TK.blog

好きな映画や小説etc

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「のぼうの城」 和田竜

『のぼうの城』

のぼうの城 上 (小学館文庫) のぼうの城 下 (小学館文庫)

著者:和田竜
出版社:小学館 小学館文庫

<簡単なあらすじ>
戦国期、天下統一を目前に控えた豊臣秀吉は関東の雄、北条家に大軍を投じた。そのなかに支城、武州・忍城(おしじょう)があった。周囲を湖で取り囲まれた「浮城」の異名を持つ難攻不落の城である。秀吉方約二万の大軍を指揮した石田三成の軍勢に対して、その数、僅か五百。城代・成田長親は、領民たちに木偶の坊から取った「のぼう様」などと呼ばれても泰然としている御仁。武・智・仁で統率する、従来の武将とはおよそ異なるが、なぜか領民の人心を掌握していた。三成軍使者・長束正家の度重なる愚弄に対し、予定していた和睦の姿勢を翻したのぼう様は、正木丹波、柴崎和泉、酒巻靱負ら癖のある家臣らの強い支持を得て、忍城軍総大将としてついに立ちあがる。一方、秀吉に全権を託された忍城攻城軍総大将・石田三成の表情は明るかった。我が意を得たり、とばかりに忍城各門に向け、数の上で圧倒的に有利な兵を配備した。後に「三成の忍城水攻め」として戦国史に記される壮絶な戦いが、ついに幕を開ける。往来の武将とは異なる新しい英傑像を提示した2009年の第6回本屋大賞第2位の戦国エンターテインメント小説。
(カバーのあらすじから引用)

<感想>
上巻は登場人物たちの紹介がてら、性格や位置づけのような紹介、また、秀吉から忍城攻城軍総大将に命ぜられた石田三成が、どのような野望を持っているかが描かれています。だが秀吉は、三成のことを理財には長けているが軍略の才は乏しいと思っており、さらに成田家が密かに忍城降伏の旨を知らせてきていることを大谷吉継に知らせ、後ろからバックアップし三成に武功を立てさせてやれと命じます。当然、三成はそんなことを全く知らず、吉継に内緒で戦に向け大きな野望を胸に…。

のぼう様こと成田長親、ずば抜けて背が高く横幅もあり身体つきは大きいが、強い!という印象はなく、ただただ大きいだけ。楽しげに農作業をしたがたるも、全く役に立たずただただ邪魔してるだけ。しかも馬にも乗れず、刀術、槍術、体術、あらゆる運動ができないスーパー駄目駄目ぶり。が、そんな長親を見て百姓たちは「俺たちがついててやらなきゃ何もできやしない。守ってやらなきゃ!」と思わせてしまう。バカな子ほど可愛いみたいな感じで、何かと世話を焼きたくなっちゃう御仁なのです。

関白とは戦わず降ると決まっていたのに、長親が「戦いまする」と言ったもんだから周囲は腹を決めるしかない。で、下巻はその戦いが描かれてます。兵の数では圧倒的に少なく不利な状況の忍城側がいかにして戦うか、「戦いまする」と言った長親には策があるのか?

長親は本当に不思議な人物。本当に馬鹿なだけなのか、それとも…。丹波は長親は何か持っていると思っているし、敵からも稀代の将器と称される。味方であれ敵であれ、身分も関係なく魅せられる人物のよう。

全体的に読みやすく、下巻に入ると一気に読めちゃいます。トータル的に心底イヤな人物はおらず、秀吉も三成もどこか爽やかに描かれてます(イヤな奴は正家ぐらい?)。他の登場人物も個性的でいい感じ。映画化が決まっており配役もわかっているので、当てはめながら読んだのですが、どうしても長親役=野村萬斎だけがピンとこない。未だに陰陽師のイメージが離れないのよねー^^;原作と見た目が全然違うので、映画が公開されたらどのようにのぼう様を演じているのか確かめてみよう!水攻めはどうやって撮ったんだろう?その辺りも気になるところ。

