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「小悪魔アザゼル18の物語」 アイザック・アシモフ

『小悪魔アザゼル18の物語』 AZAZEL

小悪魔アザゼル18の物語
 著者:アイザック・アシモフ (Isaac Asimov)
 訳者:小梨直
 出版社:新潮社 新潮文庫   




<感想>
聞き手(アシモフ自身)が、ジョージという男性から小悪魔アザゼルを使って毎回人助けをする話を聞く短編集。
このジョージというのが、毎回聞き手に対してなにかしらの嫌味を言い、さらに自分がいかに素晴らしい人間で人に頼られる存在かをアピールするというかなりの皮肉屋さん。
しかも聞き手はジョージに食事をおごり、最後にはいろんな形で数ドルお金を巻きあげられる始末。
人を不愉快にさせる天才と言ってもいいかも。
自分からアザゼルのことを話しておいて、毎回聞き手に向かってなぜアザゼルを知ってる?と聞き返すジョージに対して大人の対応をする聞き手には拍手。

肝心の小悪魔アザゼルはというと・・・
先に小悪魔と聞くと、なんとなく可愛らしい雰囲気で、頼みは魂と引き換えに・・・なんてイメージですが、この本に出てくるアザゼルは違うんです。
身長2cmで皮膚は真っ赤、額には角が2本というミニ赤鬼のような風貌の男の子。
頼みを聞く代わりに見返りも求めない。そして自分は品があって力や才能を大げさに自慢する(実はジョージと似たりよったりの性格だったりするんだな、これが)。
そしていつも自分の世界で何かをしてるときにジョージに呼び出されるもんだから、喜怒哀楽もはっきりしてる。

お決まりのような感じですが、アザゼルはこの世のしくみをあまりよく理解しておらず、彼に頼んでもその通りに事が運ぶことがありません(やっぱりね~)。ハッピーエンドでかと思いきやそうでなかったり。
正確に事細かく説明して頼みごとをしないとダメなところは、映画「悪いことしましョ!」の悪魔と似てるかな。

全体的に私にはアザゼルはそれほどインパクトはなく、話の始めと終わりのジョージの皮肉めいた言動の方が気になってしまいます。
「小悪魔アザゼル18の物語」を読んで気に入った人は、この話の基となった「ユニオン・クラブ綺談」、そして推理短編「黒後家蜘蛛の会(ブラック・ウィッドワーズ)」もオススメ。

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「クリスビー物語」 おまけの感想

『クリスビー物語』 

 著者:鈴木光司、大石圭、北野勇作、小林泰三、牧野修、森山東

<感想>
まずはこの本について説明を・・・。
昼休みにコンビニに行ったところ、美味しそうなパッケージのお菓子が!
「あのキットカットがチョコを脱いだ!」
「チョコレートと文庫本がひとつになった!?」
というキャッチフレーズに惹かれ買ってしまいました。
そう、お菓子とセットで売ってるんです。

お菓子の感想は置いといて、お菓子に付いてた文庫本の感想を。
正直、6人の著者の中で知ってるのは「リング」の鈴木光司と「呪怨」の大石圭だけ。
しかも著書は読んだことがなく映画を見ただけの知識。
翻訳本に比べて日本作家をあまり読まない私にはちんぷんかんぷん
でも全く知らない分野の本を読むのもいいかも・・・ってな感じです。
もちろん日本作家本も読みますが、今までかなり偏って読んでたので最近は友達のオススメや他の方のブログなのを参考に開拓中であります。

肝心のこの本ですが、まず何に感心したかと言うとテーマ。
「あのキットカットがチョコを脱いだ!」というのがこのお菓子の重大要素な訳で、
本のテーマは<殻を脱ぐ>。
なるほど、うまいテーマを考えるもんです。
<殻を脱ぐ>といっても、一概に成長記の類を書いてる訳ではありません。
人間的に成長を描いてるのもあれば殻を脱ぐというそのものもあります。

お菓子を買った人を対象にした内容かどうかはわかりませんが、全体的にやっぱり日本的な感覚の短編かなと。
でも300円弱でお菓子と本を楽しめるのならいいかもしれない?
全ページ96pという薄さなので、日本の作家はあまり縁がなくて・・・って方はとりあえず読んでみるのもいいかもしれないです。
ただこの短編を読んで各作家の特徴が出てるかどうかは私にはわかりません・・・。

著者の簡単なプロフィールを読むと、ホラーやファンタジー系の作家さんたちのようなので
面白く読めるかどうかは読む人の好みによるのかな。

「新・読者への挑戦」

『新・読者への挑戦 -作者は誰だ?-』 WHO DONE IT?

