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「不思議の足跡」 日本ベストミステリー選集

『不思議の足跡』日本ベストミステリー選集  

不思議の足跡―日本ベストミステリー選集 (光文社文庫)

 編者:日本推理作家協会編
 著者:伊坂幸太郎/山本幸久/中山智幸/
     真柴幸子/小路幸也
 出版社:光文社 光文社文庫



・『吹雪に死神』 伊坂幸太郎
・『酬い』 石持浅海
・『あなたの善良なる教え子より』 恩田陸
・『ナスカの地上絵の不思議』 鯨統一郎
・『暴君』 桜庭一樹
・『隠されていたもの』 柴田よしき
・『東京しあわせクラブ』 朱川湊人
・『とまどい』 高橋克彦
・『八百万』 畠中恵
・『オペラントの肖像』 平山夢明
・『ロボットと俳句の問題』 松尾由美
・『箱詰めの文字』 道尾秀介
・『チヨ子』 宮部みゆき
・『悪魔の辞典』 山田正紀
・『Do you love me?』 米澤穂信
以上、2004~2006年にかけて発表された15編からなるアンソロジー。

『吹雪に死神』 伊坂幸太郎
吹雪を理由にある洋館に泊まることになった死神。そこで次々と人が死んでいき…。死神は仕事で来たため事件の真相を知りたいとは思わなかったが、情報部に少々腹立つことを言われたのを思い出し、自分の得た情報から洋館で起こったことを整理していく。

『死神の精度』に収録されていた話。死神のキャラは覚えているけど内容は全く覚えてなく、最後まで読んでもピンとこず^^;連作短編集の一つだけどこの作品だけでも十分読めると思うのは、私が既に『死神の精度』を既読だから?でも『死神の精度』を全編読んでからこそ死神のキャラが理解出来てより面白く読めるような気がする。

『酬い』 石持浅海
満員電車でムーちゃんが痴漢に遭って3週間後、その痴漢男性がホームで倒れていた。どうやら事件のよう。周囲には駅員、警察官、そして1人の女性。その状況を見てムーちゃんは事件の真相を語り出す。

タイトルから難しい内容なのかと思ったら、探偵役のムーちゃんは普通じゃなかった!同居人の北西くんは相棒って感じ?内容的にはタイトルどおり。ムーちゃんには色んな能力(洞察力?)があり、私も彼女からエネルギーを吸収して欲しいけど「まずっ!」って言われそう~。2人の出会いはなんだったんだろう?シリーズ化されたら(もしかしたらもうされてる?)読んでみたい。

『あなたの善良なる教え子より』 恩田陸
子供の頃の恩師に宛てた書簡。恩師の教え「真実の善を為すこと」を礎として今までの人生を生きてきたという。そこに書かれている善とは――

辛い幼少時期の記憶、先生が教えてくれた善、そのことによりその後の人生を先生の教えをずっと信じてきたという男性。先生も男性も罪だが、先生からみた男性の幼少期の状況、男性の年齢、発端の内容から簡単に罪と言うには辛い内容。でも歪んだ罪でも罪は罪。これを読んだ先生は一体どう思うんだろうか。先生の心理とその後の行動が気になります。

『ナスカの地上絵の不思議』 鯨統一郎
バーで、いつもの客3人とバーテンダーはふとした話の流れから、ナスカの地上絵について語り合うことに。いつ誰が何の目的で描かれたのか?

祭りの話からナスカの地上絵の話に行き着くとは!ナスカの地上絵は知ってますが詳細や過程は全く知らない私。なので彼らが出した結論は案外そうなんじゃ?と感心しちゃいました。ただ、3人のうちの1人の女性が、あまりにも上から目線の言い方にちと驚いた。そのうちの1人と信頼関係があったとしても馴染めず。それよりこのバーにスクリーンがあるのにびっくり!あとこの短編ってカクテルとかナスカの地上絵についての説明が多く勉強になりました^^

『暴君』 桜庭一樹
中学一年生の金堂翡翠、親友の田中紗沙羅、近所に住む三雲陸。3人のひと夏のカミュと出刃包丁とオバケヤシキをめぐる物語。

今、桜庭さんの『GOSICK』シリーズを読んでいるので楽しみにしてました!3つの話から成り立っているのですが、途中から非現実的でこの物語のジャンル一体なんだろう?と頭抱えてしまった。。難しい年頃の少女の気持ちがわかったようなわからなかったような…。←多分わかっちゃいない。ところでピンクの霧って一体何?

『隠されていたもの』 柴田よしき
フリーライターの絵美が取材に向かったのはゴミ屋敷。隣家の人に話を聞き取材の方向性を見つけた絵美は、ゴミ屋敷に住む女性から話を聞くことに。部屋の中の積まれたゴミの山から絵美は、そこにあるはずのないモノを見つける。

結婚を機にフリーライターになった女性の仕事現状を描きつつ、ゴミ屋敷を描きつつ、女性心理を描きつつ…。なんだろう、ゴミ屋敷なんだけど、そのゴミの意味合いというかゴミの中にある歴史というか…。ゴミ屋敷の女性が40歳以上の女性のみ取材を受ける理由はそこにあったのか!あとからぞくっときました。

『東京しあわせクラブ』 朱川湊人
小説家の主人公が数年前に体験したある事件をエッセイに書いたことがあった。数年後、そのエッセイを読んだ女性から編集者づてに会いたいという。その事件に少々関連ある品を貸して欲しいとのこと。彼女が入っている「東京しあわせクラブ」に持って行くとい話を聞き、小説家は貸すかわりに連れて行ってもらうことに。そのクラブとは…。

『東京しあわせクラブ』と楽しそうなクラブ名ですが、実際はとっても悪趣味なクラブ。実際にありそうなクラブで、オチも実際にしてそうで怖い。

『とまどい』 高橋克彦
小説家の木島はあるパーティ会場で、学生時代に知り合いだった女性に声を掛けられる。当時、木島の同級生と付き合っていたのだった。40年ぶりにあった彼女から昔話を聞かされるが、木島はどうも腑に落ちなかった。

彼女が記憶している木島が、実際の木島の性格とかなりかけ離れているのが木島にとって腑に落ちない。もしや二重人格?それともよく似た人物が自分になりすましてる?と思ってしまいそうですが、オチはありきたりかも。こういう世界を短編でまとめるのは難しそう。

『八百万』 畠中恵
江戸の神田大和町、油問屋の次男坊が倒れ事切れていた。町に越して来たばかりの春門に疑いがかかるが、実は春門、人ではなく新米の稲荷神・八百万の神の一人であった。春門は自分が下手人を挙げようと意気込む。

読み始めは背景や人物の名前がよくわからなかったのですが、春門が神様とわかってから面白く読めました。家人ら3人がこの神様を敬ってない様子も楽しいし、言いたい放題いわれムキになる春門も読んでて楽しい^^まだ越してきたばかりの春門たち、今後、この場所でまた事件を解決していくのかな?シリーズ化されたら(もしかしたらもうされてる?)読んでみたい。

『オペラントの肖像』 平山夢明
近未来、人が悪い欲望に突き動かされ、悪い習慣を手に入れ、破壊的風習に従ってしまうのはオペラント(条件付け)されていないから。というスローガンのもと、国は民衆に対し積極的にオペラントを行っていた。中でも芸術は堕術とされ、徹底的に厳罰を与えていた。堕術者を一掃する機関に勤めている男は疑いのある家族を調査することになるが…。

『独白するユニバーサル横メルカトル』に収録されている1編。『吹雪に死神』と同様、こちらも内容を覚えてなかったので初めて読んだ気分です^^;『独白するユニバーサル横メルカトル』の感想でも書きましたが、ラストまで読むとありそうな話。異色なストーリーではなく普通にSFとして読めます。ちょっと切ないのがいい。でも主人公の今後を考えると……怖い。

『ロボットと俳句の問題』 松尾由美
ライターの寺坂がよく行くレストランには幽霊のハルお婆ちゃんがちょくちょくやってくる。ある日、寺坂は常連客の刑事から不可解な出来事を相談される。いつもはハルお婆ちゃんが解決してくれるのだが、最近姿を見せないため寺坂は1人で解決しようとするが…。そんな時、レストランの店長からハルお婆ちゃんの情報がもたらせる。

ロボットとハルお婆ちゃん家と2つの謎解きが主体になっており、ほんの少し恋愛のスパイスも入ってます。謎解きの両方とも、こんな回りくどい暗号にしなくてももっと違うやり方でメッセージを残せばいいのになんて思ったり。個人的にはハルお婆ちゃんがもっと活躍する話が読みたい。

『箱詰めの文字』 道尾秀介
作家の男の家に、青年が2ヵ月前にこの家から盗んだ貯金箱を返しに来た。だが作家には全く見覚えがなく、その場で貯金箱を開けると中から1枚の紙が出てきた。それを見た作家は…

二転三転する内容に興味深く読みました。作家が思ったように私も青年は一体何をしたかったんだろうと。そこも含めて今作品の魅力?

