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「三匹のおっさん ふたたび」

「三匹のおっさん ふたたび」 有川浩
『三匹のおっさん ふたたび』  

三匹のおっさん ふたたび

 著者:有川浩
 イラスト:須藤真澄
 出版社:文藝春秋



『三匹のおっさん』の続編。
定年退職後に近所のアミューズメントパークで嘱託として働くことになった剣道の達人キヨさんこと清田清一、今は息子夫婦に任せている居酒屋「酔いどれ鯨」の元主人、柔道家のシゲこと立花重雄、娘の早苗と2人暮らしをしており見た目はおとなしい感じだが機械にめっぽう強い工場経営者のノリこと有村則夫。昔「三匹の悪ガキ」だった幼馴染みの3人――今は「三匹のおっさん」がキヨさんの定年をきっかけに物騒になってきた町を守るため私設自警団を結成することに。6話+ボーナストラックから成り立っており次々に起こる問題を解決していく痛快アラ還の世直し物語。


第一話
キヨの息子の嫁、貴子が去年の暮から知り合いの肉屋でパートを始めた。貴子の息子である祐希が反発ばかりしているのはもしかしてお金を稼ぐ苦労もしらない自分を嫌っているんじゃないかと思い、働きに出てお金を稼げば息子との溝を埋めることが出来るのではと考えてのことだった。だが手際が悪く周囲を見ず自分の事で精一杯の貴子は、職場で浮く存在で店のテンポに全く合ってなかった。今すぐにでもパートを辞めたいと思うが、今辞めたら周囲からそら見たことかと言われるのがオチ。それが悔しくて意地でも辞めてたまるか!という意地だけで続けていた。そんな中、年が近い他のパート、小島育代と話すようになり友達が出来たと思われたがトラブルが起こる。

貴子が初めて給料をもらいケーキを買って帰った時、家族みなで一緒に食べようってことになり貴子は恐縮するが、「こういうのは気持ちなんかだら」と義母と夫に言われ、息子もぶつぶつ言いながらもついてくる。このくだりが何だかほっこりしていていいなと思ったり。憎まれ口を叩きながらも母親を心配する祐希もいい。その祐希のことを一番理解しているのが祖父のキヨ。いい感じ☆貴子の話だけれど早苗と祐希のエピソードも少し盛り込まれており、最後の母親の爆弾発言で祐希の顔を真っ赤にさすのはさらに微笑ましい☆


第二話
シゲは購読している将棋雑誌を買うために商店街の「ブックスいわき」に立ち寄った。そこで学生服を着た3人の少年が悪さをしてるのに出くわし、追いかけようとするが店主に引き止められる。店主から万引きの実態を知らされ、シゲは万引きの見張りを買って出た。こうして三匹のおっさんはパトロールを開始する。ある時、娘に万引きをすすめた母親の対応をした本屋の店主は、思うことがあって万引き常習犯の中学生を捕まえて欲しいと3人に頼む。祐希も手伝うことになったある日、その中学生たちが店にやってきた。シゲは万引き少年を捕まえる気でいたが、店主は「万引きをしないで帰ってくれるのが一番」と。万引きする前に抑止する方を望んでいる。だけどこのままだと先日出会った娘に万引きをすすめた母親のような身勝手な親になってしまうと考え、捕まえて親を呼ぶ。警察を呼ばない条件として書店の仕事を手伝わせる。一方、そろそろ進路を考えないといけない祐希と早苗。早苗は一応第一志望は決めているものの、将来のビジョンが全く決まってない祐希はいろいろ考えた末、進路を決める。

万引き常習犯たちに書店を手伝わせ、バイト代を払い書店の売り上げや実利益、さらに1冊売るといくら本屋は儲かるかの話を聞かせる。私も本屋さんがどんな風に儲けているのか全く知らなったから驚いた。有川さんのあとがきを読むとこの第二話に思入れがあるらしい。出版社が取りすぎのように思われるけど、その本を売るためには宣伝や次作の資金が必要。ベストセラー作家の売り上げで新人作家の本が出版できる。なので一冊の本にはいろんな経費や未来への投資が載っている。読者が買うことで作家はまた本を出せる。そうだよね、本にも流通があるんだから当たり前といっちゃ当たり前だよね。最近は本を購入せず図書館で借りるばかりの私には少し耳が痛いよ……。


第三話
最近どうも早苗の様子がおかしい。成績も落ちるし祐希にも八つ当たり。その原因は……父の則夫がお見合いしたからだった。則夫は妹から、「兄さんが再婚しないと早苗が心配して家を離れられない。男やもめの父親を背負わないといけないなんて不憫すぎる」と言われ、決定打は「早苗も賛成でその方が安心できるって」と言われたからだった。相手の満佐子は則夫のことを知っており、以前、夜のパトロールをしてる時にその女性の家に入ろうとした泥棒を捕まえたことを覚えていたのだ。お付き合いは順調と思われたが、ある日、早苗が志望校を県外にするかもしれないと言い出した。様子がおかしい早苗から事情を聞いた祐希は則夫たちに早苗の気持ちを伝える。

お見合い相手の満佐子さん楽しい♪すっぴんとはかなり違う顔の満佐子さんを見て「お化粧がたいへんお上手で」とお見合い席でありえない言葉を則夫から言われても「おかげさまで♪若い頃から塗るのはかなり」と答えるなんて面白い。夢見る少女のようでいて行動力があり、料理も上手で早苗にも優しい。なかなかのご縁だと思うけどやはりまだ高校生の早苗の気持ちが一番。だって父親との二人暮らしで十分幸せな時にあれよあれよとお見合いの話が舞い込んで、早苗の気持ちがついていかなかったんだね。満佐子さんとは出会う時期が早すぎただけ。このまま友達の関係を続けてもらって数年後にご縁があったらまたお付き合いして欲しいなー。則夫と早苗のどちらもが互いの邪魔にならないように気遣い合ってたことを知り、「なんだよ、相思相愛じゃん」と唇を尖らせた祐希も可愛かったデス♪


第四話
キヨが嘱託として働いているアミューズメントパークで、ゴミの不法投棄が増えていた。キヨが見回っている時に、未成年が地べたに座り込みお菓子やジュースを広げタバコを吸っているのを見つけ注意する。それ以降、大きな家庭ゴミが投棄されるようになった。キヨは注意した青年たちの意趣返しだと思い、シゲ、則夫たちと現場を見張ることにする。ある日、早苗の一言でゴミ投棄の現場を押さえることができた。

作中に出てくる新聞のコラム「変質する老人」がすごく印象的。「最近の若者は」と年配者がこぼしていたのは昔の話。今どきは反対に「最近の年寄りは」と若者がこぼしたくなるような年配者が増加している、近年の年配者の公衆道徳が乱れているとのこと。ゴミの不法投棄な話だけど、その「最近の年寄りは」に関連するような内容も盛り込まれており、電車の携帯マナーの話にはものすごく同意しちゃいました。それに対しキヨの奥さんである芳江の言葉にも納得。「向けられる厚意は素直に頂戴しておくのが愛される年寄りの秘訣」←これが何より一番!