 編者:アイザック・アシモフ(Isaac Asimov)&アリス・ローランス(Alice Laurance)
 訳者:汀一弘 他
 出版社:早川書房 ハヤカワ・ミステリ文庫   

<感想>
1983年に発行された、17人の作者によるアンソロジー。
ただ普通のアンソロジーと違うのは、作者が誰かわからず文体や作風から作者を予想しながら愉しめるということ。

収録作家
ジョン・ポール、ロバート・ブロック、ドロシイ・S・デイヴィス、
ローズマリー・ゲイテンビー、マイクル・ギルバート、エリザベス・グレシャム、
ジョー・L・ヘンズリー、エドワード・D・ホック、R・A・ラファティー、
ジョン・D・マクドナルド、フローレンス・メイべり、パトリシア・モイーズ、
レイチェル・コスグローヴ・ペイズ、ビル・プロンジーニ、ルース・レンデル、
ローレンス・トリート、ヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリンク
(アルファベット順)

例えばエドワード・D・ホックだと怪盗ニック、ローレンス・トリートだとミッチーとテイラーのシリーズなど、それぞれ持ち味のキャラクター(探偵や舞台)を用いない短篇集のため、それぞれ作者の著書を熟読して作風を知ってないと難しいかも。
しかももし作者が意図的に文体や作風を変えてるとさらに難しい・・・。
(この短篇集の中で、実際に意図的に変えてる作者がいるのかどうかは私にはわからず)

私は17人中、知ってる作者は数名で今回初めて読んだ作者の方が多く、ほとんどの作品が誰の著書かわかりませんでした。
それでも2名については予想通りで思わず嬉しくなっちゃいました(笑。
といっても1名につき、2~3作品候補を選んでたのですが

もちろん予想するだけでなく、ちゃんと解答もあります。
タイトルの横に26字のアルファベットによる暗号が書かれており、巻末に暗号解読法の記載があります。
これを解読すると作者が誰かわかるようになってるので、最初に暗号解読をして作者を知った上で読むのもよし、作者を予想しながら読むのもよしです。
この短篇が特に良かった!という作品ももちろんありますが、全体的にも面白く読めたアンソロジーで、今まで知らなかった作者の他の著書の読んでみたい気になります。

<文体についてのまえがき>や各作品のコメントをアイザック・アシモフが手がけてます。
ちなみに私が初めてアシモフを読んだのは、「鋼鉄都市」から始まりファウンデーションシリーズまで。それまでSFと位置づけられる本を殆ど読んだことのなかった私は、こんなに面白い本があったのかと当時夢中になって読んだもんです。
機会があったらアシモフの本をもう一度読み直し、感想を書きたいと思います(←多分思うだけで終わりそうな予感)。

「おとぼけオーギュスタン」

『おとぼけオーギュスタン』 AUGUSTIN

おとぼけオーギュスタン
  製作年:1995年
  製作国:フランス
  監督:アンヌ・フォンテーヌ
  出演:ジャン=クレティアン・シベルタン=ブラン、
      ステファニー・チャン、ギ・カザボンヌ、ノラ・アビブ、
      クロード・ペシェール、ティエリー・レルミット


<感想>
フランスを舞台にしたポエティック・コメディ。といってもお洒落な映画ではなく、主人公の日常をドキュメンタリーっぽく描いてる感じ。
ちなみに主人公は監督の実弟だそうです。

主人公はパートで1日3時間38分働きながら役者を目指す男。
緊張すると「え、え、え、え、っと、そそその」落ち着きのない喋りになってしまうがそこは本人も自覚済み。
自分がやりたい役にかなりの注文をつける主人公は、ある役のオーディションを受けることに。
肉体的な接触を極端に嫌い、マイナーな役やヘンな役はダメ、感情を扱う心理的なものもダメ、3枚目役もダメなどその他にも多数条件をつけるなんて、こだわりある男はやはり一味違う?!