『チヨ子』 宮部みゆき
友達に紹介してもらい着ぐるみを着て風船を配るアルバイトをすることになった主人公。頭の部分をかぶり、のぞき穴から外を見ると誰もがみな着ぐるみを着てるように見えてしまうという不思議な現象が起こる。自分は一体どのような姿に見えるのだろうと鏡を見ると、そこには懐かしい姿があった。

ここにきてほんわか系の話が読めてちょっと嬉しい^^着ぐるみを着ると誰もが着ぐるみを着てるように見えるっていう設定が面白い!幼い頃に大事にしていたものを私も思い出すきっかけになりました。多分私はリカちゃんに見えるはず?作中に出てくる母子のように黒いモノだったらイヤだな~(><。)

『悪魔の辞典』 山田正紀
1920年、探偵のキャラハンは依頼を受けてある男性を尾行することになったが、その尾行が2週間続いただけでなく、サンフランシスコからメキシコ国境まで行くはめになってしまった。そこで悪党や革命家と遭遇し…

これはハードボイルド?『悪魔の辞書』を書いたアンブローズ・ビアスという実在した人物を絡めた内容ですが、何が何なのかよくわからず。私には難しすぎる内容でした。

『Do you love me?』 米澤穂信
渡良瀬の家の前に成仏できないでいる青年が立っていた。彼女に殺されたのはわかっているが理由がわからない。なぜ殺されたのか納得がいかずこの世に残っているという。渡良瀬は彼から死ぬまでの経緯を聞き、真相に辿りつく。

渡良瀬は何度も幽霊の相談を乗ってるようで、今回は青年の話を聞いてあげるという設定。青年が自分を殺した彼女との思い出を嬉しそうに話すのがどこか憎めない。真相を知ってもなお恨み言を言わないなんていい人すぎ~。それより彼女の方が断然怖い…。


2004~2006年にかけて発表された作品ということで、半分知ってる作家さんだったので嬉しい♪巻末の解説にも書かれてますが、探偵役が死神だったり、謎の生命体だったり、幽霊お婆ちゃんだったり、神様だったりとバラエティに富んでいて面白く読めました。内容もいろんな設定でぞぞぞってきたり、ほんわかな気持ちになったり。中にはシリーズ化されたら読んでみたいと思う作品も何作かありました。個人的に好きな作品は『あなたの善良なる教え子より』、『隠されていたもの』、『八百万』、『チヨ子』、『Do you love me?』かな。いろんなタイプの作家さんが読めるので、アンソロジーはやっぱり読んでいて楽しっす!

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「Happy Box」

『Happy Box』  

Happy Box

 著者:伊坂幸太郎/山本幸久/中山智幸/
     真柴幸子/小路幸也
 出版社:PHP研究所





・『Weather』 伊坂幸太郎
・『天使』 山本幸久
・『ふりだしにすすむ』 中山智幸
・『ハッピーエンドの掟』 真柴幸子
・『幸せな死神』 小路幸也
以上5編からなるアンソロジー。

『Weather』 伊坂幸太郎
大友の学生時代からの友人である女性関係が派手だった清水が結婚することになった。だが、彼の最近の行動が少しおかしいので、何か隠し事があるのではないか調べて欲しいと新婦が大友に頼んできた。実はこの新婦、大友が高校時代に交際していた女性であった。そして結婚式の当日、先入観のせいで何を見ても怪しく感じ周囲を観察する大友。そしてあることに気付く。

天気のことがやたら詳しい大友。それも清水の女性関係が派手で、その彼女たちに会うたびうっかり変な事を喋らないよう無難な世間話をするため、必要に迫られ独学で身に付けたらしい。本人もいつしか会話に困ると、天気の話がしたくなるほど依存しちゃってる^^;で、内容ですが、大友が披露宴で色々と推理するなんちゃって探偵みたいな雰囲気がありつつ、清水は一体何を隠しているのかとハラハラしつつ、もしや新婦の方が何か企んでるんじゃないかと疑いつつ……なんて思っていたら、最後はちょっぴり涙(TT)。良い話でした。読み終えると伏線ありありだったです^^;しかし披露宴にいた新婦の後輩女性、あまりにも無神経な会話にびつくり!

『天使』 山本幸久
一人暮らしをしている77歳の福子は、仕事をしにショッピングモールに行った。この道66年になる掏摸師なのだ。そこで同業者の男に逆にスラれそうになったことをきっかけに、その男が連れていた9歳の少年タカシとその姉の置かれている状況を知ることになる。そして福子は少女の頃に知り合った掏摸の師匠を思い出す。

なんだかせつないラスト。これが掏摸師である福子の幸せ?昔の出来事を思い出し、少女の頃の自分と同じような境遇にいる子供たちを見て、何とか助けたかったんだろうなー。何とも言えない余韻が残ります。子供たちに福子の想いが届きますように。

『ふりだしにすすむ』 中山智幸
もうじき派遣の契約が終了する29歳の多喜りりこの前に、「ぼくね、きみの生まれ変わり」と68歳の男性が突然話しかけてきた。次の人生でまた妻と会うため、妻の前世だった女性に会って欲しいと頼まれる。美味しいご飯をご馳走してもらうことを条件に、りりこは引き受けるが…

SFっぽいけどそうではない?結局は…だよね?でもりりこのとった行動は、前世と名乗る男性と会って欲しいと頼まれた女性にとって決してマイナスではなかったはず。一体どんな結末なんだろうとわくわくしながら、反面、最後は頭の中が少しこんがりつつ読みました。前世を信じるのもいいかなとちょっぴり思ったり。でも本書のように、いきなり年上の人に「ぼくね、きみの生まれ変わり」と言われたらかんなりこわい!

『ハッピーエンドの掟』 真柴幸子
小学生のアイコは、ホステスをしている母親と暮らす母子家庭。家には最新家具が揃っており何不自由ない生活だったが、一人での留守番はちょっぴり寂しかった。だがアイコは今の暮らしを気に入っていたし、母親が化粧するのを見るのが好きだった。ある日、母親が再婚することになったが…

この本って幸せがテーマのアンソロジーだよね?この話ってハッピー??ある意味、彼女は幸せなのかもしれないけど^^;解説によると、著者の真柴さんはイヤミス(読後にイヤな気分にさせてくれるミステリ)の立役者の一人らしい。なんといっても最初の出だしで騙された!最後まで読むと、そーだったの?!とびつくり!読後だけでなく、担任の先生もりりこに掛ける言葉といい、絵本のくだりといい、模範的な態度をとってるという自己満足な言動がかなりヒドイような気がする。何と言ってもりりこの今後が心配でしょーがない。でもかなり読ませてくれる内容で、真柴さんの他の著書も読んでみたくなりました。

『幸せな死神』 小路幸也
吉祥寺のバーで、26歳の榎本帆奈は死神と知り合いになった。どうやら帆奈は死神のルールで彼を召喚し契約してしまったのだった。その後、バーや家に突然現れるようになりいろんな話をするようになる。その時、死神から「私たちは幸せを感じることができない。だがたった一つそういう気持ちを持つことが出来る場合がある」と聞かされる。それを聞いた帆奈は…。

死神と知り合い幾度か会う仲になっていたら、もしかして今回は私の最期を見届けに来たの?!と私なら思っちゃうかも。。イケメンで気配りの出来る死神なんですが、彼の幸せは人間にとって切ない。でも死神にとってはそれが最大の幸せ。その内容は人間にとっても幸せなこと。伊坂さんの『死神の精度』に登場する死神も良かったですが、こちらの死神も良かったです。


巻末の解説によると、この1冊は名前に"幸"せの一文字を持つ作家を集めた幸せのアンソロジーなんだそう。伊坂幸太郎さんしか私は知らなかったのですが、どの短編もそれぞれ違った形の幸せが詰まっていて、読み応えがありました。喜ばしい幸せ、酷な幸せ、切ない幸せと、幸せといっても色んな形があるんだなと改めて思いました。とりあえず、イヤミスの真柴幸子さんの他の著書を読んでみようかなー^^

