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「ガンコロリン」 海堂尊

『ガンコロリン』


ガンコロリン

 著者:海堂尊
 出版社:新潮社




・『健康増進モデル事業』
・『緑剥樹の下で』
・『ガンコロリン』
・『被災地の空へ』
・『ランクA病院の愉悦』

以上、5編からなる短編集。

『健康増進モデル事業』
ひとり暮らしのサラリーマン、木佐誠一のもとに厚生労働省医療健康推進室から封書が届き、厚生労働省第三種特別企画・健康優良成人策定委員会のモデルに選ばれたと書かれていた。日本国民から無作為に三名選ばれ、半年間、健康を追求し、健康の大切さや素晴らしさを理解するために立案されたという。毎日上司に小言を言われ身体が不安になった木佐は、いかがわしいと思いながらも手紙に書かれていた電話番号に掛ける。担当者である久光に会い、いつの間にか契約締結が完了してしまった。翌日からアシスタントもつけられ人間ドッグを受け、日本一の健康マンになるためのプロジェクトが開始された。人工的な治療は一切許されてないため、不健康の原因を除去していくためアシスタントは木佐のストレス源を次々と除去していった。そのお蔭で健康になるだけでなく、仕事もとんとん拍子で出世し私生活も充実した毎日となった。だがプロジェクト最終審査で三人のモデル中最下位になってしまいアシスタントが外されてしまった。そしてまた木佐の周辺環境はがらりと変わってしまった。

待ち合わせた最上階のレストラン『星・空・夜』ってあのシリーズのレストランだよね?しかもここにいた独り言を大声で言う小太りの男性ってあの方だよね??どうやら室長であるあのお方がこのプロジェクトを企画したみたいだけど、面白いこと考えるなー。このプロジェクトに関わった久光やアシスタントも十分に面白い(久光さんは違う本でも出てきたような気がする)。このアシスタント、業務を完遂するため名前と過去の経歴を一切合切捨ててるので、呼び名は木佐が"アニキ三号"と付けてしまう。アニキって…元阪神の金本選手のファン?んなわけないか。

このプロジェクトいろんな意味で凄い。最初は楽しそうな企画かと思ったけど(やはり歩くことは健康にいいことなのだ)、一人の人間を健康優良にするため周囲がどんどん粛清されていくのはちょっと怖い。木佐が最下位なら他の二人のアシスタントは一体どんなことをやってのけたんだろう?なにより一番怖いのは、次年度のモデルには税務署と国会議員が選ばれてるということ。そこにアシスタントが張り付いたら…結末がおそろしすぎ。風刺ききすぎ。くわばらくわはら。

『緑剥樹の下で』
南アフリカのノルガ王国ステラ・キャメル、ベルデグリの木の下で少年トンバはセイと呼ぶ男に勉強を教わっていた。この木の下で教えることには意味があった。長老が呪いの木だから近寄るなと恐怖ばかりをあおっている。非科学的で間違った考えに異議を唱えるためにわざとこの木の下で教えてるのだった。ある日、トンバの幼い妹のシシィが病気になった。長老はの木に近づいたことで祟ったというがセイはマラリアだと診断するも、二日後に少女は旅立った。セイは祟りの謎の真相を突き止め、長老のところにいた陛下にも伝え、その日を境に祟りは潰滅した。病気の息子アバピを診てもらうため陛下はセイに参内の要請をする。高度な手術が必要だったため、政府軍とゲリラの戦闘と最中、セイが国境なき医師団の宿営地まで少年を送り届けることになる。だがその後セイは危険で無法地帯となっているステラ・キャメルに戻っていった。

情勢がすこぶる悪い南アフリカのノルガ王国で、治療をしながら少年たちに勉強を教えている日本人医師の話。少年がこの男性のことをセイと呼んでいたので私は途中までノルガ王国のセイという名前の男性だと勘違い。ベルデグリの木のことを、シラカバという故郷の白い木を思い出すと言ってる時点で日本人と気付くはずなのにそれさえも気づかず…。さらにさらに、陛下がセイのことを"トカイ"と呼んでたけど、私にはセイはあだ名でトカイというのがこのノルガ王国の男性の正式名なんだと解釈。で、陛下の息子の病気について話すシーンでバチスタ手術という言葉が出てきてやっと気が付いた。

トカイ……と、渡海っ?!セイって?渡海征司郎だ!そういえば『モルフェウスの領域』での感想で、「涼子が中学生の頃、アフリカの領事館で知り合った医務官ってあの人?まさかここで登場するとは思わなかったのでちょっと嬉しい♪」って私書いてる!そうそう、渡海先生のことだと思った記憶が!そうだった、アフリカにいたんだった。医務官だったのにどんな経緯でこの町に……。あまりハッピーな終わり方ではないのでその後の渡海先生が心配。

で、バチスタ手術が必要な陛下の息子アガビ7歳は……、wikiで『チーム・バチスタの栄光』の登場人物欄に「アガピ・アルノイド:南アフリカ、ノルガ共和国の反米ゲリラ少年兵。7歳。アメリカで受け入れ拒否されたため東城大学医学部付属病院でバチスタ手術を受けることになる。」と書かれてる!反米ゲリラ少年兵になってるけど、名前も年も国名も一緒。同一人物かな?

『ガンコロリン』
サンザシ薬品の創薬開発部の木下部長は、営業上がりのため新薬を作り出す研究部門で悩んでいた。なのでこっそり方針転換し新薬をここで開発するのではなく、新薬を開発している大学の研究室とタイアップすることにした。一年が過ぎ、極北大から画期的な薬を開発したと報告があった。早速北海道にある極北大薬学部倉田研に行くと、開発した倉田教授、助教の吉田が新薬について説明する。一言でいうと「飲むだけで癌を抑制できる夢の予防薬」でノーベル賞級以上の開発だった。倉田教授によってガンコロリンという名を付けられた新薬はあれよあれよと異例の早さでIMDA(国際薬事審議会)の薬事申請も通り認可される。日本医師会は懸念を表明するも、ガンコロリン発売後は癌が治る成果を出した。それによって癌治療の外科手術が激減し、外科医の腕は落ちてしまい消化器外科も消滅してしまった。このため外科医は絶滅危惧種と言われたが、癌が撲滅されたためそんな状態も容認されてしまう。ガンコロリンが発売されて二十年、ついにガンコロリンが効かない新たな新型悪性生物の癌が出現。外科手術を必要とする患者は増える一方。だが外科医は絶滅寸前状態で手術できる外科医はいなくなってた。

怖い。物語だとわかっていても現実味があって怖い。新薬を必要とする人から見ると、癌が治る夢のような予防薬が開発されたとなると一刻も早く認可されて欲しいと願うもの。一方で、それによって副作用しかり、何かしらのデメリットもあるわけで、この話はものすごく皮肉な結末になってる。まさかこういう結果になろうとは(><)。地球の免疫機構の戦略は人間より優秀すぎる。新型悪性癌→新薬開発→新型→新薬→新型……と永遠に続くんだろうな。