まだその役に決まってないのに、その職業を身に付けるため見習いになろうとすぐさま行動に移したり、何事も自分にとって良い方に解釈し、我が道を行くマイペースの性格は<おとぼけ>というか何というか・・・。
<おとぼけ>と聞くと、私には笑いをわざと引き起こしてるイメージがあるのですが、この主人公はわざとそんな喋りをしてるのではなく、自然に会話がズレていくので<おとぼけ>という表現はちょっと違うような気も・・・。
でも他に適当な言葉が見つからないので<おとぼけ>が一番合ってるのかな。

掴みどころのないこの性格をコメディとして捉えるかどうかは見る人の判断によって変わりそう。
それでも主人公が過去に出演した映画やCMの説明は可笑しく、せっかく手にしたチャンスも最後には「そっちに行くか~?!」と思わず口にしてしまいそうに・・。

全体的に一風変わったこの映画。フランスでは大ヒットしたそうで、こんなフランス的な笑い(?)もあったのかと・・・。
私自身、完全にこの映画のツボには入らなかったですが、あと一歩でツボに入りそうなのに入らないもどかしさ、という微妙な感じ。
誰かに「面白くなかった?」と聞かれたら「そんなことなかったかな」、「すごく面白かった?」と聞かれたら「それほどでもなかったよ」と答えそう(笑。

続編で「オーギュスタン/恋々風塵」があるそうで、マギー・チャンと共演のラブストーリーになってるそうな。
「おとぼけオーギュスタン」でもほんの少し恋心が芽生えるシーンはあったものの、マギー・チャンとのラブストーリーとなれば興味ありますね。
機会があれば是非見たいところ。

「インファナル・アフェアⅢ」

『インファナル・アフェアⅢ 終極無間』 INFERNAL AFFAIRS Ⅲ 終極無間

インファナル・アフェア III 終極無間

 製作年:2003年
  製作国:香港
  監督:アンドリュー・ラウ(劉偉強)、アラン・マック(麥兆輝)




出演:アンディ・ラウ(劉徳華)、トニー・レオン(梁朝偉)、アンソニー・ウォン(黄秋生)、エリック・ツァン(曾志偉)、ケリー・チャン(陳慧琳)、サミー・チェン(鄭秀文)

<感想>
「インファナル・アフェア」3部作のシリーズ最終章。
「インファナル・アフェアⅠ」でヤンとラウの対決を描いており、「インファナル・アフェアⅡ」ではヤンとラウの若き日を。そしてこのⅢではⅠのヤンとラウの続きで、ヤンの殉職後からの設定となっています。
ⅡはⅠに回想シーンに出演してた若手俳優が主軸となっており、外伝のようになっているためⅡを見なくてもⅠ→Ⅲでも理解出来るようになってますが、Ⅲを見るには必ずⅠを見てないと全く理解出来ないので注意!

※以下はⅠを見た上での感想となってます。なのでⅠのネタバレ含。

ラウ(アンディ・ラウ)はヤン(トニー・レオン)の死後、密かに他の潜入マフィアを消そうと躍起に。しかし何かと邪魔をする保安部のヨン(レオン・ライ)。ヤンのボスであるサム(エリック・ツァン)と接触したり怪しい行動をするヨンに対し、ラウはヨンを疑い執拗に調べはじめ・・・。

他の刑事仲間と話すことなく、見張りを続けるのはもう異常!善人になりたいと思うヤンは徐々に精神が崩壊していくのですが、現実のラウとラウの妄想、そして回想シーンがごっちゃになっており、最初は少しわかりづらいかもしれない。突然いるはずのないヤンやウォン警視(アンソニー・ウォン)が登場したりするのでストーリー展開を把握するのに少し時間がいるかも?

それでもⅠとⅡを見てこのシリーズが好きな人にはとってはこのⅢはたまらなく面白い!!Ⅰ・Ⅱともに面白いのですが、このⅢではどんなシメをするのだろうと思ってたらさすが最終章、星10コあげたい(笑)。
前作までは見ることのなかったヤンの幸福な面々(表情も豊かになってます)、リー先生(ケリー・チャン)との出会いの経緯も知ることができます。また新たな登場人物も無意味に登場させてるのではなく、上手い具合にストーリーに重要な意味をなしておりよく出来てる!
生まれ変わりたいラウの心情、複雑な人間模様を巧みに描いているのもいい!義理人情に厚いⅠでも登場してるキョン、彼はホントにいい奴だわ・・・。

Ⅰ~Ⅲを通して軸がしっかりしており、ストーリー展開も凝っていてホントに満足いくシリーズ。
潜入捜査(あるいはスパイ系)を扱う外国映画は多々ありますが、それはそれ、これはこれという感じでむしろアジア映画では最高傑作じゃないかと。数ある香港映画の中でも最上級におススメ出来きます!香港映画が苦手な人でも大丈夫、というより従来の香港映画っぽさがないかも・・・。
個人的には香港独特ラブコメディ(あり得ない設定が面白い「君さえいれば」、アメリカ映画パクリのような内容でも満足出来る「月夜の願い」など)が好きなのですが、このシリーズは別。香港映画の超メジャー級俳優を揃えた出演者も見応えあり。

ところでアメリカでレオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン(ブラッド・ピット?)主演のリメイクがあるという話はどうなったんだろう?かなり前にこの話は聞いてたのですが、今は全く噂を聞かない・・・。もしかしてリメイクなくなった??