日本の歴史に疎い私は、どの人が実在してどの人が架空なのか、あるいはどこまでが史実に基づいているのがイマイチわかりませんでしが、逆にこれはこれで良かったかも。奥深く考えずに読めましたもん^^純粋にエンターテインメント小説として楽しんで読めました。

スポンサーサイト

「えてこでもわかる 笑い飯哲夫訳 般若心経」 笑い飯 哲夫

『えてこでもわかる 笑い飯哲夫訳 般若心経』   

えてこでもわかる 笑い飯哲夫訳 般若心経 (ヨシモトブックス)

 著者:笑い飯 哲夫
 発行:ヨシモトブックス
 発売:ワニブックス




<簡単なあらすじ>
笑い飯・哲夫が子供時分、先祖の命日にお坊さんが家に来てお経をあげているのを見て「それどういうことやねん、先祖に何を言うとうんねん、死んだ人らに向かってどういう意味のことを言うとうねん」とずっと思っており、また西遊記の三蔵法師が書いたと知り「なんぼほどロマンチックやねん」と思ったことから般若心経の内容を研究しようと思ったそうです。そして自ら意味を調べ独学で勉強をした結果、子供の頃からの疑問が解決し今では写経するのが好きという哲夫。そんな彼が262文字の般若心経を独特の視点から、哲夫ならではの例えを交えながらわかりやすく説明した一冊。

<感想>
数ヵ月前に芸能ニュースで笑い飯・哲夫が東大で仏教講座をしたというのを知り、そこでこちらの本が紹介されていたので借りてきました。
私もずっと般若心経ってどういう内容なんだろうとずっと疑問に思ってはいたものの、意味もわからず唱えてました^^;なので専門的な解説より、哲夫の少しおちゃらけながらも基本中の基本の解説はめちゃわかりやすい!般若心経をよくここまでお下品ネタと絡めながらまとめたなと感心。この例えがあるから逆にわかりやすく理解できたりするw

生半端な知識ではここまで自由に書けないと思うので、相当好きで勉強してきたんだろうな。頭もいいんだろうなと。あの哲夫のキャラだから許せちゃう部分もあったり。なんと言っても大好きな般若心経をみんなに知ってもらおうとえてこでもわかるぐらいやさしく説明してくれるこんな解説本、そうそうないよ?!哲夫の独自の捉え方もあるかもしれないですが、般若心経を愛する姿勢が見えてかなり好感度アップしました。(もともと笑い飯の漫才は好きですが、これからちょっと尊敬の目で見てしまいそう~。哲夫の頭の上に知性の輪が見えそう~)

般若心経の中で個人的に好きな音声というか発音の「ぎゃーてい ぎゃーてい はーらーぎゃーてい」という部分の哲夫の説明がとってもいい!ますますこの部分が好きになりました!

この本は、般若心経って大まかにこういうことが書かれているんだということを知るには最適だと思います。堅苦しくなく面白く読めるのもいい。
お下品ネタが嫌いな人や(もちろん真面目に解説してる箇所もあるよ)、もっと本格的にしっかりと正確に勉強したい人には不向きかも…。哲夫のキャラを知らないとさらに読みづらいかも…。この本でまずは大ざっぱだけど基本を知った上で、ちゃんとした(?)般若心経の解説書を読むとわかりやすいような気がします。

「悪人」 吉田修一

『悪人』   

悪人(上) (朝日文庫) 悪人(下) (朝日文庫)

著者:吉田修一
出版社:朝日新聞出版 朝日文庫

<簡単なあらすじ>
長崎郊外の漁村に祖母と住んでいる土木作業員の祐一(妻夫木聡)は祖父母の面倒を見ながら孤独に暮らしていた。一方、佐賀市郊外に住む紳士服店に勤める光代は双子の妹と2人で暮らしており、地味で彼氏もなく職場に行くだけの孤独な生活をしていた。この2人が出会い系を通し知り合い互いの孤独感を埋める存在だと気づくが、祐一は光代に出会う前、同じように出会い系で知り合った女性:佳乃を殺害していた。やがて警察は祐一を容疑者として追跡するようになり祐一と光代は逃避行し始める。この事件によって被害者佳乃の両親、事件が起こる前に佳乃と会っていた大学生の増尾、祐一と同居している祖母の房枝らの心ドラマも描いている群像劇。