「異形の白昼 : 現代恐怖小説集」

『異形の白昼 : 現代恐怖小説集』 

異形の白昼 (集英社文庫)

 編者:筒井康隆






・『さまよう犬』 星新一
・『蜘蛛』 遠藤周作
・『くだんのはは』 小松左京
・『甘美な牢獄』 宇能鴻一郎
・『孤独なカラス』 結城昌治
・『仕事ください』 眉村卓
・『母子像』 筒井康隆
・『頭の中の昏い唄』 生島治郎
・『長い暗い冬』 曾野綾子
・『老人の予言』 笹沢左保
・『闇の儀式』 都筑道夫 
・『追跡者』 吉行淳之介
・『緋の堕胎』 戸川昌子
以上13編からなるアンソロジー。

『さまよう犬』 星新一
若い女は犬の夢を見る。たびたび同じ夢を見るのだが現れる犬は毎回同じだった。だがいつの間にか…。

たった2ページのショートショート。恐怖小説ではなく星新一らしい不思議な話という感じ。解説によると、カラー・イラストを作家に見せ、その絵にあったショートショートを書かせるといった某週刊誌の企画で書かれた作品だそうな。恐怖小説集のトップにこの作品をもってくるところがニクイ!

『蜘蛛』 遠藤周作
叔父が世話役をやっている会合に誘われた。そこで前年に体験した恐怖体験の話して欲しいというのだった。その帰りの道中…

解説を読むと、著者は恐怖譚の名手であるとともに、恐怖譚の蒐集家でもあり恐怖の体験者でもあると書かれてました。へー、初めて知りました。蜘蛛の説明というか描写がとても気味が悪いです(><)。この蜘蛛は実在するのでしょうか?

『くだんのはは』 小松左京
戦時中、空襲で芦屋の家を失った中学3年の青年は、母や幼い兄弟が疎開するまで家政婦としてきてくれてたお咲さんの好意で、ある家にお世話になることになった。だがその家にはある秘密があった。

私がこのアンソロジーを借りようと思ったのは、名作だ!と言われてる今作品が読みたかったからです。読み終えてホント名作でした。戦時中の青年の心情や、戦時中でありながら大邸宅の静寂さが伝わってきます。私は"くだん"の意味を知らなかったのですが、調べてみると都市伝説の一つだとか。そして最後のオチ!素晴らしい。

『甘美な牢獄』 宇能鴻一郎
私が台湾の寺院に行った時、奇妙な男性を目にした。半年後、その男性から手紙が届く。

手紙の内容は、ある男性の告白のような内容になっているのですが、正直、理解できませんでした。歪んだ性に対する欲望?子ども時分にいろいろと想像したりするもんですが、この想像(夢想?妄想?)は一体…。観側の治療の意味合いも謎。私には難しすぎる分野でした。

『孤独なカラス』 結城昌治
カラスの鳴声が上手だった少年は、他の子供たちから"カラス"と呼ばれていた。ある日、公園で4歳の少女が失踪した。

解説によると"精神分裂病"という世にも恐ろしい話らしいです。なるほど。確かに不気味な少年ではあるけど、こちらも私には少し難しすぎました。

『仕事ください』 眉村卓
泥酔したサラリーマンが、必死の場合、本気で念じれば人間は何でも出来ると思い、自分の言うことを何でも聞いてくれる奴隷が出てくるよう叫んだ。するとそれが現実になり…。

仕事や生活に疲れ果てたサラリーマンが酔っ払って叫ぶというありがちなシチュエーション。で、本当に奴隷を生み出しちゃったという。必要以上にまとわりつく奴隷が不気味でしたが、ラストのオチがよいです。なんか悲しくて寂しい結末です。

『母子像』 筒井康隆
私は生後7ヵ月の我が子へサルの玩具を買って帰った。赤ん坊はその玩具を気に入り、肌身離さず持っていた。ある日、妻と赤ん坊の姿が見えなくなった。

珍しい色で作られたサルの玩具を、赤ん坊に買い与えてから起こった非現実的現象です。怪奇現象といってもいいかも。読み終えて、怖さと悲しみが残る作品でした。

『頭の中の昏い唄』 生島治郎
単調な校正の仕事をしている吉村は、先輩の川井が奇妙な節まわしで読み上げるのに対し気が狂いそうだった。自宅に戻った後、今度は屋上から子供の歌声が聞こえてき、吉村は我慢ならず屋上に向かう。そして彼は…

解説に「単調さの恐怖を聴覚に結び付けてるユニークな恐怖小説。」とのこと。なるほど、校正という単調な仕事、毎度毎度繰り返される川井の単調なメロディで正気が失われていき、あんな幻想(現実?妄想?)になったんだ。対象物は違えど同じような状況の人がいそうなリアル感があり、そういう意味では脆い雰囲気がありました。

『長い暗い冬』 曾野綾子
石山は幼い息子と海外で暮らしていた。学会で来ていた精神科医である友人に、石山は夜眠れず最近はアル中の傾向があると相談する。その夜、友人が石山の家に泊まることになった。

私はこの話に登場する民話をあまり覚えておらず、もっと内容の詳細を知っていたらぞくぞくってしたかもしんない…。いや、そういう問題じゃないかも^^;無口な子供というのはやはり材料としては最強。さらにもうどうしていいかわからないラストの一言。これもリアル感ありました。解説で、編者の筒井さんは不朽の名作とおっしゃってました。

『老人の予言』 笹沢左保
長野県の温泉に1ヵ月の滞在予定で行った。そこで小説を書く仕事をするつもりだったが、定宿の若主人から相部屋をお願いされ承諾する。部屋に入ってきたのは律儀な老人だった。

読み終えて「ん?で?」という感じで意味はわかりませんでした。が、解説を読むと…そういうことなの?!と知り、真実というかオチを知った上でも2度読み直しました。うゎ、これは1回読んだだけでは難しい!でもオチを知った上で読むと奥深い!伏線は夢と老人の言葉でしょうか。わかり辛い内容でしたが、個人的には好きな部類でした。

『闇の儀式』 都筑道夫
男女5人で、そのうちの1人、坂宮の伯父がかつて住んでいた別荘へ行った。地下室で見つけたお酒を飲みながら、部屋に飾ってあった絵について坂宮が語り始める。

読み始めてアメリカのホラー映画にありそうなシチュエーションかなと。家の秘密がわかってからドキドキして読み進めたのですが、オチはそれですか。ですよね、この成り行きだったらこのオチが一番おさまりいいですよね。個人的にはもっと違う展開が読みたかったかな。

『追跡者』 吉行淳之介
終電車の中で女と眼が合い、気が付くと女と同じ駅を降りあとをつけていた。

本アンソロジーで一番短い話。一度読んで意味がわからず、解説を読んだ上でもう一度読んでみましたが…やはりよくわからず。解説にどのくだりがミソだと書いてくれてるのに私にはちんぷんかんぷんでした…。

『緋の堕胎』 戸川昌子
井田産婦人科医院は非合法な方法で診察していた。書生の青年、別居中の妻、愛人、妊婦を渦巻く内容とは…。

すごい愛憎劇です。非合法というかえげつない方法で処理をする医者に気分が悪くなってきました。倫理なんてあったもんじゃない。さらに問題はそこではないところがこの短編の凄いところ。最後にこの話を持ってきたことで恐怖小説集だったなと思い出させてくれました。


現代恐怖小説集といっても、古典的なもの、精神的にくるもの、気持ち悪いもの、不思議な感覚のもの等々、私には難しすぎる話もありましたが全体的に楽しめました。個人的に好きなのは『くだんのはは』、『仕事ください』、『母子像』、『老人の予言』、『緋の堕胎』。普段読まない作家さんが読めたのも良かったです。

「不思議の扉 : 午後の教室」 不思議の扉シリーズ4

『不思議の扉 : 午後の教室』 不思議の扉シリーズ4

不思議の扉  午後の教室 (角川文庫)

