時の人間の感情を上手く描いてるな~。人が壊れる瞬間ってこんな感じなんだろうなと妙に納得してしまいました。

『三浦右衛門の最後』
今川家から寵愛を受けていた三浦右衛門は主君を捨てて高天神の城を目指していた。城将の天野刑部なら助けてくれると思っていた三浦右衛門だったが、織田家と今川家の中間の立場にいる刑部は、今川家が陥落したことを知り織田家に三浦右衛門の首を差し出そうと目論んでいた。
死ぬことだけは嫌な三浦右衛門は「命だけは惜しゅうござる、命ばかりは助けて下され」と言うのですが、この時代の武士道では珍しい発言。勇ましく死ぬということが美学であったため、三浦右衛門の願いは無残にも散ってしまう。残虐な行為も当時は当たり前、それを考えると死に対する時代の流れがよくわかります。

『利根の渡』
利根川のむこう河岸に1人の座頭が何年もずっと立ち、ある人物を探してるようだった。不憫に思った平助は自分の小屋で寝泊りさせることにするが、盲目の座頭が太い針を隠し持っていることを知り怖ろしくなってきた。ある日、座頭の寿命が尽きる前に平助は彼の身の上話を聞くことになった。そして座頭が亡くなってから6年、利根川で1艘の船が転覆し1人だけが亡くなった。その人物とは座頭が探していた男だった。
もの凄い怨念です。でもよく考えたらこの敵討ちの話、なんか変・・・。座頭が不貞な行動をしたから盲目になった訳で、時代劇にあるような純粋な敵討ちとはちょっと違う。でもどんな理由でさえ、怨念&執念は届いた訳で・・・。

『マウントドレイゴ卿の死』
精神分析家オードリン博士のもとに、外務大臣のマウントドレイゴ卿が訪れた。彼は優秀な人物だったが、身分の低い者に対しては横柄で傲慢な態度を取っていた。そんな彼が見る夢について相談しにきたのであった。内容は毎回夢の中で下院議員のグリフィスが自分に恥をかかせ、下等で卑猥な行動をする自分を冷笑するというものあった。不思議なことにグリフィスも同じ夢を見ているらしく、夢の中の出来事を全部知ってるようだった。博士はある解決法をマウントドレイゴ卿に言うが、彼はそんなことをするなら自殺する方がましだと。すると本当に地下鉄の駅から線路に転落して亡くなってしまった。さらにグリフィスまでもが急病で亡くなっていた。
このストーリーを簡潔にまとめるのって難しい~(><)。夢の中で醜態をさらけ出し、夢の中でそのことを知ってる人物が実は同じ夢を見ており、現実で夢の中の出来事を知ってる素振りをする。さらに夢の中でその人物をビール瓶で殴ったら、翌日その人物が「瓶か何かで殴られたような気がする」と言ってたら?夢の中で殺人をしたら夢が覚めた時その人物は死んでる?なんてことをマウントドレイゴ卿が考えるのもわかるような・・・。
グリフィスに対しひどい仕打ちをしたことがあるマウントドレイゴ卿の妄想なのか、はたまた現実なのか、夢の中というのはまったく不思議。実際こんな奇妙な夢もあるんじゃないかと・・・。ないない(笑)。

『貧家の子女がその両親並びに祖国にとっての重荷となることを防止し、かつ社会に対して有用ならしめんとする方法についての私案』
子どもを養うことが出来ない両親から生まれた子どもたちの処置についての計画--それは一部の赤ん坊は子孫繁栄のために残し、未来の見通しが暗い赤ん坊は食用として貴族や富豪に売ること(皮は加工して手袋や夏靴にする)。このことによって様々な利益があるという話。
いろんな利益を読んでると、なるほどそりゃそーだとちょっとでも納得しそうになった自分が怖い・・・。というかこの私案はもっと怖い。タブーな事に踏み込んでしまった感が残る話なのですが、当時のアイルランドの状況が作者にこのような計画を考えさせたのでしょうか。最後に「自分の家族は関係ないけどね」というユーモア的(なのか?)で終わってるのが救いかも。

恐ろしい話といってもいろんなパターンがあるもんです。今回は私にとっては珍しく後半のストーリーの方が好きかな。

-2 Comments

kazuou says...""
このシリーズ、テーマからかなり拡大解釈して、作品を選んでいるところが特徴でもあり、魅力でもありますね。
「恐ろしい」というと、すぐ「超自然」を思い浮かべてしまいますが、心理的な「恐ろしさ」ということで、選択の幅を広げているように思います。

志賀直哉って、あんまり好きじゃないんですけど、『剃刀』は、すごく上手い作品だと思います。

『マウントドレイゴ卿の死』は、すごく好きな作品なんですよね。たしか僕も過去の記事で取り上げていたはず。いわゆる「奇妙な味」の作品なんですけど、作者の描写力が半端じゃないので、迫力がありますね。
2008.03.23 19:09 | URL | #- [edit]
TKAT says...""
こんばんは、kazuouさん。

このシリーズを5冊読みましたが、確かにテーマからかなり拡大解釈してますね。それによって幅広く読めるので嬉しいです♪

>「恐ろしい」というと、すぐ「超自然」を思い浮かべてしまいますが、

はい、超自然的なものをイメージしてました^^;心理的な恐ろしさも好きなんですが、今回は背筋がゾゾゾとするような感じはなかったかな。心理的描写で好きなのはやはり『剃刀』でしょうか。

kazuouさんは『マウントドレイゴ卿の死』がお好きなんですね。過去の記事で取り上げられてるということなので、今からおじゃまさせてもらいまーす♪

2008.03.23 20:06 | URL | #- [edit]

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