<感想>※ネタバレしてます
映画を観て2人の心理・映画化にされるにあたり削られた部分が知りたくて原作本を購入。映画を観てから読んだのでもっと重い雰囲気の本だと想像していたんですが、なんだかシナリオを読んでるみたいな、全く別の第三者が「こんな事件があり、こんな背景でした」と朗読しているような感じがしました。

映画を観た後だとどうしても人物や情景を想像する時、映画のシーンが頭に浮かんでしまいますねー。祐一の背が高いことには「ん?」と思ったものの、私の中では妻夫木くんと深津絵里さんの2人のイメージがすでにがっちり出来上がった状態。もし他の俳優さんだったら…とはもう想像できません^^;

途中から事件に関わっている人物やその周囲の人たちの供述のようなのが書かれており、それぞれの人物像の補足のような役割をしていて、映画より人物像が少しはっきりしたかも。

祐一はずっと孤独感を持って生きてきたと思ってたんですが、今まで寂しいと思ったことがなく寂しいというのがどういうものさえわからなかったと。佳乃を殺してしまってから寂しく感じるようになり自分の話を誰かに聞いて欲しい、伝えることができる誰かに会いたいと思うように。「もっと早く光代と出会いたかった」と言ってますが、祐一の心理状況を考えると事件が起こる前に会っていたら光代のことをここまで思わなかったんじゃないかとふと思ってしまった。。

なので出会い系で知り合いその日のうちにホテルに行き、次会った時には殺人のことを聞かされそのまま逃亡…いくらなんでもこんな短時間でまだよく知らない相手なのに、人を殺したと聞かされ一緒にいたいと思う?とかなり疑問でしたがやはりその疑問は払拭できず。2人の人物像がわかればわかるほどやはり逃亡劇は少し浅はかな行為だったんじゃないかと…。お互いそれぞれが相手じゃなくてもよかったんじゃないかと。

また祐一が母親にお金をせびっていたという話、映画では理由を明かしてなくずっと気になってたんです。でも原作では「どっちも被害者にはなれんたい」と。これはかなり大事な言葉じゃなんじゃ?母親に負い目意識を感じさせないように欲しくもないお金をせびる行為は、捕まる前に光代にした行為と同じ意味合いがあるってことだよね?

祐一の供述によって、自分が無理やり連れ回したと光代を庇っている発言してることが原作でははっきりと書かれてました。その供述を知った上での光代の供述も書かれてるんですが、あのラストの台詞、ますます真意がわからなくなってきました(><)。祐一の供述を信じ本当にそう思ったのか、祐一の優しさを尊重し被害者のフリをしたのか…。私には難しかとよ~。

一体誰が悪人なのか…やはりそれぞれの立場によって悪人となる対象は違ってくると思うのですが、祐一に対し少しでも同情、あるいは佳乃を自業自得と思った時点で佳乃の両親からみれば私も悪人。悪人とは誰かという問いは誰に同情するかという読み手にも含まれそう。

あくまでも個人的意見ですが、映画を観て原作本を読んだ感想としては映画の方が良かったかなと。それぞれの心理は原作より言葉少ないですが、今思えば逆にそちらの方が良かったかも。映画を観て原作本、原作本を読んでから映画とパターンが違うと映画感想も若干違ってきそうな作品でした。

P.S 吉田修一さんの著書を読んだのは初めてと思ってたんですが、どうやら過去に読んだ『横道世之介』と同じ著者みたい。そうだったんだ~。雰囲気が全然違うから全く気付かなかったです^^;
それとネットで注文する時に、妻夫木くんや深津絵里さんが表紙ではないのを注文したはずなのに届いたのは妻夫木くんや深津絵里さんが表紙!あれー?と思っていたら通常の文庫本のカバーの上に映画バージョンのカバーが二重になってた(笑)。
しかもその表紙の裏には原作者:吉田修一さんと映画監督:李相日さんの特別対談が記載されてました~☆