 編者:大森望
 著者:湊かなえ/古橋秀之/森見登美彦/有川浩/
    小松左京/平山夢明/ジョー・ヒル/芥川龍之介
 出版社: 角川書店 角川文庫




・『インコ先生』 湊かなえ
・『三時間目のまどか』 古橋秀之
・『迷走恋の裏路地』 森見登美彦
・『S理論』 有川浩
・『お召し』 小松左京
・『テロルの創世』 平山夢明
・『ポップ・アート』 ジョー・ヒル
・『保吉の手帳から』 芥川龍之介
以上8編からなるアンソロジー。

『インコ先生』 湊かなえ
私はS高校の保健室の先生。肩にいつもインコを乗せているので生徒からは「インコ先生」と呼ばれている。ある日、女子生徒から修学旅行で撮った写真が心霊写真じゃないかと相談される。

こんな短いショート・ミステリーを書く湊かなえさんは初めて読んだかも。途中で「ん?」と思い最後でなるほど!こんなオチを書く湊かなえさんもいいです^^

『三時間目のまどか』 古橋秀之
高校3年生の林田京一は、授業中に窓をぼーっと見ていた。するとそこに女の子の姿が!よく見れば、窓ガラスの向こうは"こちら"とよく似た学校の教室。女の子もこちらに気づき驚いた様子。どうやら11時前のほんの数秒だけ、別の空間の教室とつながっていた。

読み終えると結果論としてベタな内容でしたが(しかも途中でわかりやすい伏線も)、こういう時間をテーマにした内容は好きです^^こういう場合、現在に影響を与えるパターンが多いような気がしますが、今作品に限っては爽やか!

『迷走恋の裏路地』 森見登美彦
京都の大学に通う私は、気になる後輩に対し「ナカメ作戦(なるべく彼女の目にとまる作戦)」を敢行。彼女と偶然出会うため「ある信用すべき筋からの情報」を使う私。涙ぐましい努力を重ねることにより偶然の出会いは多くなった。彼女は気づいてくれるのだろうか?

この話は『夜は短し歩けよ乙女』のサイドストーリーとして書かれたものだそうです。『夜は短し歩けよ乙女』は未読なのでサイドストーリーと言われてもよくわからず。これって時代設定はいつ頃なんだろう?なんか昭和の香りがするんだけど?いまどき「コンチクショウ!」って…w『夜は短し歩けよ乙女』は気になっていた作品なので、とりあえず図書館で予約しました。

『S理論』 有川浩
大学の同級生だった科学者が失踪した。彼の父親が息子を探しており彼の手帳を見せてくれた。そこには太い文字で「S理論」と書かれていた。それは昔流行った都市伝説の一つだったが、彼が失踪した条件にぴったり当てはまっていた。もしかして都市伝説は本当だったのか?

この話、何かのアンソロジーに入っていて読んだことがあります。なので結論も知っているのでさほど驚きはなし^^;でも改めて都市伝説って案外こういう理由もなかにはあるのかも?!とちょっと思ったりしました。

『お召し』 小松左京
三千年前に書かれたにもかかわらず、保存状態が良い状態である文書が幾つか見つかった。非常に奇妙な記録で古代文明の存在の直接的証拠になるのではと思われた。語学者による翻訳の結果、一番筋が通っていて一番ショッキングだったのは、「ぼくが消える日に…」というタイトルの内容だった。

ものすごく読ませてくれる内容で、一体どんな理由でそんな状況に?とだけを思い最後まで読み進めました。私は読み終えても全く気付かなかったのですが、冒頭にある言葉がカギを握っていたみたいです。あとで気づき、そういうことだったのかと。とにかく印象的な内容でした。

『テロルの創世』 平山夢明
10歳になったある日、学校で"特講"があり、生徒は自分たちが「影(オンブル)」で、なんのために生まれてきたのか知らされる。ある事をきっかけに、オンブルの巳影はある決断をする。

平山夢明さんは『独白するユニバーサル横メルカトル』しか読んだことがなく、今作品もどこかそんな内容になっているのか?!と勘違いしてましたが全然違いました^^;巻末の解説にも書かれてますが『わたしを離さないで』にどこか似てました。作中に登場する狐面の男の行動理由がイマイチよくわからず…。

『ポプ・アート』 ジョー・ヒル
12歳の時、俺の一番の親友は空気で膨らませる風船人間のアート(アーサー・ロス)だった。特殊な体質ゆえ出来ることは限られており、周囲からはいじめられていたが、俺にとっては無二の親友だった。夢があり、またどんな話題でも死に結びつける話をするアート。ある日、彼から電話で呼び出された。

この著者、スティーヴン・キングの息子さんなんだと初めて知りました。風船人間って…よくこんな設定を考えつくなぁ。しかも内容は学校内、家庭内、そして友情といたって真面目。解説によるとユダヤ人差別宗教(宗教差別・人種差別)をテーマにした寓意的なファンタジーとのこと。

『保吉の手帳から』 芥川龍之介
海軍の学校に英語教師として赴任した堀川保吉が体験した5つの話。堀川保吉シリーズと呼ばれる一連の自伝的な作品群があり、本編はそのなかの一つで、海軍機関学校に勤めていたころの体験が下書きになっている。

自伝的内容で他に収録されている作品とは一味違う感じ。最初の「わん」はラストに皮肉がきいてて面白かったです。


この不思議の扉シリーズは、古今東西の短編小説から不思議な味わいの作品をセレクトしているそうで、4作目となる本書は"学校"がテーマ。よくこんなにタイプが違う作家を集めたな~。他の不思議の扉シリーズも少し読みたくなりました。

「蝦蟇倉市事件2」

『蝦蟇倉市事件2』  

蝦蟇倉市事件2 (ミステリ・フロンティア)

 著者:秋月涼介/北山猛邦/米澤穂信/
     村崎友/越谷オサム/桜坂洋
 出版社:東京創元社 ミステリ・フロンティア




・『さくら炎上』 北山猛邦
・『毒入りローストビーフ事件』 桜坂洋
・『密室の本』 村崎友
・『観客席からの眺め』 越谷オサム
・『消えた左腕事件』 秋月涼介
・『ナイフを失われた思い出の中に』 米澤穂信
以上6編からなるアンソロジー。

『さくら炎上』 北山猛邦
"私"は人と話すのが苦手な高校一年生。ある日、唯一の友達である陽子が違うクラスの男子生徒と待ち合わせしているのを目撃し、こっそりあとをつけていった。廃墟同然の大きな屋敷の庭で陽子は思いもしない行動に出る。それを見た私は…。

陽子だけがかけがえのない大事な友人と思っておりその友人のために"私"はある行動にでるのは明白なのですが、陽子の行動は途中まで謎のまま。だけど真相や動機が明らかになると…こんな形の友情って…。孤独な者同士だから、高校生という思春期だからこそ理解し合える結末なのか?!深い青春友情ものといった感じで、サスペンスなどで映像化してもいけそうな雰囲気。破滅的な雰囲気がよいです。

『毒入りローストビーフ事件』 桜坂洋
蝦蟇倉大学の同期生だった4人は定期的に食事会を開いていた。ローストビーフが美味しいと評判のレストランでの食事中、1人が突然死んでしまう。残った3人は彼が飲んでいた持病の薬と副作用を利用した薬物混入殺人と考え、誰が犯人なのかそれぞれ推理しあう。3人が出した結論は?

小説家、薬屋、学者の3人の推理合戦はテンポいいんですが、私には少し難しすぎる内容だわ。。っていうかみな冷静すぎやしない?「毒入りチョコレート事件」のオマージュ的(?)作品らしいのですが、私は読んでないのでわからず。それより若かった頃のマイケル・ジャクソンと若かった頃のジャッキー・チェンを足して二で割ったような顔というのが気になる。想像できない…

『密室の本』 村崎友
大学の不可能犯罪研究会に属している古城と上緒藍は、先輩でせどり同好会に属している多智花の住むアパートに招かれる。先輩の出すとびきりの謎を解くことが出来たら高価な本をただで譲ると言われ、2人は翌朝またアパートを訪れるが、押し入れにあった大量の本が消え密室の中で先輩が死んでいた。2人は真知博士を呼ぶことにした。

『毒入りローストビーフ事件』から2ヵ月後。真知博士が再登場!3万円もする『真知博士の事件簿』って何なの~w先輩の死体を見て謎かけが始まってるって思う2人もどうなの~?冷静すぎるというかズレてるというか。不可能犯罪研究家にとって真知博士のカリスマ度がよくわかります。真知博士がこの街に存在することで犯罪が増えてるような気がするのは気のせい?