第五話
商店街の寄り合いで活性化するための方法が話し合われた。娘の奈々と近所の神社に散歩に行き、子どもの頃に秋祭りで子供神輿を担いたことを思い出したシゲの息子、康生は「お祭りはどうでしょうね」とふと口からこぼれた。いろいろと意見はあったもののシゲの一言で開催にむけて頑張ることに。だが資金が足りずその資金集めに四苦八苦し、トラブルもあったりしたがなんとか無事神社で祭りを開催することが出来た。

今回はシゲの息子の康生が主役。キヨの息子の健児との関係も描かれており、康生目線での健児の性格もわかるようになってます。そしてそれぞれ子どもの時に自分の親のことをどう思っていたのか。特に康生は子供時分、居酒屋経営の父親が他の親は違い背広姿じゃないのが恥ずかしかった。でも今は孫の奈々の相手をしているシゲを見て、自分もかつて同じように慈しまれていたことを思い出し、幼い日の心ない自分が立ち上がってきて自分を責める。なんでしょう、親になった今、自分を育ててくれた親の気持ちがわかるんでしょうな。


第六話
予備校の帰り道、祐希は三人連れのおっさんに「こら!何をしてるんだ!」とけんか腰に責め立ててこられた。反発する祐希と言い合ってるとそこにキヨが通りかかり、大ごとにはならずに済んだ。キヨはその後に行った「酔いどれ鯨」でシゲと則夫にそのことを話す。ある日、その三人連れのおっさんが放火を発見し消防に通報したことで警察に表彰されたことが新聞に載っていた。それを見た芳江は三人のうち一人は高校の時の部活の先輩だという。ある日、また新聞に載るために頑張ってパトロールをしているとタバコを吸っている若者を発見。高飛車な態度で注意するが今回の若者は少し質が悪そうだった。そこに三匹のおっさんがやってき若者から三人連れのおっさんたちを助け出す。するとその中の一人、松木が一方的にまくし立ててきた。どうやら彼の初恋の相手がキヨの妻である芳江で、夜回りでキヨに勝とうとしたのだった。三月のある日、祐希と早苗は無事に志望の大学に合格。そしてキヨはまた新たに剣道の生徒の募集をすることにした。

偽三匹のおっさんが誕生したのは芳江が高校時代の先輩、松木と偶然会った時にすすめたから。しかも芳江は松木の初恋の相手で今でも芳江のことを可憐だと思ってるほど。さらに地域パトロールで成果を出すと称賛の嵐でやり甲斐のある趣味ときてるからなおよい。さらにさらに夜回りでキヨたちに勝てたらなおさらよい。こんなに年月経って自分自身にも妻がいるのに、初恋がここまで特別なものだなんて松木さん、ものすごく純情だったのね。思い入れが強すぎてちとコワいけど^^;今回はキヨと芳江さんの馴れ初めが知れて楽しかったです!


好きだよと言えずに初恋は、
転校が決まった潤子は、同じクラスの男の子とよく目が合うようになった。そして昼休みに誘われてついていくと桜の木の下で草の名前をし始めた。そして翌日、またその翌日も。ある日、休み時間にクラスの女子数人に囲まれて彼と一体何をしているのかと問われる。人気者の彼と仲良くしているのが気に入らないらしい。それから潤子は彼の誘いを断るようになった。担任が潤子のお別れ会をしてくれることになったが、潤子がクラスの女子から総スカンくらっているのが明るみになっただけだった。卒業式の日、彼に誘われて一緒に帰る途中、草や花の話を潤子にし出す。転校後、生きやすいようにキャラを変えて新しいクラスに馴染むようになった。そしてまた転校。またキャラを変えようとするが、今度は今までの自分よりもしっくりくるような気がしている。

最初、三匹のおっさんに登場する誰かのスピンオフ的な内容かと思ってたらどうやら違う模様。登場人物の名前を見てもピンとこないから一体誰の話なんだろう?と思い調べると……どうやら彼(話の最後の方にやっと苗字が登場)は、『植物図鑑』に登場する日下部樹くんの息子らしい。日下部樹くん本人の小学生時代だという説もあるようで……。今回の話では日下部くんと苗字だけで名前が書かれてないからな~。どっちだろ?でもよ?「うちのお母さんがお別れする人には花の名前を教えておきなさい。花は毎年、必ず咲くからって」って言ってるのでやはり息子説の方が有力なのかな?うーん、わかりません。で、潤子は初登場でいいのかな?


『三匹のおっさん ふたたび』は初めて読んだのに、なぜだか知ってる内容がいくつかあり「ん?」と思ってたらドラマ版で見た内容でした。毎回ではなく思い出した時に何回か見ただけだけど、第一話の小島=藤田朋子さん、第六話の松木=大和田伸也さんというのはしっかり覚えてます!ドラマの影響力はすごい。『三匹のおっさん』では挿絵をイメージしながら読んでいたけど、『三匹のおっさん ふたたび』ではキヨ一家、シゲ一家、則夫一家はドラマでの配役さんを想像しながら読んでましたもん。その中でもシゲ=泉谷しげるさんが一番キャラが合っててナイスキャスト!挿絵だと全然違う見た目だけど(笑)。

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「何者」 朝井リョウ

『何者』

何者

 著者:朝井リョウ
 出版社:新潮社





<簡単なあらすじ>
「あんた、本当は私のこと笑ってるんでしょ」
就活の情報交換をきっかけに集まった、拓人、光太郎、瑞月、理香、隆良。学生団体のリーダー、海外ボランティア、手作りの名刺……自分を生き抜くために必要なことは、何なのか。この世界を組み変える力は、どこから生まれ来るのか。影を宿しながら光に向いて進む、就活大学生の自意識をリアルにあぶりだす、書下ろし長編小説。
(新潮社HPより引用)

<感想>
アパートをルームシェアしている拓人と光太郎、上の階に住んでいる理香と彼氏の隆良、光太郎の元彼女の瑞月、主に彼ら大学生5人の就活を描いた作品。最初は、タイプの違う5人の就活をしながらの日常生活の模様が続く。淡々とした内容ではあるけど、ちょっとした些細な事や、何気ない会話の中に、それぞれの人物像が浮かび上がっていく。

友達同士集まってる最中、ツイッターでその様子をツイートしたり、同じく仲間同士話している最中にそのツイートをこっそり読んだり。話をしている時に携帯をずっと片手にもって話していても、周囲は気にならないのかな?なんて思う時点ですごいジェネレーションギャップを感じる……^^;

・隆良の自分は就活に向いてない、今のこの時代で団体に所属するメリットって何?という持論。そんな隆良に…。
・冷静に周囲を分析している拓人、時々嫌味というか、ヤな感じに聞こえたりする台詞もある。そんな拓人に…。

この本の感想は難しい。上の2つについていろいろ書きたいけど何を書いても傍観者としての意見になっちゃう。でもあえて言うなら、拓人に対しての批判は、私にはただ拓人を傷付けることを口に出し、自身の自己満足というかストレス発散してるようにしか見えなかった。言ってはいけない一線を越えてしまった。これほどまで言われて拓人が変われるとは思えないんだけど、ラストを見ると何か変わった?!でもね、最後の面接での受け応えは現実的にどうなの??面接官は拓人の事情なんて知らないし。最後は自分の感情に浸ってるというかなんちゅーか…。あ~、やっぱり私も観察者になってしまった…。観察者といえばサワ先輩が一番冷静な観察者?

本作はツイッターが下地になってて、ちょっとだけラインやスカイプやFBも出てくる。直木賞作品だから年配の方も読むはず。ツイッターなどのしくみがわからなくても大丈夫なのかな?でも就活してる学生の感情は、普段の生活や仕事でもある葛藤、嫉妬、羨望とリンクする部分があるからそこに共感を得ることが出来るということかしら?なにはともあれ本書の感想はやっぱり難しい…。ってかね、本作を読むと人間不信に陥りそう…

P.S 光太郎が作る特製絶品キーマカレーが美味しいそう♪パスタに使うインスタントのミートソースって、カレー粉が入ってないだけでキーマカレーの材料と一緒って初めて知った!なんでレトルトのミートソースに好みの量のカレーパウダーとひき肉と豆と野菜を入れれば簡単にキーマカレーが出来るらしい。さらにチーズとかいれてもさらに美味しくなるとか。これはマジで美味しそう。

もう一つ、プリンはフレンチトーストを作るための材料と全く一緒なので、食パンの両面にぐちゃくちゃにしたプリンを塗ってフライパンで焼けばカラメル風味のフレンチトーストが出来るらしい!やーん、これも美味しそう♪実践してみたいけど、私がすると敗しそうだから実際作ってみた人の感想が聞きたいなぁ。なんなら出来上がり写真付きの光太郎シェフの料理本出して欲しい^^

「ヒア・カムズ・ザ・サン」 有川浩

『ヒア・カムズ・ザ・サン』

ヒア・カムズ・ザ・サン

 著者:有川浩
 出版社:新潮社





<簡単なあらすじ>
真也は30歳。出版社で編集の仕事をしている。
彼は幼い頃から、品物や場所に残された、人間の記憶が見えた。
強い記憶は鮮やかに。何年経っても、鮮やかに。
ある日、真也は会社の同僚のカオルとともに成田空港へ行く。
カオルの父が、アメリカから20年ぶりに帰国したのだ。
父は、ハリウッドで映画の仕事をしていると言う。
しかし、真也の目には、全く違う景色が見えた…。