IMDAに取材に来ていたのは別宮葉子。そう、『螺鈿迷宮』『死因不明社会 : Aiが拓く新しい医療』『医療防衛 -なぜ日本医師会は闘うのか-』で登場した女性。取材で凍眠しているスリーパーの話をしているけど、スリーパーってもしかして『モルフェウスの領域』と何か繋がりある?『ナニワ・モンスター』でもサンザシ薬品が出てくるとか出てこないとか?ガスコロリン対策委員会の菊間は浪速で診療所をやってる開業医って書かれているので、『ナニワ・モンスター』に登場した菊間徳衛かと思われる。ちなみにサンザシの木下部長は調べてみると『ブラックペアン1988』にも登場してるらしい。

『被災地の空へ』
東北地方で大地震が発生。極北救命救急センターにDMAT(緊急災害派遣隊)が招集され、センター長代理の速水晃一は総勢5名で現地に向かう。満島を筆頭に蝦夷大、みちのく大救急、陸奥総合病院、出羽医療センター、浪速市、高尾総合病院のDAMATが揃い受け入れ準備をしていたが、やってくる怪我人は軽傷者ばかりで、津波で溺死した遺体の方がはるかに多かった。速水は死体検案書を書くことになったが、不満げな速水に対し総指揮の岸村が退屈そうな顔で仕事するのは仏さんに失礼だと注意する。また、極北救急で透析患者を引き取ってもらう際に速水に輸送機で患者を搬送してほしいと言う。速水はこの申し出にうなずく。

重傷者を治療することももちろん大事だが、岸本は救急医として命を引き戻すのも、医者として死者を看取るのもコインの裏表。片方だけできるやつはいないと言う。また、極北に搬送する患者と一緒に戻したのも医者として大切なことを教えてくれ、速水先生の成長を考えてくれてのこと。こうやって耳を傾けることが出来る速水先生は医者としてさらなる飛躍をしていくんだろうな。

速水先生はもちろんあの速水先生。看護師長の五條郁美は『極北ラプソディ』にも登場。五條と久しぶりに会った浪速ヘリのパイロットは極北救命のドクターヘリパイロットってことで大槻さん?二人が話す気の利く元極北救命センターCSは越川CS?『極北ラプソディ』の登場人物が多いので、この話は『極北ラプソディ』のその後って感じ?

『ランクA病院の愉悦』
売れない作家の終田千粒(ついたせんりゅう)はツイッターでウケ狙いでこんなペンネームにしたが、見事スベってしまい「おわりだ」と読まれる悲しい結末になっていた。片頭痛が悩みの終田はランクC病院に行くことにする。ランク付け病院というのは……たまたま世の流れで大勝した阿房政権が勘違いして浮かれまくり、TPPによって医療格差が出現。公立病院は一回の支払いが十万以上のランクA、一万以上十万未満のランクB、一万円未満で済むランクCに格付け。という訳で終田はランクC病院で直接先生の診察はない機械によるATMのような人工知能を掲載した自動診断ロボットのトロイカ君に診察してもらい薬を処方してもらう。そんな時、編集者Pが仕事を持ってきた。内容は雑誌「週刊来世」からの依頼でランクA病院とランクC病院を受診し、比較検討し満足度を個人的判断で決めるというものだった。早速依頼人RとランクC病院に行き、その後にランクA病院に行って診断をする。そして終田はあることに気付く。

阿房政権がTPPも参加って……。微妙に名前は違えど現実味ありありだぞ?で、物語ではTPPに参加した途端に自由診療移行にあたり前払いがクレジットカード決済に。支払できなければ受診できないという当たり前のようで一部の人には厳しい結果に。しかも日本医師会によるとランクC病院は診断ではなく星占いレベルと平然と言ってのける。診断を受けたいならランクB以上の病院に行けと。でも結局はどのランクに行っても結果は一緒。こんな医療制度イヤだ(><)。

自動診断ロボットのトロイカ君での診察は、画面上であてはまる項目を選ぶ。「イエス」「ノー」「?(よくわからない)」。「?(よくわからない)」を選ぶと東城大学医学部・不定愁訴外来の紹介状のプリントが出てくる。一応ここに取材依頼するも取材拒否。紹介状持ってるなら受診して欲しかったな~。もしかしたらあの先生が診察してくれたかも(^m^)

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「世界から猫が消えたなら」 川村元気

『世界から猫が消えたなら』

世界から猫が消えたなら

 著者:川村元気
 出版社:マガジンハウス





<簡単なあらすじ>
僕は生きるために、消すことを決めた。今日もし突然、チョコレートが消えたなら 電話が消えたなら 映画が消えたなら 時計が消えたなら 猫が消えたら そして 僕が消えたなら。世界はどう変化し、人は何を得て、何を失うのか。30歳郵便配達員。余命あとわずか。陽気な悪魔が僕の周りにあるものと引き換えに1日の命を与える。僕と猫と陽気な悪魔の摩訶不思議な7日間がはじまった―――
(マガジンハウスHPより引用)

<感想>
郵便配達の仕事をしている30歳の平凡な男性。風邪をこぜらし病院に行くと、風邪ではなく余命は長くて半年、1週間後すら怪しい状態と医者に告げられた。病院から帰った夜、部屋にやたらと明るい"もう1人の自分"がいた。本人いわく「悪魔」だそうで、いつ死ぬか知らせにきた。だが生きられる方法が一つあるという。この世界からひとつだけ何かを消す。その代わり1日寿命が延びると。単純計算すると、265個の何かを消すと1年寿命が延びる。何を消すかは悪魔が決める。ただオプションとして最後に1回だけ消すものを使ってもよい。

とこんな感じのストーリー。
毎回、悪魔から何を消すが告げられる主人公。平凡に暮らしてきたが、死を身近に感じるようになり、あまり深く考えてなかったことを今一度考える。母親のこと、父親のこと、元カノのこと、中学からの親友。大人になって得たものと失ったもの。もう二度と取り戻せない感動や感情。それを思うと無性に悲しくなり涙する主人公。そして世界から猫がもし消えたら……主人公は決断をする。何かを得るためには何かを失なわければならない。死にたくない。死ぬのは怖い。でも何かを奪って生きていくのはもっと辛いと。全ての人間にとって寿命は未知。

決定的だったのは猫の存在。悪魔が気を利かせて猫に魔法をかけ、ある日突然猫が喋るように。時代劇風の語り口だけど、猫目線の疑問が主人公の心に響いたことの一つになってるような気がする。どうして物に名前をつけるの?区別する必要があるの?猫には時間の割り当ても物に対しての名前の区別もなく、自然現象を中心に行動しているだけ。そもそも死の概念があるのは人間だけ。あとはやはり両親のことを考えることにより、大切なもの、この世界に生きている素晴らしさに気付いたこと。それがわかったことで主人公は最後の日を安息日と表現したんだろうか?