『観客席からの眺め』 越谷オサム
蝦蟇倉西高吹奏楽部の顧問で学生から人気があった勝田が殺された。吹奏楽部を引退し卒業後は蝦蟇倉市を出る予定にしている3年の星野と、勝田に想いを寄せていた智代は事件のことを振り返っていた。表向きとは裏腹に2人は勝田に対し互いに口に出来ないある事情があった。

まず思ったこと。星野の事情ですがこういうことが可能なんだろうか?バレそうな気がするんだけどバレないものなの?『さくら炎上』といい『観客席からの眺め』といい、残酷な高校生の青春(といっていいんだろうか?)ストーリーです。そして『密室の本』に続き不可能犯罪が起こることが当たり前のようになっている蝦蟇倉市に住んでいる人々の感覚も浮き彫りに。救われない高校生の話は何とも言えません…

『消えた左腕事件』 秋月涼介
蝦蟇骨の森美術館で顔を潰され左腕を切断された男の死体が見つかった。さらに同室に飾られてた絵の中の老人も死体と同様に横顔を切り裂かれ左腕が刳り抜かれるという奇妙な事件で、現場に呼ばれた真知博士は事件の詳細を茶房「白龍」でみなに聞かせる。そしてこの不可解な事件の謎を解こうと推理するが事件の真相は意外なものだった。

うっ、こんな結末とは!そしてここにも真知ワールドに侵されている人たちが!というより市民を不可能犯罪推理狂にしているのは真知博士がいろんな所で事件の吹聴しているからだとみた!そのうち本当に「真知博士、最期の事件」が現実になっちゃうよー(><。)

『ナイフを失われた思い出の中に』 米澤穂信
仕事で日本に来たヨヴァノヴィチは、妹が日本にいるときに友人になった大刀洗万智に会いに蝦蟇倉市にやってきた。彼女の仕事に同行することになったヨヴァノヴィチは、幼い姪を殺害した青年の事件を調べる彼女を見て何を思うのか。

それほど米澤さんの著書を読んでるわけではないですが、好きな作家さんの1人。ですがこのストーリーはあまり理解できなかったかも。太刀洗さんのキャラ、ヨヴァノヴィチさんの背景、妹と太刀洗さんの関係がはっきり見えてこない。調べてみるとどうやら『さよなら妖精』という話の続編、あるいはスピンオフ的な話みたい。この本を読んでなかったらわかりづらいかも。。『さよなら妖精』を読んでる人には嬉しい短篇だろうな~。でもこのシリーズは蝦蟇倉市という1つの枠組みが出来てるような気がするので、単発だけで充分読めるのはいいですが、元ネタのような別の話を読んでないと背景が理解しにくいものを入れられると困っちゃう~(←『さよなら妖精』を読んでないのですねてるだけ)


読み終えて全体的にどんでん返し的な内容が多かったような気がします。不可能犯罪の発生件数が異常に多い蝦蟇倉市ならではの話が「1」より増えたような気も。真知博士のカリスマ性も手伝ってか、市民の事件に対する反応までもが普通じゃなくなってる!なぜみな死体を見たらすぐ推理が始まるの?その前に常識的に考えてまずすることがあるでしょー?って言いたくなっちゃう。

それもこれも真知博士の存在が大きいのですが、「1」の時となんか雰囲気が違うような…。といっても「1」の時の博士をあまり覚えてないですケド。。ストーリーの文章どおりに受け取ると、真相解明どころか今までの事件もちゃんと真相を解明したのかしら?と思えてきました…。まさか実は真相はちゃんと理解してるけど何かしらの理由で真犯人を泳がしてるとか?「3」があるなら読みたい!真知博士がどこまで真相を知っているのかが知りたい!ぜひ「3」も企画してくださーい。

「Story Seller3 ストーリー・セラー3」

『story Seller 3 ストーリー・セラー3』  

Story Seller (ストーリー セラー) Vol3 2010年 05月号 [雑誌]

 著者:沢木耕太郎、近藤史恵、湊かなえ、
     有川浩、米澤穂信、佐藤友哉、さだまさし
 出版社:新潮社 小説新潮5月号別冊





・『男派と女派 ポーカー・フェース』 沢木耕太郎
・『ゴールよりももっと遠く』 近藤史恵
・『楽園』 湊かなえ
・『作家的一週間』 有川浩
・『満願』 米澤穂信
・『555のコッペン』 佐藤友哉
・『片恋』 さだまさし
『男派と女派 ポーカー・フェース』
前半は初体験の話で旅先であった盗難と靴磨きについて、後半は人生で大事なことを男と女のどちらに教えてもらったかについて書かれたエッセイ。沢木氏は知らないことは何でも人に訊き、そして教わるらしい。それが根底にあるから人生で大事なことを男と女のどちらに教えてもらったかということを思ったりするんだろうな。
それより冒頭で沢木氏が2~3年前のことを最近と言ってる箇所であることを思い出しました。以前、私が「この辺り、"最近"(あるいは"この間")来たような気がする」と言うと友達が「それっていつ?」、私「2~3年前かな」、友達「やっぱり」。何でも歳を取ると最近という定義が長くなるらしい…。10代の若い子の最近はつい2~3日前のことを示し、20代でも1週間前~数ヵ月。が、アラフォー頃から1年以上も前のことを"最近"というようになるんですって。なるほど、わかるような気がします…。本文とは全く違う感想になってしまいました^^;

『ゴールよりももっと遠く』
13年間自転車ロードレースの選手として走り続けてきた赤城。監督補佐としてチーム・オッジに戻った今、なぜ自分がここにいるのか、自分の運命とはを考え現役を引退する1年前を振り返る。『サクリファイス』のスピンオフ。

年齢、身体能力から引退を意識するようになった35歳の赤城、気になるのは石尾のこと。今回はページ数は少ないけど赤城と石尾の話がまた読めて嬉しい。もうスピンオフの話はないのかな。筆者コメントにはこれで終わりのようなまだあるようなどっちつかずのコメントが…。とりあえずその後を書いた長編『エデン』があるようなので図書館で予約してこよう。

『楽園』
5歳の時、大震災で双子の姉妹を亡くした雪絵は20歳を目前にしたある日、トンガへ降り立つ。ある目的があって来たものの、その目的の場所はよくわかっていない。ゲストハウス経営している日本人と偶然出会い、そこに泊まっている日本人親子と行動を共にするが…。

20歳になったら自分の名前に責任を持たなければならない――そんな彼との他愛もない会話がきっかけの一つとなりずっと心の中で思っていたことを行動に移す雪絵。彼氏の行動や絵がかなり都合よすぎる感が…。あと大事な要素となる部分の一つを震災という出来事にひっかけてるのが個人的にどうも…。全体的に一つ一つの大事な事柄がうまくいき過ぎてる感がありました。

『作家的一週間』
タイトル通り作家の一週間を描いています。最初は有川さんの一週間をエッセイ的な感じで振り返っているのかと思ってましたが、文章の中で有川さんらしき人物を"私"ではなく"彼女"と第三者っぽく書かれているので、あれ?もしかしてフツーの物語?と思ってしまいました。でも読み終えて納得!そういう事なのね。。出版コードに引っかかる言葉についてにも触れているのですが、今回はシモ系。ちょっと勉強になったかも(笑)。なによりも嬉しいのは甲子園の話題が文中に出てくること。旦那さんの甲子園像に納得。ついでにショートショートの「S理論」より旦那さんの話す「S理論」の方が面白く興味が湧きました^^

『満願』
藤井は弁護士を目指し勉強していた学生時に畳屋を営んでいる鵜島家で下宿をしていた。そこの奥さんが殺人事件の容疑者になった時、弁護士になった藤井は彼女の弁護人となる。彼女の殺人の目的とは?