上記のわずか7行のあらすじから誕生した二つの小説。大切な人への想いが、時間と距離を超え、人と人とを繋げていく。有川浩meets演劇集団キャラメルボックス。小説×演劇の全く新しいクロスオーバーから生まれた物語の光。
(本書帯より引用)

<感想>
『ヒア・カムズ・ザ・サン』と『ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel』の2編が収録されおり、前者はある役者の「この7行のあらすじから、有川浩と成井豊が生み出すそれぞれの物語を読んでみたい」という呟きがきっかけで生まれたそう。後者は上演された舞台に着想を得て執筆されたものだそう。2つは登場人物名や大枠は共有しているけど、話そのものは全く別物となってます。

出版社の編集部に勤務する古川真也は、幼いころから何かに触れるとそこに残された人間の思いや記憶が見えたり聞こえるという不思議な能力を持つ男性。その残された思いが強ければ強いほどはっきりと感じ取ってしまうため、真也は切れるような痛みが走ったり眩暈に襲われることも。その能力を生かしつつ編集部で働く真也は、同僚のカオルの父親をカオルと空港に迎えに行くが…。といった内容。

『ヒア・カムズ・ザ・サン』も『ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel』も登場人物や働いている場所などの背景は同じなのですが、話は全く別物。『ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel』を読み始めて、あれ?2人はそういうことに?ん?時期的に『ヒア・カムズ・ザ・サン』の中では既にそーなってたの?!なんて疑問に思っていたら、空港に迎えに行く時に、あっ、これは登場人物そのままで内容が全く違うパターンなんだと。読み終えてから、巻頭の説明にちゃんとパラレルワールドって書いてあるのに気付いた。タイトルにもParallelって入ってるっちゅーねん(笑)。『ヒア・カムズ・ザ・サン』を読んだ後にすぐ『ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel』を読んだので(1冊の本だから当たり前か^^;)、最初は設定にかなり困惑したかも。

前者はちょっとミステリーのような感じ?後者は夢見る夢子ちゃんの男版。たった7行のあらすじからこんなストーリーを考えるなんてすごい。父親はカオルを愛しており、カオルは長年会っていなかった父親に対し複雑な思いを持っている。そんなカオルの家族のために「余分な」気づき――能力を使おうとしてるのは一緒。
今回はどちらかというと胸が痛い系かも。『ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel』は途中から、これはもしかして目頭が熱くなる展開か?!と覚悟を決めて読んだのですが…やはり目頭が熱くなってしまった…。といいつつ個人的に好きなのは『ヒア・カムズ・ザ・サン』だったりするんだけど^^;←読後感的に。

幼いころの真也とおばあちゃんのやり取りや、カオルが子供の時、父親が見てる前でだけ思いっきりブランコを漕ぐことができるというやり取りはほっこり系で目頭が熱くなるパターンだけど、『ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel』の中で、上司の岩沼が言ったセリフ「親父に腹を立てるのは、自分の理想の親父であってくれないから。尊敬できる真っ当でカッコいい親父でいてくれないから。親は立派な人であるべきというのは子供の幻想だ」というセリフは重たくてぐっとくる。カオルのどうして自分だけが大人にならなきゃならないのかという呟きも。こういうどこか身近な感情に胸がつまる…。そして父親の言動が読んでいて辛くなる。

『ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel』は、後者は上演された舞台に着想を得て執筆されたものということなので、もともと違う方が書いた脚本があるってことだよね?それが成井豊さん?劇だけでなく映画にも出来そうな雰囲気がありました^^

このように登場人物名や大枠は共有しているけど、話そのものは全く別物の2作品を収録するのは面白いと思いますが、『ヒア・カムズ・ザ・サン』の内容が頭の中にあったので、『ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel』の内容に慣れるまでちと困惑しました~。

「殺し屋 最後の仕事」 ローレンス・ブロック 

『殺し屋 最後の仕事』  Hit and Run  

殺し屋 最後の仕事 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

 著者:ローレンス・ブロック(Lawrence Block)
 訳者:田口俊樹
 出版社:二見書房 二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション




<簡単なあらすじ>
アルという人物から仕事の依頼を受けアイオワ州に来て待機していたケラー。切手ディーラーの店にいた時、テレビの臨時ニュースでアイオワ州遊説中のオハイオ州知事が暗殺されたと知る。ケラーは自分の仕事を早く片付けたかったがアルの代理人からはまだ依頼がこない。そしてケラーの悪い予感は当たった。知事暗殺犯として指名手配され、ドットとも連絡が取れなくなった。逃亡生活を余儀なくされたケラー、アルの手から完全に窮地を脱するには自分を罠にはめた男たちに復讐するしかなかった。

<感想>
『殺し屋』『殺しのリスト』『殺しのパレード』に続く殺し屋ケラーシリーズ4作目であり、『殺しのパレード』のあとがきには『殺し屋 最後の仕事』が最終作だとか。著者とのQ&Aで、ローレンス・ブロックはちょっと曖昧な返事。うーん、どうなんでしょ?本当に終わりなら好きなシリーズだっただけに悲しいなぁ。

今回は、『殺しのパレード』の「ケラーのて適応能力」と「ケラーの遺産」に登場したアルからの再度の依頼。前も罠なんじゃないかと用心に用心を重ねたくさんの予防策を講じたのに、今回はまんまと罠にはまってしまうケラー。

表向きは殺しの依頼。だが実際は濡れ衣を着せるために殺し屋を雇うという…。もし警察に捕まったとしても殺し屋は何も言えない。殺人の依頼を受けてこの街にやってきただなんて言えないし、依頼者側の言うとおりの行動をしているからアリバイさえもない。なるほど~。殺し屋のこういう雇い方もあるのか!殺し屋として誰も殺してないのに、知らない誰かの殺人の罪を着せられちゃうなんて災難もいいとこ…。

罠にはめられたことから逃亡生活が始まるのですが、さほど物語が進展するわけでもなく、エキサイティングな事が起こるわけでもなく。ただただ逃亡中のケラーの日常を描いているだけだったりするのですが、なぜか読んでいて面白い。一歩間違えたら退屈になりそうな内容なのに、ローレンス・ブロックだから面白く読めてしまうという。罠にはまって大災難なのに淡々と、殺しをする時も淡々と、まさかドットが?!という展開も淡々と、ニューオーリンズで新たな生活も淡々としてるのに。なのになぜなんだろう?ローレンス・ブロックの手腕に尽きるなこりゃ。

ケラーといい、ドットといい、ジュリアといい会話がいい!めちゃ面白いことを言ってるわけではなく、洒落がきいててどこか知的でウィットに富んでるからかな。それと前作でも書いたかもしれませんが、ケラーの自問自答の言い回しが特に好き。

ケラーは今までニューヨークでの仕事は断ることをルールにしており、ニューヨークは彼の家であり仕事を終えて帰る場所(といっても何度か仕事してますが)。ケラーにとっては天国のように神聖で安全な場所。だけど今回のことでニューヨークは危険きわまりない場所になってしまう。それでも切手コレクションのために戻ったケラー。彼にとってドットと切手コレクションは特別なもの。その両方を失ったのに現実として受け止めているケラーはやっぱ一味違う。

過去のシリーズでドットと同居していたホワイト・ブレーンズの男(親爺さん)。あまり多く語られてなかったのですが、犯罪組織にいたことや、本名やあだ名(?)が今回明らかに。

このシリーズの魅力はやっぱりケラーのキャラ、そしてそのローレンス・ブロックによるケラーの描き方のような気がします。結構、昔の仕事内容を振り返ったりしてるので、過去のシリーズを読んでいた方がより楽しめそう。私も実は本作を読んだあと、過去のシリーズが気になり読み直しました。

解説を伊坂幸太郎さんが書いてるのが嬉しい。読んでいて「そうそう!そうなのよ!」とめちゃ納得。違う本でも伊坂さんは書かれてますが、伊坂さんはローレンス・ブロックがたいそう好きで大きな影響を受けていると。伊坂さんもローレンス・ブロックも好きなので嬉しい♪