「老人たちの生活と推理」 コリン・ホルト・ソーヤー

『老人たちの生活と推理』 THE J. ALFRED PRUFROCK MURDERS

老人たちの生活と推理
 著者:コリン・ホルト・ソーヤー(Corinne Holt Sawyer)
 訳者:中村有希
 出版社:東京創元社 創元推理文庫   




<感想>
高級老人ホームが舞台となっており、そこで起こった殺人事件を同じ老人ホームの仲良し4人組が探偵の真似事をして解決していくというもの。

この事件の捜査にあたった警部補と刑事の2人は老人ホームの住居者に事情聴取するも、相手が老人だけにまともな証言は得られず。
仲間が殺されたことによって、もしかしたら同じ老人ホームの仲間が犯人かもしれないと仲良し4人組は独自捜査することに。
それぞれ個性がはっきりしており、何が面白いってこの老人女性4人組の会話!!
特に故提督婦人のアンジェラ・ベンボウとキャレドニア・ウィンゲイトは周りを気にせず思ってることは何でも口に出す、あー言えばこー言うタイプで良く言えば天真爛漫、悪く言えば超口達者老人?!
しかも好奇心も人並み以上に持ち合わせており、殺された仲間の部屋にこっそり入ったり証拠品を持ち出す始末。
警部補に「二度とこんな真似はしないように」とクギを刺されたにも関わらず、自分たちは老人ホームの知識があるし頭もしっかりしてるという自負、そして警察は自分たちには何も真実を語ってくれず赤ん坊扱いしてるという腹立たしさから捜査を続けることに。

ストーリー展開も良く登場人物が個性あって面白い小説はたくさんありますが、この「老人たちの生活と推理」が他の本と違うところはユーモアある中にも死がいつも隣合せということ。
老人が殺人を犯す理由(老人だから出来る殺人)を4人組の1人が語ってたり、口は達者だけど会話のところどころに自分は老いてるという自覚が見えたり・・・。
そして長く生きてる分だけそれぞれの登場人物たちにはいろんな過去があります。決して人に語れるような過去ではなかったり(時代に翻弄された過去もあり)、ただ単に楽しく過ごした過去など・・・。
それでも全体的には暗い内容になっておらず、ユーモアドタバタ風という感じ。
お金があればこんな高級老人ホームでの老後生活も楽しいかも?と思ってしまうほど。
そしてこの小説の中ではあまり目立たなかった警部補がオチではちゃんとインパクトを残してくれてます。
この警部補のしてやったりの言葉は思わず笑ってしまった!

ちなみに著者は実生活でも老人ホームに入居経験があり、趣味のフランス料理を愉しんだり世界中を旅行したり人生を謳歌する日々を送っているそうな。
(※「老人たちの生活と推理」のあとがきに記載されており、今現在の状況は違うのかも)

この本はシリーズとなっており(この本は1作目)、「氷の女王が死んだ」「フクロウは夜ふかしをする」「ピーナッツバター殺人事件」と続くようです。早く手に入れて読まないと!

「ぼくは怖くない」

『ぼくは怖くない』 IO NON HO PAURA

ぼくは怖くない
  製作年:2003年
  製作国:イタリア
  監督:ガブリエーレ・サルヴァトーレス
  出演:ジュゼッペ・クリスティアーノ、マッティーア・ディ・ピエッロ、
      アイタナ・サンチェス=ギヨン、ディーノ・アッブレーシャ、
      ディエゴ・アバンタントゥオーノ


<簡単なあらすじ>
ヴィアレッジョ賞を受賞したニコロ・アンマニーティによる同名ベストセラー小説の映画化。
イタリアのある小さな村に両親・妹と住んでいる少年。廃屋で偶然に穴を見つけ、宝物の詰まったほら穴だと思って覗くとそこには鎖に繋がれた男の子が。
それと同時に親たち大人がある事件に関わっていることを知った少年は誰にもそのことを言えず、1人悩んだ末の結末は・・・。