ちょっとだけ松本清張のような雰囲気がありこういうストーリー好きです^^凛としていて優しく上品な奥さん、彼女のような誇り高き人がどうして畳屋のご主人のような人と結婚したのか不思議でしょうがない。殺人目的も彼女ならではといっちゃそうかもしれない。この本を読んで得た教訓、「女房は立派になってはいけない」

『555のコッペン』
東京ビッグサイトで起きた事件に巻き込まれてから4ヵ月後、土江田は神戸に行くため東京駅にいた。コーヒーショップで時間を潰していると知らない女性と相席になるが、土江田に対し奇妙な言動をとる。その後、彼はある殺人事件に巻き込まれることとなる。

近藤史恵さんと同じくストーリー・セラーシリーズの常連作。最初はんん?と思っていたものの、3作目となるとどこか愛着のようなものが出てきました。ずっと土江田の過去が謎のままきており、今回は少し背景が描かれており過去がわかったようなわからないような…。大まかなことはわかったつもり。女子高生の格好をした探偵:赤井も登場し2人で東京駅構内を逃亡。世の中、いつどんな形で殺人事件に巻き込まれるかわかったもんじゃない。数字にまつわる連作もこれで終わりだそうですが、筆者コメントの予告を見るとまたどこかで土江田が登場しそうな予感。

『片恋』
製作会社のスタッフをしている石橋南の元へ警察からある男性の死を知らせる電話が入る。南には全く心当たりない男性だが、その男性が南の連絡先を所持していたからだった。ある日、南は偶然に無差別殺傷事件現場に遭遇し、ジャーナリストとしてカメラを回すが心の中では葛藤していた。その夜、亡くなった男性の弟から電話が入り通夜に来て欲しいと懇願され行くことを決心する。そこである事実を知ることになる。

さだまさしさんの長編は読んだことありますが短編を読むのは初めて。さださんとは知らずに読むと若い作家さんが書いたものだと勘違いしそう^^;大きく分けて知らない男性の死、無差別殺傷事件の2つから成り立ってるのですが、登場する刑事の言動がまるでドラマに出てきそうな雰囲気。ラストはキレイにまとまってますが、いくら好奇心が強いといっても見知らず人の通夜に行くかな?腑に落ちない点はあるものの思っていたよりは面白く読めました。
『story Seller』シリーズは最初、伊坂幸太郎さんと有川浩さん目当てで読み始めたのですが、3まで読んで米澤穂信さん、湊かなえさん、近藤史恵さん、本多孝好さん、道尾秀介さん等々今まであまり読まなかった作家さんにも出会えてよかったです☆
編集後記を読むとこの形での『story Seller』はこの号が最後だそうな。そして新たな展開にご期待!と。ってことはいつか違う形で新たな展開で同じようなのが始まるのかな?期待してまーす。

「蝦蟇倉市事件1」

『蝦蟇倉市事件1』  

蝦蟇倉市事件1 (ミステリ・フロンティア)

 著者:道尾秀介/伊坂幸太郎/大山誠一郎/福田栄一/伯方雪日
 出版社:東京創元社 ミステリ・フロンティア






・『弓投げの崖を見てはいけない』 道尾秀介
・『浜田青年ホントスカ』 伊坂幸太郎
・『不可能犯罪係自身の事件』 大山誠一郎
・『大黒天』 福田栄一
・『Gカップ・フェイント』 伯方雪日
以上5編からなるアンソロジー。

『弓投げの崖を見てはいけない』 道尾秀介
蝦蟇倉市には、自殺者の霊が集まっているのでこの道を走行中は崖を見てはいけない、霊と目が合うとあの世に連れていかれると言われている弓投げの崖という自殺の名所がある。そこで安見邦夫は前方の車に衝突し事故に遭ってしまう。悲劇から3ヵ月、刑事の隈島は邦夫の妻に犯人を絶対捕まえると約束するが、事故から逃げ去った若者が殺された。一体誰が犯人なのか――

しょっぱなから道尾さんなのでこりゃ期待大だと思っていたら、ホントに期待通りでした。読み手にきっとこうだろうと思わしておいて実は違ったなんて!いい意味で騙されたー。あとでもう一回読み直すとちゃんと伏線はあったのね。。奥付の前ページに執筆者コメントが記載されており、道尾さんだけ問題を出しているのですが私はてっきり邦夫だと思ってました。でもわざわざ問題にしてるってことは違うのか?!他の方の感想を拝見してると皆さん出されている3つのヒントにのっとってちゃんと推理されてます。他のストーリーとの時系列も関係してるようで意外と難しい問題だったのね~。道尾さんの解答はどこかで発表されてるのかな?
※初版に時刻の誤植があるみたいです。詳しくは出版社のHPに記載されてます。

『浜田青年ホントスカ』 伊坂幸太郎
僕は慣れない車で蝦蟇倉市にやってきた。スーパーの駐車場で相談屋をしている稲垣から「アシスタントをしないか」と声を掛けられる。客との応対中に裏の部屋にあるモニターで監視し、1週間後に自分の代役をして欲しいと言われた僕はそこに寝泊まりし言われた通り監視する。そして1週間後…

こちらも二転三転し意外な展開に。相談に対する稲垣の素晴らしい(?)解決法、何も考えてなさそうな浜田青年の会話が軽妙でサラッと読めちゃうんですが、結末はどちらかと言えばダークな感じ。でもそれを感じさせないのが不思議。ちなみに伊坂さんは他の作品を数作読んでから仲間に加わったそうです。だから他のストーリーとリンクしている部分があるんだ。遊び心があって面白い♪

『不可能犯罪係自身の事件』 大山誠一郎
不可能犯罪の発生件数が名物になるほどの蝦蟇倉市。不可能犯罪係の真知博士のところに10年前に起きた不可能犯罪を解決して欲しいと当時の被害者の息子:水島賢一が現れる。話を聞いてるうちに博士は寝てしまい目を覚ますと水島が殺されていた。密室で起こった事件のため博士は疑われてしまう。10年前の事件と同じく今回の事件も犯人を見つけるのは難しいのか。

トリックが複雑というか無理っぽくないですか?というのが正直な感想。そんなややこしい方法でよく殺害できたなと感心。謎解き展開は王道のような感じですがちょっと凝りすぎ感が…。犯人側の計画もすごいけど、それを推理する側もある意味すごいです。

『大黒天』 福田栄一
1年前に亡くなった祖父が始めた店を、祖母は独り身になっても切り盛りしていたがある日倒れてしまう。開店当時から店頭に飾られていた木彫りの大黒人形が違う人間に渡ってしまったことが原因らしい。その経緯を不審に思った孫の靖美と輝之は大黒人形を取り戻すため調べ始めるが、思わぬ過去を知ることとなる。

知らない人物に、"大黒人形は実は祖父が盗んだもので、元の持ち主に依頼されて返却を求めにきた"といきなり言われたことで動き出す孫たち。姉の靖美は行動力あるなと思っていたら…なるほど、そういうことだったのか。意外な人物が靖美の上司でびっくりしたよ。ストーリーの中で一番インパクトあったかも^^;

『Gカップ・フェイント』 伯方雪日
蝦蟇倉北高3年の鳴海凪は、現市長の独断で開催されることとなったGカップ in 蝦蟇倉市に地元代表として出場することとなった。だが試合前に市町のオブジェ(仏像)をつくった彫刻家の死体が見つかる。事件担当で不可能犯罪係に属している父のめちゃくちゃな推理をよそに、不審に思っていたことをヒントに鳴海凪の脳が回転し始める。

Gカップとはグラップリング・ワールドカップの略らしい。初めて聞く名前だったので、この競技も知名同様に架空の格闘技名だと思っていたら実際ちゃんとあるみたい^^;格闘技がベースになってるので格闘技ファンが読むとより一層面白いのかな?高校生の凪が謎解きをするのですが、不可能犯罪係に属している彼の父親は、息子に事件のことをベラベラとしゃべるしゃべる(笑)。これまでに何度か凪の一言がヒントになり事件が解決したことがあるらしいんだけど、それにしてもこの親子、面白過ぎです。。全編でこれだけがギャグちっくというか別世界の話みたいというか、いかにも架空の街の話という雰囲気でシメを飾るのにちょうどいいかも。


以上、架空の街「蝦蟇倉市」を舞台に1970年代生まれの人の作家5人によって書かれています。冒頭にある蝦蟇倉市の地図で場所を確認しながら読んだのですが、「蝦蟇倉(がまくら)市」とか「スーパーホイホイ」とか「棺越(ひつこし)デパート」とか名前からもうこの現実味がないよ(笑)。

登場人物がリンクしている作品もあったりして、違う作家さんが書いていても全編が繋がってる感じ。そして読み終えると全部違った事件なのに各作品の時系列がわかるようになっているので、アンソロジーといえども繋がりが楽しい。パート2も出ており現在図書館に予約中。次はどんな事件が起こるんだろう。