本当にこれで最後なのかな?いつかどこかの短編集にその後のケラーを書いてくれないかなぁ。といいつつも、これが理想の終わり方なのかもしれないなとも思った1冊でした。

「殺しのパレード」 ローレンス・ブロック

『殺しのパレード』  HIT PARADE

殺しのパレード  (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

 著者:ローレンス・ブロック (Lawrence Block)
 訳者:田口俊樹
 出版社:二見書房 二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション




殺し屋ケラー・シリーズ第3作目で9作品からなる連作短編集。感想というより、どこへ行き、ターゲットは誰か、そして後にどんな内容だったか私が思い出せるようにストーリーの特徴だけを書いた覚書です。若干ネタバレあり


『ケラーの指名打者』
ターゲットはメジャーリーグの指名打者選手フロイド・ターンブル。通算400本塁打、3000本安打という大記録を目前に控えた選手。球場で隣合わせに座ったファンから有益な情報をもらい、なぜ雇われたかわかったケラー。チームと共に移動しているケラーはある不審な男に気付き、雇われたのは自分だけではないのではないかと思い始める。少し様子をみることにしたが、ひと月も家を開けたのにはある思惑があった。
作中に出てくるヤンキースの無愛想な日本人投手(名前はタグチ)のモデルは伊良部選手らしい。しかし3000本安打は凄い!野球が好きな人には面白く読めるかも。

『鼻差のケラー』
ベルモント競馬場、ターゲットはキシミーダッドリーという馬に勝った騎手。ダッドリーが勝てば待機料としてお金が入る。もし負ければケラーの出番となり待機料以上の報酬が入る。ケラーにはどうしても欲しい切手があり、出来ればダッドリーに負けて欲しいところ。しかしケラーはさほど結果は気にしてなかった。勝っても負けてもケラーには痛くも痒くもなかったから。八百長を扱った作品ですが、結果どうなったか真相はわからず。八百長の結果云々は関係なくケラーの切手愛がわかる作品。

『ケラーの適応能力』
9.11のあと、新たなセキュリティ対策が導入されてからケラーはまだ一度も飛行機に乗っていなかった。9.11の時ケラーはニューヨークの自宅におらず、マイアミでターゲット:オリバレスという男を始末する準備をしており、とある店内のテレビで知ったのだった。フェニックス、ターゲットはゲート付住宅コミュニティに住み毎日ゴルフをしているエグモント。始末する準備中に不動産仲介をしているミッツィと関係を持つ。ケラーと知り合う女性はどこか勘がいい。何気に言った言葉でも的をついている。一方、ドットから気味が悪い電話があったと告げられる。名前を聞くと「ただのアルだ」と言い、お金を先に送ってきて「依頼はいずれ話す。その時がきたら」と。このアルは『ケラーの遺産』と4作目でも登場。

『先を見越したケラー』
サンタバーバラで仕事を終え今度はデトロイトへ。迎えに来た車に乗り込むと、そこにはターゲットであるホーヴァートがいた。依頼人を消したので仕事はキャンセルと言われケラーはニューヨークに戻ることに。その帰りの機内で隣の席に座っていたニューヨーク在住のハレルスンが話しかけてきた。彼はビジネスパートナーのブライデンを殺したいと思っていた。自分たちの正体を知る人からの仕事は請け負わない、近場では仕事をしないように心掛けてきた2人だったが、ケラーは自分からハレルスンに仕事の話を持ち込んだ。ハレルスンは一度は承諾したものの、後になり手を引きたがった。問題大アリの依頼人に対し、ケラーはある行動に出る。『先を見越したケラー』だが、ケラー話を持ちかける相手を間違えた模様。もしケラーが自分で判断する前にドットに相談してたら、事はスムーズにいったという話。

『ケラー・ザ・ドッグ・キラー』
ニューヨーク、ターゲットは犬のフィラッフィ。依頼主は飼い犬をフィラッフィに殺された中流階級のイヴリンとマイラ。だが内密にマイラから別料金で夫の浮気相手イヴリンを殺して欲しいと依頼され、イヴリンからはマイラと浮気をしている夫を殺して欲しいと依頼される。ケラーが取った行動とは?そして犬好きのケラーはフィラッフィを引き取り、その後、自分しか出来ない行動に出る。一方、ドットがこの仕事を受けたことで最も心配していたのは、ニューヨーク一の殺し屋がはした金のために犬をも殺すという噂が立つこと。至って現実的なドット。

『ケラーのダブルドリブル』
インディアナ州、ターゲットは会計処理に関する不正行為について証言することになってるグロンダール。彼の留守中に家にこっそり忍ぶ込むと、そこに空港でケラーを迎えにきたジョン・ディアの帽子をかぶった男性ともう1人がやってくる。そこでケラーは彼らの計画を盗み聞き、直接ターゲットのグロンダールとコンタクトを取る行動に出る。その後、ドットは株で大儲け。ここからドットの株投資が始まる。
この章では迎え人ジョン・ディアの帽子をかぶった男性にもらったバスケットボールの試合を観に行き、ケラーは幼少時代のことを思い出す。バスケットボールに絡む母親とのエピソードあり。そのせいかどうもバスケットボールを好きになれないケラーであった。

『ケラーの平生の起き伏し』
サンフランシスコ、ターゲットは切手蒐集家のビンガム。依頼主はデトロイトのホーヴァート(『先を見越したケラー』でターゲットとして登場)。ケラーはもともとこの日にサンフランシスコにプライベートで行く予定にしていた。なぜなら切手展示会があるから。そこにビンガムも参加していたのだった。だが現場でケラーはあることでビンガムの目に止まってしまい、一緒に食事をする仲になってしまう。ケラーの心は揺れ動くが、命を狙われていると自覚しているビンガムを言葉巧みに利用することにした。

『ケラーの遺産』
ケラーはドットにある頼みをする。万が一、自分が殺されたら、あるいは連絡が取れなくなったら、彼のアパートに行き切手を持ち出して欲しい。自分が生きている可能性も考えて、切手はしばらくは手元に置き、その後はディーラーに電話をかけて欲しいと。どうやらビンガムが自分がいなくなった後、切手をある大学に寄贈するという話を聞いた影響。それを伝えた時にドットから仕事の依頼を聞かされる。『ケラーの適応能力』で前金を送ってきたアルからの依頼だった。バルバカーキ、ターゲットはヘグマン。

『ケラーとうさぎ』
仕事へ向かう途中、レンタカーのCDから「うさぎの冒険」の朗読が流れてきた。前に借りた人物が忘れていったものだった。このうさぎの話を聞いてると、ケラーは物語に引き込まれうさぎたちが心配になり無事を祈っていた。ターゲットの子持ちの女性を始末し車に戻ると中断しているところから始まった。いつの間にか女性のイメージは消え、またCDに引き込まれ可哀想なうさぎたちの心配をするのだった。ものすごい短編でありながら印象に残る物語。


ドットとの会話は相変わらず軽妙で良いですが、ドットがケラーの心の変化を代弁してくれたり、バックアップしてくれたりとなにかとケラーの支えになってます。

『先を見越したケラー』で、9.11きっかけにケラーに変化が。グラウンド・ゼロで救助活動している人たちに食事を配るボランティアをしたり、話を聞いてくれる相手が欲しくなったり、ぬいぐるみに話しかけたりと明らかに殺し屋らしくない行動。アメリカに住むケラーにとってもタワー崩壊は衝撃的な出来事。初めて殺しをした時にも触れられており、どうやって仕事に慣れていったかも描かれており思わず「もしやこれでケラーシリーズは終わり?」と思ったり。でも引退するにはお金が必要なのも事実。今章はケラーのメンタル面が出てる一編。※2009年に読んだアンソロジー『十の罪業 RED』(リンク)にも収録されており、そこで書いた感想と重複。

よっぽど引退資金が欲しいのか、本来は受けないニューヨークでの仕事が多かったり、『ケラー・ザ・ドッグ・キラー』ではド素人の依頼人女性に尾行されてても全く気付かなかったり。ケラーは精神面から引退を意識し始めている。あとがきにも『ケラーの適応能力』以降の作品から殺しの手筈が狂い、ケラーが自らの仕事を顧みる場面が増える。これまでの作品に比べるとケラーの心の揺れがはるかに大きくなっていると。あと訳者が著者にいくつか質問。ケラーは40代後半、もしかしたら次作でこのシリーズが終わるかもしれないとのこと。もし本当に次作で最後なら残念。