個人的に印象的だったのは、悪魔の姿の説明。悪魔という存在は、人間の各々の心の中にあるだけ。その心の中の悪魔という存在にいろいろな像を勝手に描いているだけ。生きていく中で、無数にある小さな後悔、あーしたかった、こうしたかったという後悔。実際しなかった姿が自分の姿で、もしいろいろとしたかったことをやり遂げてる理想の姿が悪魔的な姿だと。なりたいけど、なれない自分。自分に一番近くて遠い存在だと。文中に出てくる悪魔によると、人間というのは、選んだ人生から選ばなかった方の人生を眺めて、羨ましがったり後悔したりする生き物だと。最初はチャラい悪魔だなーと思っていたけど、最後の会話は、なるほど!と思ったり。

最後は主人公が大事なことに気付いたから、悪魔からのご褒美としてどんでん返しがあったりして?!と思ったりもしたんですが、やはりどんでん返しはないのね…。全体的にテンポがよく読みやすいですが、やはり死という重いテーマを扱ってるので私は構えて読んじゃいました。構えすぎちゃうと心に残るものがあまりないかも^^;読後にどんより感がなかったのは救い。

内容が1週間という設定なので、これはもしかしてテレビドラマを想定しているんでしょうか?小説という形で読むより、ドラマ化、あるいは映画化されたらもっともっと感動し面白くなりそうな、そんな1冊でした^^

「往復書簡」 湊かなえ

『往復書簡』

往復書簡 (幻冬<br /><br />舎文庫)

 著者:湊かなえ
 出版社:幻冬舎文庫





・『十年後の卒業文集』
・『二十年後の宿題』
・『十五年後の補習』
・『一年後の連絡網』
・『一年後の連絡網』
以上からなる短編集

『十年後の卒業文集』
高校を卒業して10年後、放送部だった2人の結婚式に仲間だった同級生が集まる。だがそこには新郎の浩一と当時付き合っていたちーちゃん(千秋)の姿はなかった。しかも噂では現在行方不明だという。海外で生活しており久しぶりに皆と再会した悦ちゃん(悦子)は、一体何があったのか真相を知るため同級生のアズ(あずみ)と新婦の静ちゃん(静香)に手紙を書くことにした。

こんなことってあるんだろうか。いくら10年ぶりといっても…ねぇ?それはさておき、書簡の中で高校時代のことを振り返る悦ちゃんとアズ。詳細なことまでよく覚えてるなー。私なんて10年前のことなんて何一つ覚えてないよ~。そこまで昔のこと、ちーちゃんのことを掘り下げる必要があったのかな。結婚した仲間を素直に祝福してあげるだけじゃダメだったの?ここまでして真相をする必要があったの?と思ってしまう。メールだと、すぐ書き直せたり削除できるので、言葉を選んで書くことができる。だけど手紙は、ふと話が逸れてしまった時、別に書かなくていいことまで書いてしまう。なので手紙の方が、書き手の正直な気持ちが見え隠れしてるような気がする。それを上手に使って女性の心理(思い込みや想像)を描いているのが湊かなえさんならではと思った作品でした。もし数年後に同窓会を開くことになり、正真正銘全員出席し顔を合わせた時のことを考えると…これが一番怖いかも。

『二十年後の宿題』
教師をしている大場は、卒業してからずっと年賀状のやりとりがある小学校時代の恩師である竹沢先生から、ある依頼の手紙が届く。退職を機に、ある6人の生徒たちの今の様子が気なるが、自分は入院していて調べることが出来ない。なので代わりにこの6人の今の様子、また、みな幸せな生活を送っているか会って確認して欲しいと。大場は早速1人ずつ会いに行くが、同時に当時起こったある事故に関わりがあることも知り、それぞれから当時の記憶、また現在思うことを聞き、その都度恩師に話したことを手紙で報告。だが6人目にはなかなか会えずにいたが……。

当時小学校4年生だった6人。担任だった竹沢先生夫婦と6人が図工に使う落ち葉を拾いに行った時に起こった不幸な事故が基盤に。この事故に遭遇した6人がその後どのように過ごし、現在はどのような人生を送っているのか。次第に明らかになっていく生徒たちのそれぞれの立場や視点からの事故の詳細、そして今はどう思っているのか。なんて言ったらいいんだろう、最初は軽く、徐々に重くって感じ?入院してても先生自身が手紙を書けばいいはず、あるいは気になってるなら退職前でもよかったはず…という疑問がラストで払拭。生徒想いの先生ではあるけれど、この方法で本当に良かったのかな。生徒の中には思い出したくない人もいるだろう。先生に今の気持ちを伝えられて良かったと思う人もいるだろう。でも方法はどうであれ、先生自身も6人の現在、そして当時のことをどう思っているのか気になってたのは確か。結果オーライで良かった~と思ってましたが、よくみると最後の手紙には差出人の名前がない、ないよ~!!どういうこと?最後から2つ目の手紙を読む限りハッピーエンドだと思ってたんですが違うの?!って思っていたら最後に収録されている『一年後の連絡網』になにやらその後が少し描かれてた!でも彼女の相手が誰であれ、ある意味ハッピーエンドに変わりはないか。最後に、蕗味噌入り焼きおにぎり、エビと白身魚のすり身入り卵焼きが食べたい~。

P.S 映画『北のカナリアたち』の原案が読みたかったのが本書を借りた理由。といいつつ映画は観てませんが^^;映画のHPのあらすじや予告編を観る限り内容がちょっと違う模様??どうなんだろう。気になるのでいつかDVD借りて観るぞー!

『十五年後の補習』『一年後の連絡網』
国際ボランティア隊としてP国へ2年間赴任することが決まった純一。学生時代から付き合っている万里子は、純一が30歳を目前に国際ボランティアに参加しようと決断したのは、15年前の"出来事"が影響しているのではないかと思い手紙を書く。徐々に明らかになっていく当時の"出来事"。果たして真相とは…

遠く離れた国へ国際ボランティア隊として2年間行ってしまった彼氏と、日本にいる彼女とのラブラブな往復書簡だと思っていたら、15年前の"出来事"が徐々に明かされていき、決して思い出してはいけない何かが見えてき、どういう結末を迎えるのかハラハラしながら読みました。ラストの手紙のその後はどうなったの?もしかして警察が来たの??なんて思っていたら『一年後の連絡網』を読んで、私の想像が全く見当違いだったことは判明^^;そっかー、そういうことか。2年間会えず、手紙を受け取るのに20日もかかる遠く離れた国に相手がいるからこそ、手紙という手段が一番活かされていた作品でした。余談:5×0=0 どんな数字でも0をかけると応えは0。この例えが内容とどうリンクしているのかイマイチ理解出来てないデス^^;

『一年後の連絡網』は、国際ボランティアとしてT国とP国に赴任している隊員同士の書簡。『二十年後の宿題』、『十五年後の補習』の後日談らしきものが。通信手段が手紙だけという国へ国際ボランティアとしてる者にとって、手紙は大きな活動源になるという。これはすごく説得力あるかも。
巻末の「文庫化によせて」では、映画『北のカナリアたち』主演の吉永小百合さんへのインタビューが記載。吉永さんがおっしゃるように、この本に収録されてるのは「あなたならどうする?」「あなたなら、過去を乗り越えて、どういう生き方をしますか?」と問いかけがされているような気がします。