<感想>
兄弟や子ども同士の会話・遊びは微笑ましく、一面麦畑の中デコボコ道を自転車で走る姿は見ててほのぼの。
子どもたちの中でも既にボス的存在の子もいたり、年齢が幼なすぎる妹の無邪気さも子どもらしさが出てていい感じ。
しかし少年の成長をのんびり描いた作品かと思いきや案外ミステリーやサスペンス系が入っており、その中で少年の葛藤を描いてる作品といったところ。
少年が謎の男の子を自分の中で勝手にどんな子かと想像するシーンでは、子どもが数人しかいない閉鎖的な村で暮らしているせいなのか、はたまた寂しがり屋なのか、それとも想像力豊かな子なのか?!

大きな秘密を抱えた少年、自分に利となる交換条件(子ども同士、子どもと大人)から引き起こる展開、母親の葛藤、そして友情。
麦畑を背景にゆったりと展開するストーリーなのにいろんな要素が入った作品でキャスティングも良い。
DVDのパッケージを見て興味本位で借りたのですが、個人的にはかなり好印象の映画でした☆

「極短小説」

『極短小説』 THE WORLD'S SHORTEST STORIES

極短小説
 編者:スティーヴ・モス(Steve Moss)
     ジョン・M・ダニエル(John M. Daniel)
 訳者:朝倉久志
 出版社:新潮社 新潮文庫   



<感想>
タイトルにもある通り、極短小説の集大成。
というのもこの小説は、<五十五語以内の小説>というルールをもとに一般読者から寄せられたコンテスト入選作であるということ。
もちろん英単語での五十五語であり、英語ならではの語呂合わせや日本人には理解しがたい内容のものを省いて翻訳したもの(291編中157編収録)。
巻末にある<五十五語の小説>の書き方を見ると、物語のルールや語数の数え方など細かい規定があり、英文に疎い人にはちょっと難関のよう・・・。

たまたま古本屋で手にしたこの本。
1編1ページでまとめられており、その横ページには挿絵。寝る前に読むには最適かなと何気なく購入したのですが、これが案外面白く一気に読んじゃいました。

いろんなジャンルに分けて収録されてるのですが、たった五十五語以内(日本語だと200字以内と訳者は自分に課したそうな)と極短でありながらホントに無名の一般読者?(有名著者作品もあり)と思ってしまうほどよく出来てます。
映画や小説をパロディにしたもの・アダムとイヴもの・切ないもの・微笑ましいものなどそれぞれ個性がある作品を堪能出来てとても満足。
また和田誠さんも(星新一著書の挿絵で有名ですよね。今回初めて知ったのは奥さんが平野レミさんだった!しかも料理研究家だけだと思ってたのに、実はシャンソン歌手だった!!)独特あるタッチでシンプルでありながら的を得てる挿絵がなんとも言えない!!
アンソロジー物も好きな私ですが、たまにはこんなコンテスト入選作もいいもんです。

「百万ドルをとり返せ!」 ジェフリー・アーチャー

『百万ドルをとり返せ!』 NOT A PENNY MORE, NOT A PENNY LESS


 著者:ジェフリー・アーチャー(Jeffrey Archer)
 訳者:永井淳
 出版社:新潮社 新潮文庫  

 

<ジェフリー・アーチャー>
イギリスの作家で、下院議員時代にある会社に投資したところ無一文になってしまい、その時の体験をもとにしたのがこの「百万ドルをとり返せ!」(記念すべき第1作目)。
その後上院議員として政界復帰するも女性問題で辞任。勝訴するも10年以上経った1999年、再びジェフリー・アーチャーが政界にするか否かというときに当時の女性問題で旧友が偽証を頼まれたと暴露し、ジェフリー・アーチャーは有罪になるも服役生活を綴った「獄中記」を発表。
日本では20冊以上翻訳されてますが、中には絶版本もあり。
今後の執筆にも是非期待したいところ。

<簡単なストーリーと感想>
詐欺師で大富豪の策略から幽霊会社の株を買わされ、100万ドルを騙し取られた4人が集まりそれぞれ知恵を絞った方法で100万ドルを取り返そうとするコン・ゲーム。