「殺しのリスト」 ローレンス・ブロック

『殺しのリスト』  HIT LIST

殺しのリスト (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

 著者:ローレンス・ブロック (Lawrence Block)
 訳者:田口俊樹
 出版社:二見書房 二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション




殺し屋ケラー・シリーズ第2作目で長編。感想というより、どこへ行き、ターゲットは誰か、そして後にどんな内容だったか私が思い出せるようにストーリーの特徴だけを書いた覚書です。若干ネタバレあり

<あらすじ>
仕事の依頼を受けて空港に降り立ったケラー。そこには迎えの男が待っており、ケラーにケンタッキー州ルイヴィルに住むターゲット:ハーシュホーンとその家族が写った写真、ガソリン満タンの車と銃を渡す。夜、ケラーの泊まっている部屋を誰かがノックするが部屋を間違えただけだった。さらにその部屋は真上の騒音でうるさく、ケラーは部屋を替えてもらう。仕事を終えて翌日帰ろうとしたところ、ケラーが最初に泊まっていた部屋でカップルが殺されていた。とりあえず無事に帰ってきたケラー。今度の依頼はニューヨーク、ターゲットは画家のニズワンダー。だがケラーはニズワンダーの絵が気に入ってしまい、挙げ句の果て…。
次はオハイオでターゲットはスティルマン。その後、画廊で知り合ったマギーの紹介で占星術師ルイーズの所に通うようになったケラー。そこでケラーの仕事の話になり…。今度の依頼はボストン、ターゲットはサーナー。仕事は順調に終えたが、カフェで傘と緑のコートを盗まれその後、そのコートを着た男性が死体なって発見される。イリノイ州、ターゲットはクリンガー。だがケラーが手を下す前に誰かの手によって先に始末されてしまう。アルバカーキ、ターゲットは連邦政府の保護下にいるペトロージャン。またもやケラー手を下す前に心臓発作で死亡。ドットとケラーはこれらのことから同業者ロジャーの仕業だと結論を出す。次の仕事ではケラーがまだ到着する前に自殺。セントルイス北部、ターゲットはマリー。仕事を終えたあと、依頼人がキャンセルしていたことを知る。次はボルティモア、ターゲットはマクナマラ。仕事をこなすそんな中、ケラーは陪審員に選ばれ…。その後、ドットとケラーは用心し続けていたが、2人は結束しロジャーをおびき出す作戦を考える。

<感想>
殺し屋ケラー・シリーズ第2作目。
"親爺さん"ことホワイト・プレーンズの男が亡くなってからも、ケラーとドットの仕事が大きく変わることなく、いつもと同じようにドットが電話で依頼を受け、報酬の額を決め、手筈を整え、利益を分配。ケラーは現地に出かけ、様子をさぐり仕事を果たして帰ってくる。

飛行機を降り立ち、判読不明の出迎えカードを持っている人物をケラーの迎えの人物と間違い近くまで寄ってしまったこと、本物の迎え人から渡されたターゲットの名前入り家族写真。この時点でケラーはこうした一切合切が気に入らなかった。さらにモーテルでは誰かが間違えてノック、騒音がやかましく部屋を替えてもらうと今度は最初の部屋で殺人事件。イヤな感じでいながらもケラーは次の仕事へ。

場所はニューヨーク。ケラーにとってニューヨークは住むところで帰る場所。仕事をする場所ではないと思っていたが、ドットから話を聞き依頼を受けることに。ターゲットは画家だったが、悪いことにケラーは彼が描く絵を気に入ってしまい、さらに依頼人までわかってしまう。ケラーの取った行動は殺し屋としてOKなのかどうかわからないけど、とりあえずケラーは自分のへまだと。そりゃそうだよ。ケラーの感情でこんな結果だなんて、殺し屋・依頼者の関係崩れまくり…^^;

今回、画廊でマギーという女性と知り合い時々会う関係に。ある日、彼女から「あなたは人殺しの親指をしている」と言われてから、ケラーはそのことを考え、次第にハーシュホーン始末の時にケラーが泊まった部屋、そのあとに入ったカップルが殺されたことまで思い出す始末。

なんだかんだとありながらも仕事はちゃんとしているケラー。だけどケラーと勘違いされた人物が殺されたり、依頼を受けたケラーが仕事をする前に誰かがターゲットを始末したりと奇妙なことが続く。ずっといやな気持ちが抜けきれないケラー。星術師ルイーズの所で思わず泣いてしまったケラー。思えば1作目の『ケラーの最後の逃げ場』で愛国心から素直に依頼を受けたり、今回も素直にルイーズのことを信じたりと、意外とケラーは人をすぐ信用するみたい。そしてケラーを現実に戻してくれたり助言をくれたり処理をしてくれるのがドット。

正直、同業者の話はさほど飛び抜けて面白いというわけではなかったですが、ケラーの素の部分が何度か見れたのは良かった。そしてあいかわらずのドットとの軽妙でウィットに富んだ会話が楽しめて良かった。

最後に仕事先でも切手ディーラーのところに行き熱心に切手選びをするケラー。引退後の暇つぶしの積もりが切手蒐集が本格的になってきてる模様。切手ディーラーを訪ねて話を聞き、雑誌も何冊か読み、立派な表紙のアルバムを買ったり、何人かの切手ディーラーとやりとりがあったり、展示会やオークションにまで出向くことも。こりゃ殺し屋を引退できないわけだ。

「殺し屋」 ローレンス・ブロック

『殺し屋』  HIT MAN

殺し屋 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

 著者:ローレンス・ブロック (Lawrence Block)
 訳者:田口俊樹
 出版社:二見書房 二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション




殺し屋ケラー・シリーズ第1作目で10作品からなる連作短編集。このシリーズ最新作『殺し屋 最後の仕事』を読み、過去のくだりが結構多く、もう一度このシリーズを最初から読んでみようかなと。ただの過去の回想なので覚えてなくても問題ないのですが、読んでいるのに思い出せない自分がもどかしくて再読。ローレンス・ブロックの著書は殆ど持っていると思っていたのですが、ケラーシリーズで持っているのは『殺し屋』と『殺し屋 最後の仕事』のみ。どうやら残りは図書館で借りた模様。。なので2作目と3作目は再び図書館で借りてきました。

※感想というより、どこへ行き、ターゲットは誰か、そして後にどんな内容だったか私が思い出せるようにストーリーの特徴だけを書いた覚書です。若干ネタバレあり


『名前はソルジャー』
ローズバーグ、ターゲットは証人保護プログラムにより全く別人として住んでいるイングルマン。彼らが印刷屋をしているということもあり、ケラーは何年も忘れていた昔飼っていた犬のソルジャーの名前で迷い犬のチラシを依頼する。驚くほど安くて美味しいメキシコ料理屋が近くにあり、そこのウェイトレスの生活背景を勝手に想像するケラー。この章からすでに「もしここに住むことになったら…」という空想は既に持っている模様。

『ケラー、馬に乗る』
マーティンゲイル、ターゲットは石油で一財産築き広大な牧場を持つクラウダー。仕事をする前に行ったラウンジである女性と関係を持つが、実はターゲットの娘だった。今回起きた出来事はすべて起こるべくして起きたこと。空港ではキャッチフレーズが気に入りウェスタンもののペーパーバックを購入。その内容と自分とを照らし合わせるケラーはどこか面白い。あと、ホテルの部屋は2階より上には取らないほうがいいと教えてくれたキューバ人の話あり。このくだりは違う話にもちょくちょく出てくる。