「聖なる夜の犯罪」

『聖なる夜の犯罪』  MISTLETOE MYSTERIES

聖なる夜の犯罪

 編者:シャーロット・マクラウド
 訳者:中村保男ほか
 出版社:早川文庫 ミステリアス・プレス文庫 




・『クリスマスに保温カバーを』 シャーロット・マクラウド
・『クレセント街の怪』 ピーター・ラヴゼイ
・『クリストファーとマギー』 ドロシー・ソールズベリ・デイヴィス
・『カープット』 エリック・ライト
・『生きたクリスマス・ツリー』 ジョン・ラッツ
・『三人の不良少年』 ハワード・エンゲル
・『当たりくじはどこに』 メアリ・H・クラーク
・『サンタクロースがやってくる』 ビル・プロンジーニ
・『小さな敷居際の一杯』 シャーリン・マクラム
・『クリスマスを愛した男』 ヘンリー・スレッサー
・『妖精コリヤダ』 エドワード・D・ホック
・『笑うオランダ人』 アーロン・エルキンズ
・『追いつめられたオート』 スーザン・ダンラップ
・『ホッ!ホッ!ホッ!』 アイザック・アシモフ
・『聖夜』 マーシャ・ミュラー

以上、15編からなる短編集。このうちいくつかの感想を。
『クレセント街の怪』
クリスマス・イヴに幽霊が出るという屋敷を所有者の許可を得て留守中に調査する元警官。夜中、隙間風が入ってきたので部屋を調べていくと屋根裏部屋から女性が現れた。彼女は一体…
このストーリーは私の想像力を活発にしてくれます。。ことごとく私の想像は間違っていたわけだけど(笑)。女性の正体は?幽霊が出るという真相は?この2つの謎解きがテーマになっているのですが両方ともちゃんと解決というかオチがあるのでよかったよかった。

『生きたクリスマス・ツリー』
クリスマスまであと5日。4歳の息子は本物のクリスマス・ツリーが欲しいと口をとがらせ、父親のクレイトンはクリスマス騒ぎを最小限に食い止めようとしていた。そんな時、刑務所に入っているクレイトンの兄ウィリーが本物のツリーを持って家にやってきた。刑務所の善行プログラムでクリスマスが終わるまで出してもらえたというのだ。そしてクリスマスの翌朝、彼は姿を消した。
郵便詐欺罪で服役している兄ウィリーは若い頃から詐欺で生計を立ててる人間だけど誰からも好かれるような人柄。そんな兄が連絡もなしにクリスマス前に突然家にやってきた。この物語はクリスマスにふさわしい正統派という感じで心温まりつつせつない話。なんとなくラストは想像できますが、うん、良いストーリーでした。

『当たりくじはどこに』
クリスマス特別くじで200万ドルを当てたアーニーは外泊中の妻を驚かせようとしていた。その晩に当たりくじを下着にピンで留めバーへ行ったアーニー、思わずくじで200万当たったことを喋ってしまい盗まれてしまう。それを知った妻は犯人と思われる人物の家に夫と行くが…。果たして当たりくじは戻ってくるのか?
妻が姉の家に泊まりに行ってる間にクリスマス特別くじが当たっていることが判明。妻さえ家にいてくれれば夫がバーに行って当たったことをべらべら喋らずにすんだのに(><)。だけど200万ドルが当たったくじをそう簡単に諦める妻ではなかった!そりゃそーだ。頼りない亭主にこの妻ありという話でラストも粋。

『小さな敷居際の一杯』
大晦日の夜、空き巣に入ったルイスの前に住民と思われる老婆が2階から降りてきた。だが悲鳴を上げるわけでもなくルイスに対し接待し始めた。我に返り空き巣としての仕事をし始めようとしたその時…
すっかり老婆のペースに呑まれてしまったルイス。読んでいて「そろそろおいとました方がいいんじゃない?」と声を掛けたくなっちゃうよ。スコットランドの踏み始めの話は本当の話?オチを考えると信じちゃうかも。

『笑うオランダ人』
弁護士のクロードは金持ちの顧客のわがままで一緒に画廊に行くことになった。そこである絵画を見つけクロードは犯罪という行動に出ることを決心する。
わがままで傍若無人な振る舞いをする顧客にクリスマス前日の買い物に付き合わされたクロード。その彼が絵画をめぐり犯罪を犯すのですが何とも言えない結果に。お気の毒。。画廊側のずる賢さには感心。最期の言葉のやりとりもGOODでした。

『聖夜』
家出をした14歳の甥をクリスマス・イヴの日に捜すことになったシャロン。都会の危険地帯やいかがわしい場所や路地裏を捜していると甥と一緒にいた少女に出会う。この少女から甥の話を聞いたシャロンは…
クリスマスプレゼントにモペットというバイクを欲しがっていたのに両親に買ってもらえなかったから甥は家でしたとシャロンは思っていたが、どうやら違うようで。思春期の少年には少年なりの考えがあり、今回の家でにもちゃんと理由があるようです。このストーリーを最後にもってきたのはいいかも。


なぜ今頃クリスマスの本?それは積読本を1冊でも減らしたくて一番右にあった本を取っただけという(笑)。本編が別にあり番外編が収録されてたり、ファンタジーっぽいのがあったり、ミステリー等々いろんなものが詰め込まれている感じ。中には意味がよくわからないのもありました(これは私だけがそう思うのかも^^;)
なのでこのアンソロジーって個人的にはちょっと微妙だったかも…。欧米のクリスマスものって宗教的なものや風習などが大きく絡んでたりするので、縁のない私にはいまいちピンとこなかったのかなと自分自身を無理矢理納得させてます^^;
そんな中でも良かったなと思ったのは『生きたクリスマス・ツリー』、『当たりくじはどこに』、『笑うオランダ人』かな。クリスマス時期に読んだらもう少し面白く読めたかも?

「Story Seller2 ストーリー・セラー2」

『story Seller 2 ストーリー・セラー2』  

Story Seller〈2〉 (新潮文庫)

 著者:沢木耕太郎、伊坂幸太郎、近藤史恵、
     有川浩、米澤穂信、佐藤友哉、本多孝好
 出版社:新潮社 小説新潮5月号別冊




・『マリーとメアリー』 沢木耕太郎
・『合コンの話』 伊坂幸太郎
・『レミング』 近藤史恵
・『ヒトモドキ』 有川浩
・『リカーシブル』 米澤穂信
・『444のイッペン』 佐藤友哉
・『日曜日のヤドカリ』 本多孝好
『マリーとメアリー』
沢木耕太氏が国際線に乗った時、まず最初に飲むのがブラッディ・マリー。そのお酒の名前の由来から始まり、歌の歌詞"五番街のマリーへ"、アメリカ都市伝説"ブラッディ・メアリー"などに話が広がっていきます。マリーなのかメアリーなのかという著者の想像も書かれているエッセイのようなもの。アンソロジーのトップなのでまぁ軽く読んでねという感じ。ちなみに作中で著者が深夜TVで見た"ブラッディ・メアリー"をモチーフにしたアメリカドラマ、それってまぎれもなく『スーパーナチュラル』だよね?ゴーストバスターズ風の若い兄弟って^^;

『合コンの話』
男3人女3人で行われた銀座での合コン。同時に近くで恐ろしい事件が起きるも合コンには全く無関係。合コン中に様々な出来事が起こるもそのことにより人生は変わらない。もちろん世の中に何の変化ももたらさない。いわゆる普通の合コンの話。
普通の物語とは違い描き方がちと面白い。あと合コンの人数の定義(のようなもの)、どの子が気に入ってるかのサインの出し方、会話の心理など勉強になりました!といっても合コンに行く歳じゃないので参考に出来ないのが残念!