手紙は後々まで残せるもの。もちろんメールだって残せるしプリントアウトして手元に置くことも出来る。でもメールと違い手紙は手書きで、あとで読んだ時に当時の想いが垣間見れて味わいがあるような気がする。特に本作のように、昔のある出来事について、現在の時間から告白する形だと、相手からの返信を待ってる時間がとてつもなく待ち遠しい。手紙だから聞いたり言えることもある。どの作品も現実的には不自然すぎる気もするけど、それでも面白く読めたのはやっぱり湊かなえさんだからかなと思った1冊でした^^

「ケルベロスの肖像」 海堂尊

『ケルベロスの肖像』  

ケルベロスの肖像

 著者:海堂尊
 出版社:宝島社





<簡単なあらすじ>
東城大学医学部付属病院に、「八の月、東城大とケルベロスの塔を破壊する」という脅迫状が届く。田口は姫宮からの依頼で、この一件を解明するため碧翠院桜宮病院の炎上事件の重大な疑問を解き真相を明らかにしてほしいと頼まれる。病院長からはAiセンター創設委員会の再起動、Aiセンターのこけら落としを記念して開催されるシンポジウム実行委員会の委員長を引き受けて欲しいと頼まれる。そん中、日本でノーベル賞に現在一番近いと言われているマサチューセッツ医科大学上席教授の東堂文昭がやってくる。そして世界に3台しかない9テスラのマンモスMRIリヴァイアサンまでもを持ってくる。やがてAiセンター設立の日を迎えるが……。バチスタシリーズ6作目で最終作。

<感想>
いつものように高階病院長からお願いされる田口先生。依頼内容を聞かされると承諾してしまう経験から、今回は話を聞く前に断ることに。が、高階病院長の巧みなテクニック話術でいつのまにか田口先生が懇願して依頼を受ける形になっちゃってる(笑)
田口先生が語る姫宮は長い髪に長い手足。スタイル抜群、まるでスケートのフィギュア選手かバレリーナみたいだと。第一印象を集約すると「でかい女性」とのこと。今までもでかい女性とは言われてきてるけど、スケートのフィギュア選手かバレリーナみたいという表現は初めてでは?私の中での印象はてっきりボンキューボンって感じのボリュームある体系だと思ってた^^;

その姫宮から、二年前に起こった碧翠院桜宮病院の一家四人が焼死した事件について。五人家族だったのに(一番上の葵はエンバーミングされて遺体安置)遺体は4体しかなかった。一卵性双生児の小百合かすみれのどちらかが生きている。だがそれは問題ではなく、生き残ったどちらかを確定しておかなければならない。なぜなら桜宮一族は東城大学に恨みを抱いていて、東洋大破壊工作をしかけてくるはず。姉妹は攻撃手法が違うので相手を特定し、そのタイプに合わせて防御策を練らなければならない。そこで田口先生に、本件について東城大学に残存するデータを徹底的に洗い直し、どちらが生き残っているのか確定して欲しいとのこと。それが脅迫状と繋がるのね。

今回、東城大学医学部付属病院では医学知識おたくで薬のことをうんちく言ってくる情報モンスターを取り入れつつ、強烈キャラの東堂先生と、白鳥に新たに出来た部下である砂井戸が初登場。(東堂先生はどこかで名前だけ出てきたことあったっけな?)そうかと思えばバチスタシリーズ最終作ということでいつものメンバがーや懐かしい面々が集結。Ai運営連絡会議のメンバーをとっても、島津先生、笹井教授、陣内教授、彦根、桧山シオン、監察医の南雲等々。西園寺さやかや4Sエージェンシーの城崎さんも登場。名前だけの登場でも天城先生(これは驚き!)、渡海先生、速水先生、瑞人くん、島津お気に入りの技術者だった友野(『アリアドネの弾丸』で登場)、そして玉村警部補。

他にもいたと思うんだけど思い出せない^^;バチスタシリーズといっても全体的に田口&白鳥がメインって感じじゃない。過去の出来事が重要なカギになってるので、「螺鈿迷宮」と「ブラックペアン1988」は読んでおかないとわかりづらい。その他の登場人物にしても背景や人物像を知るには、過去の作品を読んでいるとよりわかりやすい。
あと、最後にコールドスリープ法案についての記載があるので、時系列は『モルフェウスの領域』の少し前と思わせる。彦根はおそらく『ナニワモンスター』に続きそうな予感。田口先生に何かあったら遠慮せずに言え、愚痴くらいなら聞いてやれるかといわれ泣き笑いのような表情をした彦根、彼はのっぴきならない状態にいるみたいだけど、一体何が起こっているんだろう?もうね、毎度のことだけど「この人物誰だっけ?」「全作品を通して時系列的にどのあたりの作品?」と悩むのは当たり前の海堂作品。今作品は海堂作品を網羅してないと誰が誰なのかわからないかも…。

Aiについてもちろんちゃんとあります。今回は県警に持ち込まれた案件。Aiが死亡解剖で見落とした虐待所見を発見したというもの。解剖をしても見逃す事案はある、そんな時、別系統からAiでチェックすれば見逃しが減る。それなのに法医学者はこのようなミスを露見してしまうことを怖れこのシステムに同意しない。要は見逃されてしまう虐待事件が繰り返されていくと。

結局、桜宮病院関連はきっちり完結しておらずなんかスッキリしない。シオンさんの変貌にも驚き。予兆あったっけ?田口先生の口調もどこか以前と違うような気がする。気のせい?歳を重ね、キャラの濃い人物と接し、あの病院長の下で働いていたら性格も変わるか(笑)。しかもあの田口先生がラストには…。まぁとりあえず今回は田口先生の意外な趣味を知ることができて良かった(^m^)

最終作ということだけど、違う本で桜宮病院関連についてはまた記述がありそう。ってか謎のままで終わった例のあの方、どこかで登場しそう…。バチスタシリーズとシリーズ名が付いてるけど、海堂作品(小説)は何かしら小さいものでも全て繋がってるような気がする。次は『ナニワモンスター』の続編だったらいいなー。こちらも早く読まないと前作との繋がりを忘れそう~。もう忘れてるけど^^;個人的には『ブレイズメス1990』のその後の天城先生が知りたいっす。

「舟を編む」 三浦しをん

『舟を編む』

舟を編む

 著者:三浦しをん
 出版社:光文社






<簡単なあらすじ>
玄武書房辞書編集部に勤める荒木は、定年を迎えるにあたり後継となる社員を探していた。そして見つけたのが営業部にいる馬締光也。営業部ではパッとしない馬締だったが、律儀で言葉に対する鋭い感覚を持ち、人とは違うところに美と喜びを見いだす彼は辞書づくりに必要な人材となる。退職しお目付役となった荒木、辞書づくりに人生を捧げている松本先生、一見チャラいが対外交渉では力を発揮する西岡、無愛想だが実務能力がきわめて高い佐々木、異動してきた岸辺らと、辞書『大渡海』を作り上げていく。そんな中、馬締は気になる女性に恋文を書くが…。辞書作りの方はそう簡単にはいかず、長い年月を費やすことになる。果たして『大渡海』は完成するのか――。2012年本屋大賞第1位。