『ケラーの治療法』
ヘルス・クラブのインストラクター:ドナの紹介で、セントラルパーク・ウエストに住んでいる精神科医ブリーンの所に週2回通うケラー。夢の話や名前の話などを話す。そんな中、仕事のためトゥーソンに向かう。ターゲットはロリー・バスケス。仕事を終え再びブリーンの所へ行き両親や昔飼っていた犬ソルジャーの話をする。そんな中、また仕事のためフィラデルフィア(?)に向かいターゲットであるポルノショップを経営している男を始末。そして再びブリーンの所へ。するとブリーンがケラーの正体を知っているといい、別れた妻と犬の写真を見せた。
ケラーはマンハッタンのミッドタウンにある19階のアパートメント、寝室が一つの部屋で窓からは国連ビル、イースト・リヴァー、クウィーンズが見渡せる場所に住んでいる。のちに飼うことになるオーストラリアン・キャトル・ドッグのネルソンは、この精神科医の元夫婦が飼っていた犬。

『犬の散歩と鉢植えの世話、引き受けます』
「犬の散歩と鉢植えの世話、引き受けます」という張り紙を見たケラーは、仕事で家にいない時、アンドリアにネルソンの世話をしてもらうことに。そして仕事。オマハに飛んだケラーの今回のターゲットはテレマーケティング会社の重役ディンズモア。ステーキに塩を大量にかけて食べる男。既に地元の殺し屋が失敗しており、ディンズモアは対応策を講じ警備面を強化していた。この章では、ケラーはネルソンを話し相手として気に入っており、昔の秘密を明かしたり自分自身をさらけ出したり、仕事の話などをしている。

『ケラーのカルマ』
セントルイス、ターゲットはシェラトンホテル314号室に泊まっている組合の役員。とホワイト・プレーンズの男は言っていたが、ドットによるとホワイト・プレーンズの男のミスにより部屋番号違いだった。本当のターゲットはタルサに住んでいるガナー・ルースヴェンだった。一方、ネルソンの行動がきっかけで世話をしてくれているアンドリアと関係を持ってしまうケラー。彼女がケラーが何をしているか知ってると言うが、2人はそのまま一緒に住むことに。

『ケラー、光り輝く鎧を着る』
ホワイト・プレーンズの男からここ何ヵ月も仕事をもらっていないケラー。ドットによるとホワイト・プレーンズの男がいつもと違い、依頼の電話を全部断っているという。そこでドットは内密に『傭兵タイムズ』という雑誌に仕事を請け負う広告を出したという。一通まともな仕事の依頼がき、ケラーは引き受けることにする。依頼主はマスカティーンに住む児童書作家のクレシダ・ウォレスでターゲットはストーカーのラウドハイム。だが仕事が終わっても残金の入金はなかった。今回、ドットとケラーはケラーの家の近くのイタリア料理店で待ち合わせ。普段のハウスドレス姿ではなく、スーツに身を包み髪もセットしており、郊外の有閑マダムといった格好をしている。

『ケラーの選択』
シンシナティ北部、ターゲットは肥えた男ストラング。だが仕事をする前にドットに呼び戻されたケラー。もう一つ同じ場所で依頼が入ったという。別の仲介者からで最初の依頼者モンクリーフを始末してほしいという最初のターゲット:ストラングからの依頼だった。どっちを殺しても入る報酬は同じ。ケラーは一体どうするのか?
ホワイト・プレーンズの男の具合はどんどん悪化している模様。さらにいつの間にかアンドリアがネルソンを連れて出て行ってしまった。ケラーがシンシナティに滞在しているもっと前のことらしいが、いつシンシナティに行ったんだろう?違う短編集にシンシナティでの仕事があるのかな?

『ケラーの責任』
ダラス、ターゲットは豪勢な暮らしをしているギャリティ。彼が開いているパーティに下見がてらのぞく事したケラーだったが、偶然にも彼の孫がプールで溺れているのを助けてしまったことからターゲットと懇意になってしまう。依頼内容、彼の人柄からケラーは依頼者が誰かわかってしまう。いつもの仕事と違い、少し切なさが残るストーリー。ケラーがせめてものととった行動とは?

『ケラーの最後の逃げ場』
依頼人の指示どおり赤いカーネオションを襟につけ、雑誌を持ってユニオン駅に立つケラー。だが少し前に仕事はキャンセルされていた。翌週、国家安全研究所の職員を名乗るバスコウムがケラーに近づき、アメリカ政府は君を必要としている愛国心をつつき、売国奴を消すよう依頼してきた。ターゲットはワシントンの特許弁護士ラムズゲート、フロリダの老人が多くいるコンドミニアムに住んでいるドラッカー、コロラド州に住む女性。一方、本業でのターゲットであるシアトルに住むその土地の大物ウィルコックスも始末。のちにバスコウムの正体を知ったケラーは…。たいして疑うこともなく個人的に依頼を受けてしまったケラー(アメリカの兵士の気分で)。やはり祖国への愛が深いのか?

『ケラーの引退』
仕事も充分にやり、暮らしていけるだけの蓄えもある。引退を考えてるケラーにドットは夢中になれる趣味を持った方がいいと助言する。ケラーは子供の頃に集めていた切手のことを思い出し、再び切手蒐集を始める。今回の仕事はニュー・オリンズ、ターゲットは妻を少なくとも1人、あるいは2人殺しているウィックワイア。その後、ドットから本名を使って休暇を取るように言われ、ケラーはカンザス・シティに行く。その間にホワイトプレーンズの男が"自然死"で亡くなってしまう。ケラーは切手蒐集にハマってしまい、引退資金にも手を付けてしまった。とても引退できる立場ではなくなってしまった。


パターンとしては、ホワイト・ブレーンズの男から依頼があると、同居人のドットからケラーに連絡が入り、トーントン・プレース通りにあるの古いヴィクトリア朝風の建物に出向くケラー。そこでホワイト・ブレーンズから依頼を頼まれたり、ドットが作るアイス・ティーを飲みながら話をする。そして依頼を受けた地にレンターカー、もしくは飛行機を使って行き、その日のうちに仕事を終えすぐ戻ってくる場合もあれば、数週間滞在することもある。殺害方法も事故死、自然死、自殺、殺人と依頼者の要望に合わせ、それによって武器も様々。

殺し屋としての仕事はもちろんほぼ毎回あるのですが、気がつけばドットと話しているシーンに変わることがあったりして残虐なシーンは殆どなし。ケラー自身、ターゲットと親しくなったりすることがあったりするのですが、始末するのに躊躇することもあっても結果的に仕事をやり遂げるプロの殺し屋。状況が悪ければターゲット以外の人物も始末したり、依頼者自身も殺してしまったりと抜かりはなし。出張殺し屋みたいな感じですが、始末するシーンがないと、出張の多い男性の日常を描いた作品みたいな雰囲気。日常生活の描写が多いので、うっかり殺し屋というのを忘れてしまいそう。

ケラーの日常は犬の散歩をしたり<ニューヨーク・タイムズ>のクロスワード・パズルをしたり、いたって普通の生活。ニューヨーカーで今の暮らしが気に入っているが、仕事で旅に出るとその場所で郊外にあるこぎれいな家、過度な労力を求められない仕事、対処しやすい人生…という夢を描くことがある。なので、ターゲットが住む町や家を見てはいろいろと想像。ちなみに決して男前というワケではないものの、なんだかんだと女性にモテる。

ホワイト・ブレーンズの男のことはこの1作目ではどんな人物なのかよくわからず。とりあえず口数の少ない男で沈黙のエキスパートだということ。結局、最後には亡くなってしまうので詳細はわからず。でも4作目にちょろっと彼の事が書かれていたような…?

