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好きな映画や小説etc「箱ちがい」 ロバート・ルイス・スティーヴンスン&ロイド・オズボーン
『箱ちがい』 THE WRONG BOX
著者:ロバート・ルイス・スティーヴンスン(Robert Louis Stevenson)
ロイド・オズボーン(Lloyd Osbourne)
訳者:千葉康樹
出版社:国書刊行会
<簡単なあらすじ>
同世代のまとまった人数の者が一定の額を出し、数十年経って最後まで生き残った者が元金を含めた金額が全部もらえる「トンチン年金」。
このトンチン年金で生き残ったのがフィンズベリー兄弟。そんな時弟のジョゼフが鉄道事故に遭遇。同伴してた彼の甥たちはジョセフに似た容貌の死体を発見。伯父が死んだと勘違いし、身内である自分達の手に年金が手に入らないので、生きてると細工をするため死体を大樽に隠して自宅に送る。が、この大樽をめぐりいろんな人物が奔走するハメに。ユーモアを交えながら描くドタバタ小説(かな?)。
<感想>
R・L・スティーヴンスンと義理の息子による合作。
「トンチン年金」は本当にあるみたいなんですが、本作に書かれてるように最後まで生き残るということは既に年老いており、いざ大金を手にしても自分自身は年老いてお迎えが近いのは確実。よって恩恵をあずかるのは身内というわけで。その身内が伯父はまだ生きてると細工したことが原因で様々な問題を引き起こしてしまうというストーリーです。
ジョゼフは兄と違い学問とは無縁。そのくせ誰かまわず自説をしゃべりまくる講演家(周りは大迷惑!と思いきや崇拝すつ人物も・・)。
普段から自由になりたいと思っていたジョゼフは鉄道事故を期に自由になるのですが、どこに行っても口が達者なおじいちゃんって感じ。
この甥の行動もわからないでもないですが、なんとも運が悪い方向に向かい、死体を隠した大樽が偶然のイタズラによって他の者へと渡ってしまい、その大樽を手にしたものは焦る焦る。そりゃそうだ。
上手~い具合に登場人物がどこかで繋がってるので面白いのですが、ちょっと出来すぎじゃない?と思ってしまうのはご愛嬌ってことで。
ユーモア小説としてはウッドハウスよりも前なんですよね。時代の違和感があまりないのですが、私が思い浮かんだのは映画『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』。内容的には全く違うのですが、本人の知らないところで思わぬ展開が起こったり意外なところで人物が繋がってたり・・・と、ストーリー展開が似てるところから映画にしたらきっと面白いんじゃないかと勝手に思ってます^^
少し手直しをしてキャストを間違わなければドタバタコメディとして十分面白いんじゃないかと思うんだけどな。ただのコメディではなく、たらい回しされる死体があったり、生活苦のあまり切羽詰ってる甥の緊迫した姿があったり、鉄道事故をきっかけに自分の意のままに進む伯父の姿があったり・・・きっと見所たくさんの映画になると思います。←私は知らないだけでもしかして既に映画化されてる?!
※1966年にイギリスで映画化されてるみたい。ただ日本では未発売
登場人物のキャラがわかりやすく読みやすいので面白く読めたかな。
これを期に『宝島』『ジーキル博士とハイド氏』を読もうかなと思ってます(←実は読んだことがなかった(笑))。
-2 Comments
今読むと、もう少し面白くできるんじゃない?と思ってしまいますけど、この手のジャンルの最初期のものだと考えると、むしろ出来がいいのかもしれません。
同じ、息子との合作作品では『難破船』がありますけど、こちらも似た傾向の作品だったので、息子の方がコメディ志向だったのかも。(ちなみに『難破船』のほうがずっと面白かったです)
スティーヴンソンを読まれるなら、『宝島』『ジーキル博士とハイド氏』よりも、最近新訳が出たばかりの『新アラビア夜話』(光文社古典新訳文庫)が、めちゃくちゃ面白いので、オススメですよ。
面白いと評判の『新アラビア夜話』を本当は読みたかったのですが、図書館になかったので代わりに『箱ちがい』を借りてきました^^;
今まで冒険小説に興味がなく、『宝島』を読むのも躊躇。『箱ちがい』はユーモア小説ということもあって、スティーヴンソン著書を今回初めて手にすることに。
勘違いから思わぬ方向へ転んだり、偶然が重なって登場人物が繋がっていくという設定は好きなので割と面白く読めました♪ジョゼフのキャラ(ウッドハウス著書に出てきそうなユーモアある人物)が好きだったのですが、登場シーンが少なかったのが残念!
『新アラビア夜話』も早く読みたくなってきました。600円ほどなので買おっと(笑)。