<感想>
図書館で予約してから半年、やっと手元にやってきました!三浦しをんさんのお名前は知ってましたが、著書を読むのはこれが初めて。どんな内容の本なのか予備知識もなく読み始め、荒木さんという人が主役なんだ~と思っていたら違った^^;馬締と書いて"まじめ"さんが一応中心人物。流れとしては、荒木さん、馬締、西岡、岸辺さん、荒木先生と焦点を当ててます。

辞書『大渡海』を作り上げるのがベースになっており、それに携わっている人たちがどのように仕事をし、どのように日本語を考えているのか。"辞書は、言葉の海を渡る舟、海を渡るふさわしい舟を編む"と。辞書作りに対する関係者の長年の夢、熱い気持ちはすごい。聞き覚えのない言葉や、疑問に思った言葉は即座にメモ。普段の生活から辞書作りに対する姿勢もすごい。

今はインターネットがあり、わからない言葉はすぐネットで調べてしまいますが、学生の頃までは辞書に大変お世話になりました。小学生の頃は国語辞典、漢和辞典は必ず必要でしたもん。今の時代はどうかわからないですが、昔は一家に一冊広辞苑があったし。これだけお世話になっていながら、どうやって作られていくのかを初めて知り驚きました。実際出版社が行う辞書作りにどこまで忠実なのかはわかりませんが^^;

要領が悪く、真面目なだけの馬締のエピソードでは運命の女性が登場。なんだかよくわからない出会いから順調に進み、あれよあれよといううちに…という感じ。個人的に気になるのは西岡。チャラい男性だけど、実は勘が鋭く、彼は彼なりに気をつかい自分の出来ることを頑張っている。どの部署にいっても持ち前のキャラで自分の位置をちゃんと見つけれそうな感じ。馬締に対し苛立つこともあるものの、辞書作りの天才に「西岡さんは辞書編集部に絶対必要な人」と言われ泣きそうになる西岡に対し、私も目頭が熱くなっちゃった。。十数年後、輪をかけたようにチャラい中年になってるのには笑ったけど(笑)。

岸辺さんのエピソードでは製紙会社が登場。辞書に使う紙について書かれており、とても興味深く読めました^^辞書はページ数が多いのでいかに薄く、軽く、裏写りしないかを重視。それに加えぬめり感もいるんだとか。普段、何気に辞書を使っていたけど、利用する人にとって快適にめくれるようにちゃんと工夫されてるんだなぁ。

辞書編集部、製紙会社、板前さんとそれぞれの仕事から、何かを作り出す、生み出すという過程はそれぞれ生半端なものじゃない。やりがいを感じ達成した時の感動は計り知れないもの。そういう仕事に対する想いも伝わってくるような作品でもあるような気がします。

が、ラストに向けてなにやら嫌な予感が…。この状況はもしかして?と思っていたら嫌な予感は当たってしまった…。笑顔で本書を読み終えようと思ったのに感慨深い気持ちが残った感じです。そしてもう一つ、本書の感想を書きながら思ったこと。もし私のブログを荒木さんが読んだら「君の日本語はめちゃくちゃだ!単語の使い方も間違っとる!」ってお叱りを受けそう^^;


ところで本作品、映画化が決定し来春公開。馬締に松田龍平さん、香具矢さんに宮崎あおいさん。あまりイメージ出来なかったけど、画像を見て馬締っぽい雰囲気がめちゃ出てます^^板前の香具矢さんの方は、「自分、不器用ですから」と今にも言いそうなカッコいい美人さんというイメージがあったので、まさか宮崎あおいさんだとは!でもこの画像を見るといい感じ^^こりゃ楽しみかも~。

舟を編む

「医療防衛 -なぜ日本医師会は闘うのか-」 海堂尊

『医療防衛 -なぜ日本医師会は闘うのか-』

医療防衛 なぜ日本医師会は闘うのか (角川oneテーマ)

 著者:海堂尊
 出版社:角川書店 角川oneテーマ





<簡単なあらすじ>
日本医師会の常任理事の今村聡氏が、「医療とお金の基礎知識」「行政と報道に虐げられる医療」「日本医師会というそしき」「日本医師会の未来展望」について説明。読者の理解を容易にするため、聞き手として『螺鈿迷宮』の医学生:天馬大吉と新聞社勤務の別宮葉子が登場し、今村氏にあれこれ質問するといった流れになっています。

<感想>
巻頭の海堂氏によるはじめにを読むと、この本を読んで「日本医師会は、開業医の利益団体」ではないということを理解してほしいとのこと。だとすれば一体何の団体?どんなことをしているの?その答えが本書に書いてあるそうです。日本医師会は「医師の代表機関」。医師を代表するわけだから医療を守るための民間団体でもある。医療を守る=市民社会を守る。このことを一人でも市民に理解してもらいたいとのこと。

聞き手を小説の登場人物にしたことで、専門家から見ればかなり噛み砕いたわかりやすい説明になってるんでしょうが、全くの素人の私にはまだまだ難しく、読んで理解できていない箇所が多々…。

医療費三分の計、中医協もわかったようなわからなかったような…。
中には診察料や薬代に記載されてる点数とか、興味があったり詳しく知りたい!と思う記述もあるんですが、私には説明が難しくてイマイチよくわかりませんでした(><)。でも医療分業で、薬剤師が専門職種として技術料を取る、医療機関は処方箋を発行する技術料を医療費からもらう、処方箋をもらう薬剤師は処方箋に応じ薬剤師としての責務で調剤し、患者さんに説明をして技術料をもらう。要は、診察と薬を分けることは本来の薬の単価意外に二重の技術料が発生。薬の説明を詳しく受けれるというメリットもあるが、慢性疾患の方は何度も同じ説明はいらない。確かに!また、医療分業によって病院の収入は激減したとか。医療側の事情なんて、こんな風に説明してくれなかったら多分永遠に謎のまんまなんだろうな。

アメリカの国益と財務省の省益が一致する日本の医療市場化。この話が進まないのは日本医師会が反対しているから。なぜなら患者の負担が増えるから。税金で面倒を見ているので国民が直接支払う医療費は無料のイギリス、市場化されたアメリカ、この2ヵ国は全く違いますがどちらも高度化した医療に対応していないそうな。そうなんだ。医療費がタダなんていいなーなんて単純に思ってしまいますが、その国にはその国の諸事情があるもので、なかなか完璧とはいかない模様。医療制度のモデルになるような国を挙げるには難しく、実は日本が他国に先行。構造問題で一番影響が出ているので外国モデルはないんだそう。

東日本大震災で日本医師会は一億8500万あった災害積立金を都道府県医師会に拠出したとか、開業医は必ずしも金持ちではなく(もちろん収入が多い人もいる)比較する相手が悪い。医療は大変なのに、羽振りがいい所にだけスポットライトがあたり、正当性がある内容でも患者が傷ついたり亡くなったり、また悪いことをする先生がいるとそこにもスポットライトがあたる。メディアが悪いんだ!と主張。