と、殺し屋としてエキサイトなシーンやドキドキするようなミステリー的なシーンは全くなく、実に淡々とした文章なんですが、それでもケラーの日常に惹きつけられてしまう今シリーズ。またドットとの会話がウィットに富んでいて楽しい。原語ではどんな文章なのかわかりませんが、個人的に自問自答する言い回しが結構好き。もちろん訳者が良いことも含めて。次は2作目『殺しのリスト』。長編なので楽しみ。

「クジラの彼」 有川浩

『クジラの彼』  

クジラの彼 (角川文庫)

 著者:有川浩
 出版社:角川書店 角川グループパブリッシング






・『クジラの彼』
・『ロールアウト』
・『国防レンアイ』
・『有能な彼女』
・『脱柵エレジー』
・『ファイターパイロットの君』
以上6編からなる短編集で制服ラブコメシリーズ第1弾。

『クジラの彼』
数合わせのために合コンに参加した聡子は、そこで潜水艦乗りの冬原と出会う。意気投合した2人はそのまま付き合うことになった。呼び方が"冬原くん"から"ハル"に変わった頃、順調にいっていた交際に変化が訪れる。冬原が出航日も期間も寄港予定も部外秘の長い航海に入り、いつ連絡がくるかわからない遠距離恋愛に。不安な日々を送る聡子は、職場で社長のボンクラ息子に気に入られ残業や夕食にしつこく付き合わされていた。自衛隊三部作の一つ『海の底』に登場した冬原の番外編。

冬原と聡子が付き合っている途中で、横須賀でのパニック的大事件が起こっているため『海の底』の事件時とほぼ同時進行の番外編。潜水艦をクジラに例え、「沈む」ではなく「潜る」と言った聡子のセンスが冬原にはかなりの殺し文句だった模様。が、めったに会えずメールですら2ヶ月ぶりな上そっけないない内容。こりゃ辛い。久しぶりに会うと思わず言ってはいけない(でも好きだから言ってしまう)言葉を発して後悔する聡子。待ってもらう立場の冬原は聡子のためにと思って発する言葉が聡子には痛い。でも冬原は聡子のことをよくわかっており信頼してるからこそ、彼女の前だけ弱い部分を見せるわけで。待ったり待たせたりする中で信じ続けるのはお互い信頼してないと難しい。聡子が一般の女性ということで、今作品の中で一番理解しやすく言動も普通で、お互いの絆が深まり良かったねーと素直に思えた内容でした。

『ロールアウト』
航空設計士の宮田絵里は、航空自衛隊から受注を受けた次世代輸送機について、要望をヒアリングしに小牧基地を訪れた。そこで案内役の高科三尉から男子トイレ内が通路と言われ、仕方なしに通る絵里。だがトイレにまつわる戦いはまだ序曲だった。高科三尉から「トイレをコンパートメント式にしてほしい」という要望を受けるが、各部との兼ね合いで難しかった。だが高科三尉から現実を見せられた絵里は、個室トイレの要望が通るように頑張るが、社内の風当たりが強くなっていくばかりでなく、高科三尉との仲を誤解され厳しい立場に。数日後、高科三尉はある行動に出る。

遠回りであってもちゃんとした通路があるのに、外部の女性に説明もなく男子トイレ内を通らすの?近道ならせめて最初に一言、説明をしてから通すのでは?とか、言いたいことはわかるけど高科のメーカー側の絵里への横柄な口の利き方はどうなの?(絵里の顧客に対する態度もしかり)とか、絵里の方も男子トイレを通るのも仕事と割り切りるとか、どうしても嫌だだったら1人でも遠回りの通路を使うって言えばいいのに、とか、いろいろ疑問に思うこともありましたが、実際に使う自衛隊員にとっていかにトイレが重要なのはわかりました。でもよ、でもよ?この展開で恋愛に発展するのは多少無理があるような…。最後のやり取りはクサすぎて苦笑しちゃった。

『国防レンアイ』
陸上自衛官の伸下は、同僚女性で腐れ縁の三池が失恋するたび一方的に呼び出され、毎回毎回飲みにつき合わされ愚痴を聞いていた。"ある事"が起こってから伸下は車で行き、お酒を一滴も飲まず足代わりにもなっていた。そういう関係だが、実は8年間、伸下は三池のことを想い続けていたのだった。ある日、2人で行ったレストランに三池の元彼と偶然鉢合わせ…

冒頭の1.5ページに書かれている女性陸上自衛官に対する伸下の考え、女性の私でも納得!そんな中、職場恋愛をし痛い目にあった三池は、新隊員女子にその教訓を兼ねて檄を飛ばしてる。しっかし8年間も隊内恋愛はしない!と頑なに言い切っている1人の女性を想い続けるって凄いなぁ。しかも今までの恋愛遍歴を事細かく知ってる相手を。恋多き三池だけどそれなりに悩みはあるみたいですが…。伸下のレストランでの男を感じさせる対応には私も惚れ惚れ。結果、行き着くまでの経過がどうであれ、恋愛下手と思われる2人の恋の結末は、やはり信頼感が大きくものを言うのかしらん。というよりこんな三池を受け入れる男性は伸下しかいない?!

『有能な彼女』
自衛隊三部作の一つ『海の底』に登場した夏木の番外編。『海の底』で最後に再会して以来、海上自衛隊の夏木は防衛省の技官となった望と付き合っており、上陸の際にはウィークリーマンションを借りて一緒に過すようになっていた。"30過ぎたらプロポーズするの気後れするよ"と10年来の付き合いがある冬原に言われており、まさしくその渦中にいた。結婚を考えてないわけではないが、彼女は若くて美人なだけでなく、技官としても優秀で夢も希望もある主流派として前途洋々。対し自分は隊内で問題児な上、潜水艦乗りで連絡が取れない事が多く、さらにいつも言葉で望を傷つけてばかりという引け目があった。

『海の底』で夏木は恋愛に不器用だはわかってましたが、こんなに自分に自信が持てない男性だっけ?航海に出る度に望みは自分を待っていてくれているかと不安になったり、自分と結婚するのは望みにとって重荷ではないのか、そもそも望は自分と結婚する意志があるのかと。それよりびっくりしたのが望の変貌ぶり!夏木としか本気で喧嘩できないとか、いくら泣かれるより怒ってた方がマシって言われたからって、同性の私から見てもかなりメンドクさい女性になってる…。夏木さん、いくら引け目があるからといっても少し甘やかしすぎなんじゃ^^;ってかこんな自分と付き合い続いているのはすべて望のお陰と夏木自身が思ってるんだからどうしようもない。恋愛が2人を変えたのか、もともとの性格が明るみに出ただけなのか?どっちにしろ、勝手にやってちょーだいって感じでした(笑)そういや本作の中で夏木と聡子が既に結婚しており、既に子供が2人もいる!夏木&望よりも、夏木&聡子の方が興味津々。

『脱柵エレジー』
自衛隊駐屯地や基地から隊員が脱走することを隊内用語で"脱柵"と呼ぶ。脱柵の理由として人間関係が巧くいかない、訓練についていけない、規則だらけの集団生活が嫌になった等々。そして多くはないが昔から色恋沙汰があった。ある日、彼女に会いに脱柵しようとしていた若い隊員がいたが、上司の発見により未遂に終わった。そんな若い隊員たちに清田二曹は自分の経験談を繰り返し話していた。

彼女に会いたいと言われ、見つかれば重大な処分が待っているのに脱柵する若い隊員たち。だが彼女はまだ若く自分の言った言葉に責任がない。で、結局は辛い結果が待っているという。そんな話かと思っていたら、最後にそこ?!しかもなんだろうこのキレイなまとめ方は…。男性30歳、女性25歳なのになんか落ち着いた恋だなぁ。同じような年頃の『有能な彼女』と比べて雲泥の差。といいつつ、この2人も1年後には『有能な彼女』と同じようになってたりして。

『ファイターパイロットの君』
「パパとママが初めてチューしたところはどこ?」と5歳の誕生日を迎える娘から聞かれた春名高巳は、妻でありファイターパイロットの光稀と初めてデートをした時のことを思い出す。自衛隊三部作の一つ『空の中』に登場した高巳と光稀の番外編。

家庭に入らずパイロットの仕事を続け、娘が生まれて半年で訓練に復帰したことが高巳の両親は納得いかない。そのことが光稀の耳に入らないようするが、やはり少なからず入ってしまう。そんな時、高巳は自分が至らないからだと悔しがる。妻の仕事を十分理解し、娘には母親がどんなに素晴らしい仕事をしているかちゃんと聞かせる高巳。なんて良い夫であり良い父親なんだろう。光稀の初デートもありえないほどのウブさで可愛いし、仕事も一生懸命で家族も大事にしてる。光稀の職業は特殊ですが、家庭を持ちながら働く女性の大変さや、義理の両親からのプレッシャーという面では一番現実に近い話かも。愛情が溢れていてこの短編集の中で一番好きな話でした。ドッグタグのくだりには笑ったw光稀さん可愛いすぎ。


カップルのうち片方だけが自衛隊だったり、両方ともが自衛隊だったりの6編。今回もラブ路線まっしぐらの作品でしたが、中にはこんな彼女イヤかも…と思ってしまった作品もちらほら。でも『有能な彼女』と『ファイターパイロットの君』は、未確認生物や巨大巨大エビが大量発生というトンデモない状況で知り合ったカップル。これを乗り切ったんだからある意味最強カップルなのかも^^裏表紙に「制服ラブコメシリーズ第1弾!」とあり、第2弾は『ラブコメ今昔』とあったので読まなきゃ!と思ったら3年前に既読でした^^;第3弾はあるのかなぁ?