そんな簡単にいくはずがない!と思いつつ、数学教授・医者・画商・貴族とそれぞれ立場が全然違う4人が繰り広げる計画は面白い!
100万ドルを取り返すにあたっても「1ペニーも多くなく、1ペニーも少なくなく」をモットーにしてる4人の手の込んだ奪還作戦も読み応えあるし、自分が大掛かりな詐欺をする割には自分が騙されてるとはつゆ知らず、気分良く騙されてるのを見るとこっちまで気分良くなってくる(笑。
メッセンジャー・ボーイからの成り上がりで、地位と名声に関しては貪欲な大富豪なのにどこか憎めないキャラであるし、彼の行くところどころはイギリスならではの場所が多く、そのあたりも結構楽しめるかも。
100万ドルを騙し取られたという犯罪が背景にありながら、とにかく最後まで気分良く読める1冊。

ジェフリー・アーチャーは「ケインとアベル」や「チェルシー・テラスへの道」などのサーガ物、短編集、サスペンスも書いており、個人的にはサーガ物がおススメ。

「死の匂い」 カトリーヌ・アルレー

『死の匂い』 TU VAS MOURIR!

死の匂い
 著者:カトリーヌ・アルレー(Catherine Arley)
 訳者:望月芳郎
 出版社:東京創元社 創元推理文庫   




<カトリーヌ・アルレー>
「悪女書き」として名高いフランスの作家(詳細な経歴は明らかにされてないらしい)。
悪女を中心としたサスペンスのほかにも完全犯罪、心理描写を軸にした小説が多い(が、絶版多し)。
私がアルレーを初めて読んだのは「目には目を」。確か中学生の頃で、当時クリスティにハマってた私にはとっても衝撃的だった記憶が・・・。
一般のミステリ作家とは少し違う作風のアルレーは、時には後味の悪いストーリーもあれば人物描写が素晴らしいのものあり、個人的にはとても好きな作家の1人。

<簡単なストーリーと感想>
大富豪のわがままな1人娘ステラは美貌にも恵まれた女性。病に倒れた父親を救った医師スペンサーに惹かれ結婚するも、結婚生活は全くソリの合わない2人。
次第にお互い結婚に対する打算が前面にでてき、スペンサーが医師ならではのある行動に出るが・・・。


アルレーの処女長編となるこの「死の匂い」は学者として野心を燃やす夫 VS お金を愛し快適で自分中心生活を求める妻といった感じ。
夫を自分の所有物だと考える妻があの手この手で夫の野心を諦めさそうとするも、綿密な計画を練るのではなく、相手に言うべきことではないことまで平気で口にしてしまうところはやはり今まで育ってきた環境からなのか。

自分が最悪な状態に陥ってるにも関わらず、悪女的な思考は衰えることなくむしろプラス思考。
ここまで前向きな性格でいれるとはある意味うらやましい・・・。
ストーリー全体として妻の立場から悪女としての心理を描いていますが、真面目で仕事熱心な夫の方が実は性質上ひどいことをしてやらかしてます。
夫のしたことに比べると妻の言動はとてもかわいく見えたりするのですが、結局はその言動に対して夫が行動を起こすことになるのでやはり悪女おそるべし。

アルレーは他の作品でも悪女を扱ってますが、この「死の匂い」よりはるかに上をいく傑作が多いので、まず手始めにこの本を読むといいかも?

それでも私は図書館に行く

私が小説を読む場所、それは通勤時の電車とバスの中。
電車とバスに乗ってる時間は片道正味40分程度ですが、往復1時間強あれば結構読めるってもんです。
300pであれば2日間あれば十分!(←速い?遅い?)
しかし運よく行きはラッシュ時に座れるもんだから、ついつい睡魔に襲われまぶたが徐々に下りてきて・・・。
なので最近では1冊読むのに1週間かかることもしばしば。
そうすると冒頭のストーリーを忘れてたり、登場人物がわからなくなったりしてカバーの内側にある登場人物を見ないと理解出来ないことも。
登場人物の紹介が書いてない本の場合は「この人誰だっけ?」と前ページをぺらぺら。
なかなか先には進めません
学生の時は通学時間が片道1時間半あったため、1日2冊読む余裕があり、図書館でも本を借りまくりだったのに・・・。
もちろん今でも図書館にはお世話になってます♪

絶版本を読むには最高の図書館。
でもP・G・ウッドハウスのような戦前の本を借りようものなら保存状態がとってもひどい状態(経年や幾度の貸し出しを考えると仕方ないか)。
パタンと本を閉めたら目に見えてホコリが立つし時折ページも欠けてる。
文学を研究してる人らしき人物の書き込み(この箇所の意味するところは?などと達筆な字で書かれてる)もあり、紙の性質にもよるのか真っ黒になったページをめくるのも勇気がいる始末。

それでも古本で手に入らない場合はやはり図書館頼り。
貸し出し率が多くて忘れた頃に手元にやってくる場合も多々ありますが、それでも絶版本がタダで読める図書館はやっぱり素晴らしい!