また、財務官僚にとって日本医師会はイヤな存在だとか。政治力に力をもってる団体ってかなり裏がありそうな存在に見えますが、本作では財務省に意見を言える、財務省独裁を防ぐのは我々だけだ!という。

このようにいろいろと努力しているのに、メディアによって「日本医師会は、開業医の利益団体」と市民に植え付けられているので誤解を解きたい!と主張?自分たち日本医師会がいかに世の中に貢献しているか知って欲しい!日本国民のことを第一に考えてるんだ!と。

とにかく日本医師会は私たちの生活を守ってくれてるというのが言いたいみたい。確かにそうなんだろうけど、私たちにとってマイナスの部分や、日本医医師会にとって不利なことは書かれてない。なのでこれを全部信じていいのかどうか…。本当の医療を知るにはこの本だけでは難しいのかも。←偉そうなことを言いましたが素人には何を信じていいのかわからんのです…。

医師会がいかに国民のことを考えてるか、また医師会の現状を国民に知ってもらうための1冊だったかなと思いました。全体的に私にはまだまだ難しい内容だったので、もう少し噛み砕いた内容だったら嬉しかったかな~。

2012年(の何月?)、『螺鈿迷宮』の続編である『輝天炎上』が角川書店から出るとのこと。これは嬉しい!でも『螺鈿迷宮』を覚えてないんだな^^;でも今から楽しみ♪

「玉村警部補の災難」 海堂尊

『玉村警部補の災難』

玉村警部補の災難 (『このミス』大賞シリーズ)

 著者:海堂尊
 出版社:宝島社





・『不定愁訴外来の来訪者』
・『東京都二十三区内外殺人事件』
・『青空迷宮』
・『四兆七千億分の一の憂鬱』
・『エナメルの証言』

以上、田口&白鳥シリーズに登場する切れ者の加納警視正と、彼に振り回されてる部下の玉村警部補が扱った事件を集めた短編集。

『不定愁訴外来の来訪者』
不定愁訴外来で、藤原看護師が淹れてくれたコーヒーの香りを楽しみながら穏やかに過ごしていた田口公平。そこに桜宮市警の玉村警部補が、加納警視正からのお使いを持ってやってきた。警視庁から、加納警視正の出向先での活躍をレポートにまとめるようにと言われたそうで、事件の中に田口先生が関係しているのもあるため、内容を確認するためにやってきたのだった。

玉ちゃんが持ってきたここ数年で桜宮署管轄で起こった4つの事件の書類を、不定愁訴外来で振り返るという形になってます。いつもは患者が座る椅子におずおずと座る玉ちゃん。いざ座るともう何年も前からここの患者であったかのように、その場の空気や雰囲気にぴったり合ってしまうのは、玉ちゃん&田口先生、共に加納警視正&白鳥に振り回される立場で通じるものがあるみたいデス。

『東京都二十三区内外殺人事件』
2007年12月、厚生労働省の白鳥からの要請で、医療事故死調査委員会設置準備委員会で講演をすることになった田口先生は東京に出張することになった。その夜、セント・マリアクリニック産婦人科病院近くにある店で食事をした田口先生と白鳥だったが、その帰り公園のベンチで死体を発見する。白鳥の指示で死体は監察医務院に運ばれた。翌日、昨夜の店が気に入った田口先生は1人で出向いたところ、その帰りまたしても同じ場所で死体を発見する。だが搬送先が昨日と違うことに不審を抱く。署まで同行するよう言われた田口先生は加納警視正に連絡を取る。

地域によって死体の扱いが全く違うということがよくわかりました。法律上は全く問題ないにせよ、驚くばかり。ここで活躍するのがAi。厚生労働省の古い体質への言及もちゃっかり盛り込まれてます。しかし加納警視正の運転、職権乱用じゃないの~w白鳥によると、氷姫はこの時期、北の方のさる病院に潜入調査中らしい。うん、なんか北の方で病院で潜入調査している内容の本があったような気がする。なんだっけ?『極北クレイマー』だっけな。名前だけ登場するセント・マリアクリニックは『ジーン・ワルツ』の舞台となった産婦人科?この短編集は、いわゆる"桜宮サーガ"の一つってことなのかな。

『青空迷宮』
2007年11月、サクラテレビが落ちぶれ芸人を集め正月用特番を撮ってる最中、でんでん虫と呼ばれた碧翠院桜宮病院跡地に作られた迷路の中で、出演者の1人である利根川の右眼にボウガンの矢が刺さり死ぬという事件が発生。カメラが回っていたが、そこには犯人らしき人物は映ってなかった。たまたま現場近くに居合わせた加納警視正(と玉ちゃん)は容疑者を3人に絞り、翌日には犯人を特定する証拠を用意する。犯人は自分の行動を思い出す。穴はないはずだったのに…。密室といってもいい空間で起こった事件。犯人は一体どのようにして利根川を殺したのか?

殺されたのはハイパーマン・バッカスの物真似で一世を風靡したお笑い3人組"パッカーマン・バックス"の1人で、今でもピンで活躍していた。容疑者は女性ディレクター、ADで元"パッカーマン・バックス"の1人、落ちぶれ芸人となった残る"パッカーマン・バックス"の1人。設置されたカメラにも、腹部につけていたカメラにも被害者しか映ってなく、天井がない迷路の中での殺人事件のため、犯人は軍事衛星から狙撃したと言い放つ加納警視正。彼の高い捜査能力は、柔軟な発想力があるからなんだろうな~。犯人は誰だ?!とミステリらしい内容ですが、こんなにうまくいくかなぁ?加納警視正と桜宮市警の玉ちゃんの事件簿だから、"桜宮サーガ"でお馴染みの場所がよく出てくる^^ハイパーマン・バッカスも確かどこかで出てきたような気がする。小児科にいた子供(誰だっけ?)が大好きだったような…。

『四兆七千億分の一の憂鬱』
2009年4月、桜宮スキー場の山頂積雪監視小屋前で女性の刺殺死体が発見された。昨年12月頃に殺されたと思われるが、身元はすぐ割れ、桜宮科学捜査研究所DNA鑑定データベース・プロジェクト、通称DDP(※)の適用第一号の案件となったため犯人も同定。しかし容疑者と被害者の接点は全くなく、容疑者も身に覚えがないという。その容疑者の腕にはバイトでつけたという刃物の傷跡2本。当日のアリバイがなく四兆七千億分に一人の確率で完全にDNAが一致している容疑者。どこか腑に落ちない加納警視正はバイトの路線から捜査し、関係者から聞き込みを始める。
※容疑者を捜査で割り出しDNA鑑定するのではなく、現場の遺留物のDNA鑑定結果をデータベースにかけ犯人を割り出す方法

斑鳩広報官が大々的に創設をアピールしたというDDP、最新科学で容疑者が特定。四兆七千億分に一人の一致率でDNAが一致したのだから、あとはアリバイ崩しと自供だけ…と思われたが、加納警視正には何か引っかかるものが。容疑者となったのはフリーターの男性。ネトゲの世界では"バンバン"という名で有名なんだとか。玉ちゃんも絡めたこのネトゲの世界のエピソードには笑ったw玉ちゃん、一体いつしてるの?その玉ちゃんが医学について参考にしてるのが『トリセツ・カラダ』!ご自身の著書をこんなところで絡ませるとはアッパレ!

