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2006.10.29 Sun 『マラマッド短編集』 THE MAGIC BARREL
著者:バーナード・マラマッド (Bernard Malamud) 訳者:加島祥造 出版社:新潮社 新潮文庫 <感想> バーナード・マラマッドを初めて読んだのは『笑いの新大陸 アメリカ・ユーモア文学傑作選』に収録されてる「ユダヤ人鳥」。かなり印象に残っていたところ、日頃お世話になってるkazuouさんにコメントで『マラマッド短編集』を教えていただき早速読んでみました。 ニューヨークの下町で育ったバーナード、両親はユダヤ系でロシアからの難民という背景からユダヤ人の生活に潜む暗鬱さとアメリカ的な軽快さを持ち合わせているそうな。そのことを全く知らなかった私は「ユダヤ人鳥」を読んで、なんてユダヤ系を重々しく尚且つ淡々と描いてるんだろうと思ってました。この短編集ではユダヤものだけでなく、どこか重苦しい雰囲気はあるものの軽快にラストをむかえるといったものまであり、バーナードという著者がなんとなくわかったような気がします。といってもこの一冊だけではまだまだマラマッドの良さは語るにはまだまだ甘ちゃん。そんな甘ちゃんなりに幾つか紹介。 『最初の七年間』娘の結婚相手を見つけようとする靴屋を営んでる男、そしてその靴屋で働いてるお金に対し欲のないポーランド難民。娘の幸せを願う父親とポーランド難民の切実なる思い、ユダヤ人に限らず現実にありそうな展開で考え深いストーリー。なぜ七年?と思ってたらその後の二年も含まれており、タイトルに<最初>と付くことで八年目からはきっと・・・。 『天使レヴィン』ここでは黒人でユダヤ人の見習い天使がある不幸な夫婦(正確には旦那のほう)のもとに登場するというもの。見下した目線だったのがラストでは・・。うーん、何か天使に対し都合がよくないか?!結局はラストの言葉通りのことが言いたかったんだろうけど(あれ?書いてて要点が間違ってるような気がする・・・)。 『牢獄』店で万引きをする少女に対し、その少女に勝手な万引き理由を思うだけでなく自分の正義ともいえる少女に対しての振る舞いや考えをラストではユーモアに描いている作品。自分自身の正義感に酔ってる感がある主人公が見たラストでの少女の態度とは?←この態度、結構好き(笑)。 『湖上の貴婦人』ユダヤ人ということを隠した故の愛の結末とは・・・。 『夏の読書』自分が働いていないと言うの恥ずかしく、ついつい読書をたくさんしていると言う少年。なんだろう、働いてなくても読書をしているとそれだけで尊敬の眼差しで見られるってのは。こういう時代なんだろうか?私なんてしょっちゅう図書館に行ってるけど誰からも偉い!と褒めてもらったことない(笑)。この短編では少年が大人への階段を一段登ったって感じで、ここまでの短編の中でラストが心落ち着いて読めた作品の一つ。 『魔法の樽』ラビに就く予定の男性は、結婚仲介業者に女性を紹介してもらうことに。しかし結局はちょっとした手違いから仲介者の娘に恋してしまう。仲介者が紹介してくれるまでの経緯は面白く読めます。ただ気になるのは父親である仲介者の「死せる者への祈りを唱える」という記述。そういや作中でも事務所は空の上という言葉や、主人公よりも先に仲介者が家にきたり・・・。この世の人間ではないような言い回し、これはどう解釈していいんだろう。kazuouさん、ヘルプ!! 短編集を読むときはいつも思うのですが、最初に収録されてる短編はいつも印象的。やっぱり冒頭はちょっとクセのあるものより凡人受けするような短編を収録するように出来てるもんなのかな?あるいはその作者を代表するような作品を? 今回この「マラマッド短編集」を読んで思ったのは、重々しくストーリーが進んでいくかと思いきや、ラストでは違和感なしに重い雰囲気を払拭してくれるような感じの短編だってこと。kazuouさんがおっしゃる通り、純文学としても、ユーモア作品としても読める作家です。 22:36 | [小説]K-O | edit | trackback(0) | comment(2) マラマッドの短篇では、かなり寓意が強いので解釈に苦しむ作品もままありますね。とくに『魔法の樽』。
主人公がラビであるということからも予想できますが、多分に宗教的な匂いがあります。 主人公のリオは、結婚仲介業者サルズマンを通して結婚相手を探すわけですが、その過程で、自分のわがままさ、自分勝手さを実感します。「いままで誰ひとり愛したことがない」「人間さえ愛せないのに、神様だって愛せるはずがない」とは、文中でのリオの述懐ですね。 そういう意味で、サルズマンは、リオに自己の卑小さ、神への本当の愛、というものを教えた師匠といってもいいと思います。実際、この作品でのサルズマンは明らかに、「天使」とか「神」の比喩で描かれていますよね。「キューピッドの矢を持った商人」「立ったまま昇天してしまいそう」など、その類の表現がいくつか目につきます。「事務所は空の上」というのも、そうした比喩として受け取っていいんじゃないでしょうか。サルズマンが浮きばなれした人間であることを遠回しにいうと同時に、「神」の寓意にもなっている、といったところでしょうか。 あと、最後の二行の解釈は非常に難しいですね。解説で訳者は、サルズマン父娘が亡霊なのではないか、と言っていますが、そういう解釈も可能ではありますね。どちらにしろ、サルズマンは霊的な存在として扱われている節があります。 結局のところ、厳密に解釈しようとすると、ますます謎が深まりますね。初読のときは、単なる結婚相手探しのラブストーリーだと思っていましたが、意外に深い作品です。 なるほど!結婚仲介業者は「天使」とか「神」の比喩で描かれているから所々そのような表現になっているんですね。確かに寓意的小説は意味を理解しようとすればするほど謎が深まるばかり・・・。
読み手が好きなように解釈できるような小説や経過や結果がはっきりとわかるミステリーだと深く考えず読めるのですが、宗教的な事柄が入ると間違った解釈をしてしまい、ストーリーそのものが理解できなくなることもしばしば。しかしこのようにkazuouさんに教えていただいたり、訳者などの解釈によって「そんな意味合いがあったのか」と自分が思ってみなかった解釈を知ることができてこれもまた楽し。 最近はジーヴスのように単純に楽しい小説ばかり読んでたので久々に頭が活性化されました(笑)。(←が、ジーヴスものも意外に侮れなかったりするんだな。) ホント詳しく、なおかつわかりやすく説明してくださって感謝感激です♪マラマッドは全体的に好きなストーリー構成なんですが、難解な小説には慣れてないので失礼しました。でもマラマッドはこの短編以外にも読んでみたいと思える著者ですね。 TKAT URL #- | 2006.10.30 22:12 | edit?
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