「時計は三時に止まる」 クレイグ・ライス

『時計は三時に止まる』 8 FACES AT 3

時計は三時に止まる
 著者:クレイグ・ライス(Craig Rice)
 訳者:小鷹信光
 出版社:東京創元社 創元推理文庫   
 ※「マローン売り出す」光文社文庫刊に若干訂正を加えたもの



<クレイグ・ライスとちょっとだけ感想>
アメリカの作家で、マローンシリーズ・ビンゴとハンサムシリーズ・ノンシリーズ、そして別名ペンネーム作品もあり。
私は初めてクレイグ・ライスの本を読んだのは、クレイグ・ライスの事は全く知らず偶然のこと。
とういうのも私は八十七分署シリーズのエド・マクベインが好きで、彼の著書を片っ端から読んでると「エイプリル・ロビン殺人事件」と出会い、これがクレイグ・ライス著作でありながら未完(遺作)でエド・マクベインが補筆したというもの。
そこからクレイグ・ライスにハマることに・・・。

この「時計は三時に止まる」は弁護士マローンシリーズの第1作目となる作品。
このシリーズに欠かせない主な登場人物は、美女とお酒が好きなマローン・赤毛が特徴のジェイク・大富豪で超美人の娘ヘレン(この1作目でジェイクと出会い、後に結婚)の3人。
そしてこのマローンを筆頭に事件を解決していくのですが、ジェイクとへレンが加わることによってドタバタユーモアミステリになるって感じ。

このシリーズを見ようと思ってる方へ・・・。
このシリーズはハヤカワと創元推理から出ており(私の知ってる限りではかぶってる本はないはず)、さらに出版社の発行順が必ずしもシリーズ順になってるとは限らないので注意!
シリーズ順でなくても楽しめますが、順を追って楽しみたいという方は絶版本もありますが以下の順序でどうぞ(ちなみに私は「大はずれ~」から読みましたが実は順序派)。
※私自身この中で4と10は持っておらず、もしかしたらそのあたりが間違ってるかも・・・

1.時計は三時に止まる(創元推理文庫)
2.死体は散歩する(創元推理文庫)
3.大はずれ殺人事件(ハヤカワ)
4.大あたり殺人事件(ハヤカワ)
5.暴徒裁判(ハヤカワ)
6.こびと殺人事件(創元推理文庫)
7.素晴らしき犯罪(ハヤカワ)
8.幸運な死体(ハヤカワ)
9.第四の郵便配達夫(創元推理文庫)
10.わが王国は霊柩車(ハヤカワ)
11.マローン御難(ハヤカワ)

マローン弁護士の短編集もあり。

さて、肝心のこの本ですが、事件のあった家の時計が午前3時にいっせいに止まり、この事件の殺人容疑とされた被害者の姪。この姪の駆け落ち相手の友達であるジェイクが旧友のマローンに弁護を依頼するというもの。
この一作目では謎解きが少し強引のような気がしますが、とりあえずは主人公3人の特徴を是非知っておいてほしいところ。後々の作品では面白くなってくるので。
ミステリよりもどちらかと言えば登場人物トリオの個性を楽しんで欲しいシリーズです。

「わたしを見かけませんでしたか?」 コーリイ・フォード

『わたしを見かけませんでしたか?』 HAS ANYBODY SEEN ME LATELY?

わたしを見かけませんでしたか?  ハヤカワepi文庫
 著者:コーリイ・フォード(Corey Ford)
 訳者:浅倉久志
 出版社:角川書房 ハヤカワepi文庫   




<感想>
私がはじめてコーリイ・フォードを知ったのは「冷えたギムレットのように -美酒ミステリ傑作集-」のアンソロジーに入っている「おごりの一杯」。
たった4pというショートですが、そんな短さでもオチまでしっかりしており、是非この著者の作品を読んでみたい!という気に・・・。
コーリイ・フォードは多くの著書や短篇を残していますが、私の知ってる限りでは多くはアンソロジーや昔のミステリマガジンでしか読むことが出来ず、彼の作品を多く読むのは難しいかも。