話変わり、『アリアドネの弾丸』で田口先生が関わったとされてる雪下美人殺人事件という名が出てきてたのですが、私、感想でこの事件を読んだ記憶がないって書いてます。実はこの事件、『四兆七千億分の一の憂鬱』のことらしい。そうだったのか!『アリアドネの弾丸』と『四兆七千億分の一の憂鬱』は同じ時期の話だったんですねー。

『エナメルの証言』
2009年3月、暴力団の組員の焼身自殺が立て続けに起こった。本人が書いたと思われる遺書もあり、歯の治療痕も一致しており不審な点は何もなかったが、加納警視正は納得がいかず、検案に立ち会った歯科医から話を聞くことに。すると本人かどうか確認するデンタルチャートは歯形の絵にメモを書いているだけのものだった。しかし歯科医はこれで四十二億に一人の割合で人定できるという。それでも納得いかない加納警視正は貸しがある田口先生に連絡を取り、焼け焦げ死体をAiすることになった。すると意外なことがわかった。

デンタルチャートが四十二億に一人の割合で人定できるとは驚いた!死体に対して歯の治療をするのも驚き。人定でデンタルチャートをチェックする時は必ずレントゲンも!そんな基本が守られていないのが地方における死因究明制度の実際らしい。この話に登場する栗田クンはきっとどこかでまた登場しそうな雰囲気。欲がなく争い事が嫌い、そして何といっても高度な技術を持っているので、今後の活躍(活躍というのもなんかヘンだけど)に期待!最後の章は、次回以降に含みを持たせながら、死因究明制度にモノ申すといった内容でした。

4章の前にある田口先生と玉ちゃんの会話で、「あの時までは、まさかこんなことになるなんて」「残されたものが頑張らなくては」とあるんですが、あんなこととは一体どのことだろう?今までの著書にある内容?それとも次作?

いつもどおり、医療を取り巻く体制を批判しつつも今回はそれを全面的に押し出してなく、軽いタッチのミステリで重苦しい雰囲気がなくて全体的に楽しく読めました。巻末に"桜宮市年表"がついてるのが嬉しい♪1991~2010年までの大まかな出来事、それらが書かれた作品が年表になっているのでわかりやすいです^^でも桜宮市の年表なので、それ以外のことが書かれた著書は載ってません。海堂さんの著書すべての年表あったらいいのにな。次は田口&白鳥シリーズ最終巻『ケルベロスの肖像』。既に図書館で予約済みですが、すっごい待ち人数なので年内に読めたらいいかな~。

「夜は短し歩けよ乙女」 森見登美彦

『夜は短し歩けよ乙女』

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)  

 著者:森見登美彦
 出版社:角川書店 角川文庫





<簡単なあらすじ>
京都の大学に通う「先輩」は、クラブの後輩である「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せていた。第一章「夜は短し歩けよ乙女」では、彼女を追って夜の木屋町や先斗町界隈を歩く。その頃、彼女は李白という老人と飲み比べ。第二章「深海魚たち」では、ある情報筋から彼女が古本市に行くと聞き、彼女の姿を探しに苦手な古本市に出向きく。そこで彼女が欲しがっている絵本をめぐり火鍋で勝負する羽目に。第三章「ご都合主義者かく語りき」では、彼女が学園祭に来るというので足を運ぶ。そこでゲリラ演劇に遭遇。第四章「魔風邪恋風邪」では、風邪を引いてしまい彼女を追いかけることができず…。そんなこんなで彼女の姿を追い求める途中、さまざまな珍事件に遭遇する。第20回山本周五郎賞受賞、2007年本屋大賞第2位。

<感想>
少し前にアンソロジー『不思議の扉 : 午後の教室』を読み、そこに『夜は短し歩けよ乙女』のサイドストーリーが収録されていたので借りてきました。本作品が話題になっていた当時、気にはなってましが今の今まですっかり忘れてました^^;でもブームが去ったあとなので図書館で待ちなしで借りれたので良かったかも。。

「先輩」と「黒髪の乙女」の2人の視点から描かれてます。「先輩」は「黒髪の乙女」をひそかに想ってるけど面と向かって話しかけることができず、春夏秋冬いつも彼女があらわれる場所に出向き、偶然を装い出会う、なんとか彼女の眼中に入ろうとする涙ぐましい努力。名付けて"ナカメ作戦(なるべく彼女の目にとまる作戦)"。あまりにも追いかけすぎて彼女の後ろ姿に関する世界的権威にまでなってるしw

その彼女が現れる場所を提供してくれるのが「信頼すべき筋からの情報」。この情報元がアンソロジー『不思議の扉 : 午後の教室』でサイドストーリーとして描かれてました。

なによりまず文体が独特。昭和ちっくというか大正ちっくというか。といっても尾崎豊っぽい歌詞が出てきたり、熱冷まし用シートが出てきたり、熱出した時にメールを出したり(おそらく携帯メール)と、一応は現代の設定なんだろうなぁ。

ちっちゃくて可愛らしくて最近の大学生とは思えない、不思議ちゃん系の雰囲気を持つ「黒髪の乙女」ですが、"おともだちパンチ"を披露したり、ラムを愛しておりとにかくただならぬぐらい酒豪だったり。基本は丁寧な言葉遣いなのに、たまに昭和のギャグっぽい語句が混ざったり(←これが結構可愛かったりする)。なかなか興味深いお嬢さん。

全体を通して言葉のやりとりが面白いしテンポもいいです(羽貫さんだけは現代っぽい話し方だけど)。ところどころ樋口さんのファンタジーワールドがあり非現実っぽかったり、時々難しい単語がでてきたりしますが、可愛らしくてユーモアがあって独特のリズムがあって、なんというか、他の小説とはちょっと趣が違う不思議な感じ。森見登美彦さん著書は初めて読みましたが、他の作品もこのような文体なのかな?