『レミング』
今年からチーム・オッジの単独エースとなった石尾。だがレース中に失速、さらに次のレースではリタイアと立て続けにらしくない結果となる。補給のトラブルが元だがこれは意図的なのか、それとも考えすぎなのか――。
『story Seller』同様に『サクリファイス』の外伝。「プロトンの中の孤独」ではエースの久米がいることからその後の話。エースとアシストの役割分担はホント割り切ってないと難しそうに見えます。怪我を経験した選手の意地でもレースに出たいという想いも半端ないなぁ。しかし『サクリファイス』の外伝っていくらでも続きそう。

『ヒトモドキ』
小学6年の時、我が家に突然やってき一緒に暮らすことになった父方の伯母。異常なほどの倹約ぶりでお金をかけないということに関しては天下一品だった。やがて行き過ぎた行為が家族に被害をもたらし近所にまで悪い噂が立ってしまう。のちに出て行くが新たな住む場所はやがてゴミ屋敷に。人の常識が全く通じない人間の姿をした伯母"ヒトモドキ"の話。
うー、すごい話です。とにかく常識を遙かに超えまくりの倹約ぶりで周囲に迷惑かけまくりの傍若無人ぶり。作中にもあるけどたまにTVで放送されるゴミ屋敷見て「身内の人はなぜここまで放っておいたんだろう?」と思ってましたが、このストーリーを読んで少し考えが変わったかも。こりゃ説得なんて無理ってもんだ。『story Seller』の時といい有川さんの話はインパクト強すぎる~。

『リカーシブル』
母親の故郷へ親子3人で越してきた。私は新しい中学校でなんとか馴染んでやっているが、弟のサトルは「これから
怖いことが起こりそうな気がする」と不安がる。鬱陶しい弟だがもしかして未来が見えるのか?
『story Seller』では「玉野五十鈴の誉れ」を書いており、思わずこれが収録されてる元の本が読みたくなり『儚い羊たちの祝宴』も借りて読んだ私。今回のストーリーはもしかして続きがあるのかな?なんか語り手から見た弟サトルの描写はあるものの、はっきりとした性格(というか持っているもの?)がよくわからず全体的にミステリっぽくなってるような気が…。好きな作家さんなのでこりゃ次に期待しよう!

『444のイッペン』
3ヵ月前に東京タワーで起きた事件で失職した土江田はペット博で運営スタッフの欠員補充として働くことになった。だがそこで四百四十四匹の犬が忽然と消えるという事件が起こる。警察が捜査に来るがそれとは別に女子高生の格好をした赤井までもがまたしても事件を調査していた。
一応この話は『story Seller』に収録されていた「333のテッペン」の続編かなと。探偵赤井と謎の男土江田コンビは健在だったのねー。今回は土江田の過去のヒントが少~しずつわかるように。といってもあくまでヒントでありまだ詳細は何もわかっちゃいないけど。。もしかして土江田って宇宙人だったりして。(←まんざら悪くない想像だと思うw)

『日曜日のヤドカリ』
よく晴れた日曜の昼、俺と弥生さんが家にいると訪問者が2組やってくる。前者は事なきを得たが後者の方はただならぬ客だった。
俺と弥生さん…というとまるでカップルか夫婦みたいだけど弥生さんは男が結婚した相手の小学5年生の連れ子。親子っぽくない会話を繰り広げるもこの2人はこれが1番しっくりくるんだとか。普通っぽくなくておっとりしている2人、のどかな日曜をのんびり過ごす…のではなく少しミステリちっくな内容になってます。作中に出てくる"男はヤドカリ"という言葉、これは意外と名言かも~。ところでカレーの匂いや味がしないカレーってどうやったら作れるんだろ?!


このアンソロジーの2巻が出てたのを知りませんでした。2巻を読んでこりゃ3巻もあるなと。。と思っていたら文庫はまだだけど雑誌として既に出版されてました。(3巻では湊かなえさんの名が!!)
オール読み切りとありますが、2作品は一応前作から続いてるようなものなので(完全な続編ではないけれど)やはり『story Seller』から読んだ方がいいような気がします。個人的には『story Seller』の方が好きですが、このシリーズ本はなかなか充実していてお気に入り☆早く3巻も読もう!

「I LOVE YOU」

『I LOVE YOU』  

I LOVE YOU (祥伝社文庫)

 著者:伊坂幸太郎/石田衣良/市川拓司/
     中田永一/中村航/本多孝好
 出版社:祥伝社 祥伝社文庫




<感想>


・『透明ボーラーベア』 伊坂幸太郎
・『魔法のボタン』 石田衣良
・『卒業写真』 市川拓司
・『百瀬、こっち向いて』 中田永一
・『突き抜けろ』 中村航
・『Sidewalk Talk』 本多孝好
以上、男性6名による恋愛アンソロジー。

『透明ボーラーベア』
"僕"は自身の転勤によりもうじき遠距離恋愛になる彼女と動物園に行った。そこで姉の元彼氏:富樫とその彼女と偶然出会う。昔から男と別れると旅に出てた姉は富樫と別れた後も旅に出たが、それきり帰ってこなかった。シロクマが好きだった姉、そのシロクマがいる動物園で僕たちは何を思うのか。

恋愛っぽくないんだけど、こんな繋がりがあってもいいかも…という感じ。登場人物は限られてるのに姉の存在感がすごいあるストーリー。バリ島から帰ってき「ケチャケチャ」としばらく口ずさむ姉。なんか親近感あるわ~。そうそう、厳重にされてるレッサーパンダってもしかして?ここってあの動物園だったのっ?!

『魔法のボタン』
彼女と別れ4日間で3kg体重が減った"ぼく"は20年を超える幼馴染みの萌枝と飲みに行くことに。それ以来、休みがくるだび会うようになる2人。いつもはすっぴんでジャージ姿の萌枝がある日待ち合わせ場所にイメチェンしてやってきた。

幼馴染みや長年の友人から一線を越えるのって難しい。それを2人が通っていた幼稚園時代に流行っていた"魔法ごっこ"を上手に取り入れてるんですが、読んでてなんだかハズカシイ。。やってる本人たちはドキドキもんだろうけど^^;最後に萌枝の持ち前の明るさが炸裂している会話がなければほんとハズカシイ話だったかも。。でも"魔法ごっこ"のような会話、ちょっとしてみたい(笑)。←もちろんハッピーエンドで終わること前提で。

『卒業写真』
"わたし"に急に声を掛けてきたのは中学時代の渡辺君だった。なんとなく思い出したものの、どうも話が噛み合わない。どうやら違う渡辺君と勘違いをしてることが判明し…

彼女の思いだそうとする姿や慌てぶりはなんか共感できる。でもそこからその展開は…こういうのもありなんだ。忘れかけてた初恋…今再び恋の予感。

『百瀬、こっち向いて』
大学卒業間近に里帰りした"僕"は神林先輩と偶然出会った。高校時代、彼女と付き合ってた男性は僕の憧れの宮崎先輩だった。ある日、宮崎先輩から浮気が神林先輩にバレないようその浮気相手と僕が付き合ってる演技をしてくれと頼まれる。女性と全く縁がない僕は…

人間レベル2と自分で位置づけしている僕、そんな僕にいきなり百瀬の存在が心の中にどっぷり入ってきたもんだからたまったもんじゃない。人を好きになって苦しい思いをする僕に対し、友人の田辺くんは純粋だ。この田辺くんの今が知りたい。主人公と同じような感情をもう経験したのか気になるところ。

『突き抜けろ』
"僕"は同じ大学に通う彼女がいるが、うまく付き合っていくためにルールを決めていた。電話する日、会う日を決めそれなりにうまくやっていたある日、友人の坂本から地元の先輩である木戸のアパートに一緒に行ってほしいと頼まれる。それ以来毎週木戸のアパートに行く2人だった。

これは青春ストーリー?木戸のキャラが際立ちすぎ(笑)。伊坂幸太郎の小説に出てきそうなキャラだわ。ところで富士山って5合目まで車で行くことができ、そこから日の出が見れるということを初めて知りました。富士山、死ぬまでに一度は行ってみたいなぁ。
ちなみに同著者の『絶対、最強恋のうた』という本とリンクしてるらしい。←知ってしまうと気になる~。図書館で借りてこよっと^^

『Sidewalk Talk』
"僕"が彼女を待つのはこれが最後。今日で5年間の結婚生活が終わろうとしていた。離婚を決めた夫婦が最後の晩餐をするストーリー。

大人の男女が穏やかに最後の晩餐をしてます。これが本当に最後?と思ってしまうような雰囲気の2人。このまま別れていいのか?と思っていたら絶妙なタイミングで香水の思い出が…。しっとりとしてラストを飾るにふさわしい内容。
全体的に男性が書く恋愛ってどこかロマンチックのような気がする。
こういう青春時代があったら、こんな出会いがあったら、こんな落ち着いた恋愛の終わりがあったら…なんて。なのでどれもドロドロしてなく結果がどうであれ、全体的に前向きな終わり方なので後味も全く悪くない。恋愛モノって嫌いじゃないけど読んでてたまに「こんな展開ないない~」って小説なのに突っ込みたくなる(笑)。「あるある~、わかるわかる」と頷けるようなものすごい現実的な恋愛ストーリーってないのかな?

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