「海の底」 有川浩

『海の底』

海の底 (角川文庫)  

 著者:有川浩
 出版社:角川書店 角川文庫





<簡単なあらすじ>
米軍横須賀基地でイベントが開催され、多くの観客が見物する中、ザリガニのようなエビのような巨大な赤い甲殻類が海から大量に発生し、陸を這って人々を襲い食べ始めた!海上自衛隊実習幹部の夏木と冬原は、数人の民間の子どもたちを保護するため潜水艦「きりしお」に逃げ込み孤立状態となった。一方、陸では事態は警察の対処能力を超えており、自衛隊に出動させるべきだと考えるが…。そうこうしているうちに米軍が横須賀爆撃の準備を始めていた。防衛には機動隊が任務に就いていたが、壮絶な戦いになっていた。巨大甲殻類を封じ込めることはできるのか?「きりしお」に取り残された者の運命は?

<感想>
『塩の街』、『空の中』と読んで、今回の 『海の底』で自衛隊三部作をやっと読了!三部作を通して大まかな筋書きは似てます。今回は巨大な甲殻類が人類を襲うという…。これだけを聞くと笑っちゃいそうですが、突然、目の前でこのような光景に出くわしたら大パニックにもなるよ。現場からの避難者は大混乱で、そこはまるで血の海。最初は昔のアメリカのパニック映画のようなだなと思いました。

自衛隊の災害派遣に基づいて、陸海空の救難隊や輸送隊はすぐ出動したものの、武器使用が一切認められてないので防衛線の守備は県警の機動隊。しかし機動隊だけでは太刀打ちできない。米軍の襲撃を承認するか、自衛隊を出すか。自衛隊の軍事出動を決定させるためには官邸に警察の敗北を見せないといけない現実。なんてこった。

海上自衛隊の潜水艦「きりしお」には13名の子どもと海上自衛官2人。食糧や水などの備蓄があるためある程度の期間は安全に過せる。が、問題は縄張り問題で停泊場所が米軍施設内にあるということ。自衛隊の災害救助だけではどうすることもできない。

読んでいて政府の対応の遅さにイライラしぱなっし。なんか日本の現実を叩きつけられているような感じ。現実にこういうことが起こったら(いや、巨大生物が現れ人物を食べまくるって現実はないけど^^;多分…)、民間人にはわからないところでこういう堂々巡りが行われるのかと思うと怖いです。

全体的に2つのストーリーが軸になっており、一つは停泊中の潜水艦「きりしお」に閉じ込められた15人のストーリー。子供たちの間での対立、さらに個々の子どもの問題、家庭事情等々を入れながらの展開。もう一つは陸側で県警の明石、警察庁の烏丸の2人が主役。こちらではいかに自衛隊の軍事出動させるかという駆け引きが行われてます。

最初は最初は巨大エビが大量発生し、人間を食べていくというトンデモナイ設定だ!と思ってましたが、内容は結構奥深く、陸側の自動隊を出すまでの展開は現実味があって興味深かったです。そしてラスト、そうだよね、有川さんのことだからやっぱこうこなくっちゃね(^m^) この内容にはこのぐらいのちょい甘がちょうどいい感じ♪

巻末の解説に、本書の登場人物たちのその後は『クジラの彼』に収録されてるとか。さらに『空の中』の主役2人も登場する話も。今年1月に図書館で既に予約済みなのであとは手元のくるのを待つばかり☆

「空の中」 有川浩

『空の中』

空の中 (角川文庫)  

 著者:有川浩
 出版社:角川書店 角川文庫





<簡単なあらすじ>
200X年、日本初の超音速ジェット「スワローテイル」が四国沖で試験飛行中に高度2万mで爆発炎上した。数日後、航空自衛隊の二機が同空域で演習飛行中、一機が同じように高度2万mで爆発炎上し、乗っていた編隊長の斉木が殉職する。その頃、斉木の息子である瞬は高知での浜で半透明の奇妙な生物と出会いフェイクと名づける。その後、父の残した携帯を介しフェイクは言葉を放つようになり瞬は可愛がるようになる。一方、相次いだ事故によりメーカー担当者で事故調査委員でもある春名高巳は、斉木と一緒に飛行し事故の目撃者でもある武田光稀三尉を訪れる。調査のために事故のあった同空域を飛ぶことになった2人、空の中に何かがいる…そこで見たものは…。

<感想>
自衛隊三部作の一つで"空"編。図書館で予約してから4ヵ月目でやっと手元にきました。"海"編も同時に予約したんだけどこちらはまだみたい。。ってか最新本じゃないのに有川さんの本は予約してもなかなか手元にこないよ(><。)。。相変わらずすごい人気だなぁ。"陸"編を読んで約8ヵ月、こちらの内容は少ししか覚えてませんが、非現実的な内容だったのできっと『空の中』もそういう雰囲気なのかなと思ってましたが、まさかのまさか、ここまで突拍子もない話とは!というのが読んでいた真っ先に思った率直な感想。

超音速ジェット機や航空自衛隊の話で始まるのですが、それらの知識がなくても有川さんに珍しく(?)ショッキングな内容で冒頭からドキドキ。この2つの事故関連による主人公が、斉木と一緒に演習飛行しておりとっさの判断で生還した武田光稀。そして彼女に事故の詳細を聞きにきた事故調査委員の春名高巳。なんだろ、この絵に描いたようなツンデレ女性の光稀と、軽そうに見えて実は重要な要となる高巳(さらに心が広く、光稀のことを包み込むような優しさ!)。これぞ有川さん!という主人公たち。しかもこの2人の性格、有川さんの他の著書でもいそうw

そして高知で生活している斉木の息子である高校生の瞬と幼馴染の佳江。瞬の方は言動がイマイチ理解しづらくてよくわからないものの、佳江の方は好きな言葉を3つ上げされたら「ネッシー」「クッシー」「シーサーペント」ってwこの2人がもう一組の主人公たち。瞬の父親が泣くなったのと同時に出会った奇妙な生物フェイク。父親の携帯を介して言葉を放ち、いつしか瞬はフェイクを家族のように可愛がるようになるのですが、これが後にとんでもない方向へ。隣に住んでいる幼馴染みの佳江はその可愛がる様は瞬にとって間違っている、関係を大きく踏み外していると思いつつも、父親を亡くし家族がいなくなった瞬に対し面と向かって言えず、遠まわしなことしか言うことができずただただ見守るだけ。

簡単にいうならUMA(未確認生物)と人間が出会う話。高巳と光稀が出会ったUMAは「白鯨(ディック)」。高度な知能を持っているとはいえ、人間とは考えが全く異なるため、どのようにコミュニケーションを取ればいいのか、共存していくことはできるのか。が、UMAによって家族を奪われた子供たちもおり、間違った方向であっても、それぞれの心情はそれぞれの個々にしかわからない。

「白鯨」の出現は人間の心情を動かすものだけでなく、現実問題として世界からみれば脅威の存在。が、解離性同一性障害とか治療とか、白鯨の存在意義、誕生のくだりが少々難しすぎてイマイチ把握出来てなかったり^^;ライトノベルと言えども、流し読みじゃなく真剣に読むんだった…。

読み終えて、よくこんな奇想天外な内容を考えつくもんだと感心しちゃう。想像力がすごい。ジャンルでいうとSFになるのかな?同時に子供たちの成長物語でもあり、ラブコメでもあり、家族愛も描いてます。そしてフェイクの純粋さに心奪われ、宮じいの言葉に納得。巻末にその後の瞬と光稀と宮じいのその後が収録されているのですが…最後の最後にやられた。ティッシュティッシュ!
『空の中』ってデビューして2作品目?すでにのちのキャラ設定の基盤となるような主人公たちでした^^

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