ところで作中で登場する偽電気ブランって実在するのかな?あったら飲んでみたいなー。

「極北ラプソディ」 海堂尊

『極北ラプソディ』  

極北ラプソディ

 著者:海堂尊
 出版社:朝日新聞出版





<簡単なあらすじ>
極北市が破綻し財政再建団体に指定された中、外科部長:今中が働く極北市民病院に世良が院長としてやってきて3つの方針を打ち出した。救急患者は受け入れず雪見市の極北救命救急センターに全面委託、入院病棟を閉鎖し常勤スタッフの削減(訪問介護は拡充)、薬剤費を徹底的に抑制するというものだった。同時に今中が大切にしていた病院の信頼と活気も奪い去ってしまった。そんな中、診察費を払わない患者を診察拒否し、その患者が死亡したことでマスコミから非難を浴びる。そんな状況の中で世良は雪見市にある極北救命救急センターに今中をレンタル派遣する。そこで速水のもとでドクターヘリでの救急医療現場を体験することに。そして今中が極北市民病院に戻ってしばらくし、極北救命救急センター長の桃倉の息子が出場したスキー大会で雪崩が発生。ドクターヘリ存続をも脅かす状況で速水はどう決断するのか。その後、ドクタージェット・トライアルのため世良と今中はオホーツク海に浮かぶ孤島、神威島へ行く。そこで世良は昔に世話になった人物に出会い、医師としての原点を見直す機会となる。

<感想>
『極北クレイマー』の続編とのことですが、内容をまったく覚えてなく、以前に自分が書いた感想を読んでも姫宮が登場したことは何となく覚えているものの、今中先生のことは悲しくなるほど覚えてません(TT)。なのでWikipediaで『極北クレイマー』のあらすじを読み、その内容を頭に入れて読むことにしました。

赤字を立て直すために再建請負人として院長に就任した世良。無謀な方法で今中には納得がいかないものの、世良の合理的なやり方に反論するすべはなく支持せざるを得ない。世良は望まれた医療をするにはそれに対応できる地盤を作ってくれと。でも役人は予算がないのでできないと。世良は、なら仕方ない、どうしようもできないと。そこを何とかするのが医者じゃないかと役人。私もお金がなくても困った患者を助けるのが医者なのでは?と思っていましたが、作中での世良の反論は確かに正論。何が正しくて何が間違っているかは、破綻した極北市では常識で推し量ることが難しい。

その世良、本作品では50歳前あたりとのこと。『ブレイズメス1990』では外科医3年目だから確かにそのぐらいの歳?『ブレイズメス1990』の世良の印象が強かったため、なんか一気に歳を取ったなーという印象。敵が多く、いつ何時でも冷静に自己分析ができる精神力を持つ世良。こんなキャラだったかな?

最初の方で、天城先生のハーレーが!えっ?どういうこと?もう!1990年以降の天城先生(スリジエ含む)の行方といい、世良がどうしてこんな風になってしまったのかわから~ん。とにかくスリジエのことで世良が深い絶望を持っていることは確かで、自ら過酷な運命を強いている。でも神威島で昔の恩師と出会ったことで何かが吹っ切れた模様。どうやら本作で極北編はひとまず終了?

そして速水先生。相変わらずの言動ですが、同僚や部下に信頼されており、そして横には花房師長。ここで「将軍の日」を体験した今中、大変な救急という現場でも優秀なスタッフが効率よく動くことで稼動することに納得。そして言い分は全く違うものの、周囲の雑音を全く意に介さないという姿勢に世良と速水を照らし合わせる今中。そういや花房さんの最後の決断にはびっくりした!そうですか、そうだったんですか。女心はムズカシイ。。

『ナニワ・モンスター』で語られる事柄とリンクする場面も登場。彦根からのメールで"村雨知事の機上八策"と書かれてたのには笑った(笑)。大阪維新の会が"船中八策"と言った後に本作書かれたのかなぁ?なにはともあれ村雨知事はやっぱ橋下さんがモデルだ(^m^) しかしドクタージェット構想の目標がここに絡んでくるとは驚いた!

あとゲスト出演のような形で登場する西野さん(『モルフェウスの領域』と同時進行?)。『医学のたまご』に桃倉という人物が登場してましたが、これって桃倉センター長の息子さん?名前だけの登場だと南雲院長や清川准教授等々も。

海堂さんの本を読むたび、頭の中で登場人物を整理するのがどんどん難しくなってきました…。『極北ラプソディ』だけでなく、その他の著書の登場人物が結構登場するので(名前だけ登場の人も含む)時系列がごちゃこちゃになり、一体どこで何がどんな風に進行しているのかもう頭の中ぐちゃくちゃ。最終的には一体どう繋がっていくんだろう?『ナニワ・モンスター』の構想は医療にどうもたらすんだろう?まだまだ始まりなのかなぁ?ってか、海堂さんの医療への提言がある限り、着地点はなさそうな気がしてきた…。

「境遇」 湊かなえ

『境遇』

境遇  

 著者:湊かなえ
 出版社:双葉社





<簡単なあらすじ>
高倉陽子、36歳。政治家の夫と5歳の男の子を持ち、自らは絵本作家となり絵本大賞新人賞を受賞。晴美、36歳。新聞記者として働いており20歳の頃から陽子とは親友。この2人はともに生まれてすぐ親に捨てられ、滋養養護施設に預けられた同じ境遇だった。陽子が絵本作家として注目され始めた頃、陽子の息子が誘拐され「世間に真実を公表しろ、白川渓谷意見を思い出せ」という脅迫状が届く。陽子は自由に動くことが出来ず晴美に協力を仰ぐ。犯人の狙いは一体?そこに隠された真実とは?

<感想>
読み終えて知ったのですが、これって昨年12月に放送されたドラマ化『境遇』のために書き下ろされた作品だったみたいです。松雪泰子さんとりょうさんが主演だったらしいですが、名前だけ拝見し、どちらが陽子、晴美を演じたのかイメージ沸きません(。-_-。) ドラマを見ていないのでなんとも言えませんが、雰囲気的にお2人とも晴美のイメージがあったり。。

本当の親を知らないもの同士という境遇の2人、20歳の時にあるきっかけで知り合ってから親友になった2人。タイトルにもなっている境遇という言葉がやたらと出てきます。まぁ確かに境遇がポイントになってるわけですが…。

『告白』のようにショッキングでもなく、『花の鎖』のように凝った関連性もなく、全体的にあっさり。←この2作品しか長編は読んだことがない私がえらそーに言うのもなんですが^^;どうしても『告白』と比較されてしまうのはちょっと気の毒ですが、あまりにも『告白』が衝撃的すぎたので仕方がないといっちゃ仕方がないような気も。

高倉陽子にしろ政治家の夫にしろ、基本的に人間が出来ておりいい意味でも悪い意味でもどこか冷静。お互いの意思を尊重しすぎなんじゃ?夫婦なんだからもっと2人で相談しようよと思っちゃいます。ってか息子が誘拐されたのにこの冷静さ(もちろん心配はしてますが)、ちょっと不自然かなー。しかも真相を語るのにどうしてあの番組を通さなきゃいけないの?もっと違う方法があっただろうに。

やはりドラマ前提で書いてるのでこういう淡々とした雰囲気になっちゃうのかな?ドラマはどんな風に仕上がってるんだろう。ドラマのHPを見るとミツコ役は野際陽子さんとのこと。ここはやっぱり本家本元にして欲しかったw

全体として面白くなりそうな内容なのに、全てにおいて淡々としていたのが少し物足りなかったです。でもこの本を読んだ後に、あるアンソロジーに入っている湊かなえさんのショートストーリーを読んだのですが、そちらは面白かったです!

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