今作品は19篇からなるエッセイ集で、大部分はミステリマガジン誌やユーモア・スケッチのアンソロジーに収録されている作品。
この中で注目してほしいのが「あなたの年齢当てます」。中年男性必見!!
著者自身が感じたことをエッセイにしたのもで、中年男性の普段の日常生活に起こりうる内容をユーモアに描いています。
全ての出来事をポジティブにというか解釈の仕方が面白く、暗い悲観的内容になっていないのが何とも言えない!
中年男性だけでなく中年女性にも十分当てはまり、私にも身に覚えがある内容が少しばかり・・・(悲。
著者の定義によると、中年とは概略21歳~100歳までの時期をいうらしい。成人になったら即中年ってことか?!

「ヒモをためてますか?」は、いつか使うかもしれない、何かに役立つかもしれないと思いどうでもいいものをしまいこむ女性には必見!!かなり共感出来るかも。

「愛人マニュアル」では犬の立場から見た人間の飼い方を綴っており、これが意外に飼い主にとって勉強になる内容。
犬を飼ってる人だけでなく、飼ってない人にも十分楽しめます。

全体的に著者の日常を綴っており、お国柄か日本人にはあまり馴染みがない部分も多少ありますが、それでも読んでて「あるある」「わかるわかる」と共感出来る部分が多く、面白く楽しく読めるエッセイ集です。

「懐かしい殺人」 ロバート・L・フィッシュ

『懐かしい殺人』 THE MURDER LEAGUE

著者:ロバート・L・フィッシュ(Robert L. Fish)
訳者:菊池光
出版社:早川書房 ハヤカワミステリ文庫

<簡単な説明と感想>
シャーロキアンで、パロディものである「シュロック・ホームズ」シリーズの著者としても有名。
アメリカの作家でロバート・L・パイクというペンネームでもシリーズを発表。
今回の本は「殺人同盟」シリーズの一作目で、「お熱い殺人」「友情ある殺人」と続く。おそらく3冊とも絶版のはずですが、運よく1回だけ古本屋の100円コーナーで見たことがあり思わず小躍りした記憶が・・・。
完璧な保存状態を望むのではないのならそれほど高くないかも。ただほかの絶版本に比べて市場に出てる数は少ないような・・・。
私は2作目の「お熱い殺人」は持っておらず、飛ばして「友情ある殺人」を読もうかどうか数年悩んでまだこの一作目しか読んでなかったり(笑。
「お熱い殺人」は「懐かしい殺人」のすぐ後を描いているそうなので、なんとしてでも「お熱い殺人」を読まないと。
表紙に3人の主人公の挿絵が入っており、雰囲気が少しくたびれたなんちゃってイギリス紳士といったところ?(←でも文中では老紳士的なイメージ部分もあり)

英国ミステリ作家クラブの創立者であり、最近では本を書いておらず経済状態も芳しくない3人の老作家は「殺人同盟」を結成し殺人を請け負う商売をすることに。
上手くいってたはずなのに腑とした事から彼ら本意ではない失敗をしてしまい、敏腕弁護士に相談をするといったストーリーなのですが、この殺人は淡々と書かれており何よりも3人の言動が面白い!!
特に居酒屋で殺人を行った直後の逆ギレ演技が最高。
そんな3人組の上をいくのが弁護士のパーシヴァル卿。後半での裁判では彼の手腕ぶりが大いに発揮されており、この話って法廷モノ?と思わず感じてしまうほど巧みなもの。
主役はウィットとユーモアにとんだ3人組ではあるけれど、この弁護士が加わることによりミステリ性がより帯びてくるといった感じ。

以前はミステリ作家として活躍してた3人がおのおの知恵を絞って繰り広げる殺人方法や殺人同盟の広告も良く出来てるのはもちろんのこと、旧友の警部やなんだかんだと言っても3人が気になるミステリ作家クラブの事務長も密かに良い味出してたりするんだな。
このシリーズで3人以上に活躍する(?)弁護士のパーシヴァル卿、いろんな事件を扱う無敵の彼が主人公となるアナザーストーリーがあったら絶対面白かっただろうな~(残念なことに著者は1981年没)。

この「懐かしい殺人」が発表されたのは1968年と今から38年も前ですが、それほど古さは感じずユーモアはいつの時代も関係なく面白い!
唯一時代を感じるのは、アメリカの電子頭脳(=IBM)をイギリスの警視庁が導入することぐらいでしょうかね。
このシリーズの続きはもっと面白いようなのでかなり期待大。

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