「がんばれ、ジーヴス」 ウッドハウス

『がんばれ、ジーヴス』  STIFF UPPER LIP, JEEVES

がんばれ、ジーヴス (ウッドハウス・コレクション)

 著者:P・G・ウッドハウス (Pelham Grenville Wodehouse)
 訳者:森村たまき
 出版社:国書刊行会 ウッドハウス・コレクション 




<簡単なあらすじ>
『ウースター家の掟』の数ヵ月後、バーティーのもとに旧友スティンカーがやってき婚約者スティッフィーが重大な頼み事があるのでトトレイ・タワーズに来て欲しいと告げるが、ここに嫌な思い出しかないバーティーは断る(※『ウースター家の掟』参照 )。一方、ガッシーからマデラインとの婚約が危機に直面していることを聞いたバーティーは、もし2人が別れてしまうとマデラインの結婚相手が自分に回ってくるという現実を阻止するため彼らがいるトトレイ・タワーズにジーヴスを連れて結局出向くことになった。そこではガッシーがコックとして働いているエメラルドを気に入り恋愛事情がややこしくなっており、パパバセットのコレクションをめぐり一悶着あったりとドタバタ劇を繰り広げることとなる。シリーズ11弾の他に短編『灼熱の炉の中を通り過ぎてきた男たち』『驚くべき帽子の謎』『アルジーにおまかせ』の3編を収録。

<感想>
はやいもんでもう11弾?!同じようなパターンなのに毎回毎回よくここまで面白いドタバタを思いつくなぁと感心。
『ウースター家の掟』でヒドい目にあい、数ヵ月経った今もトトレイ・タワーズに恐怖を抱いてるバーティー。ここには絶対行くもんか!と思っていたはずなのに行くハメになってしまったのは…、そう、ガッシーとマデラインの仲に亀裂が入ろうとしているから。この2人が別れるとマデラインの結婚相手がバーティーに変更されてしまうからなのだ!彼女と結婚するのがどうしても嫌なバーティー、なんとかしないとという必死の思いでトトレイ・タワーズに乗り込むのですが…。

スティッフィーからのお願いは聞いちゃいけないよ~と思いつつ、女の子からのお願いは断れないバーティー。基本、女性には優しいのよね~。留置場に入ってもスティッフィーの立場を考えるよい人なのに彼自身は全く報われないないなんてお気の毒~(><)

スティッフィーにまたしてもいいように振り回され、案の定バーティーは汚名を着せられるだけでなく変人レッテルを貼られお気に入りのハットまで没収されるわけで。そしていつものごとく周囲はめでたしめでたしと(笑)。バーティーの周囲ではいつも恋愛事情がバタバタしているなぁ。。ある意味平穏な世の中だわ^^;まぁいつもとほぼ同じパターンなので安心して読めるシリーズでした。

『灼熱の炉の中を通り過ぎてきた男たち』
漫才をしている2人バーミーとボンゴは漫才のリハーサルの練り上げをするために行った場所で1人の女性を2人が同時に好きになってしまうという話をエッグ氏にクランペット氏が語る。聖職者の娘には近づくなという教訓?!

『驚くべき帽子の謎』
超名門店でシルクハットを購入した男性2人だが両人揃ってサイズが合わない。それぞれ恋心を抱いている女性の反応は…?という話を入院中のビーン氏のお見舞いにきたクランペット氏が語り出す。なぜ気付かないの?という素朴な疑問はありつつも面白い!終わりよければ全てよし?!

『アルジーにおまかせ』
バーティーの友人ビンゴ夫妻の話。質入れしたカフリンクを取り戻すのに5ポンドをなんとか手に入れようとするビンゴ。ちょうどその時"赤ちゃんコンテスト"が開催されており我が子を友人に託すが・・・。これを読んで思うこと、誰もがビンゴの赤ちゃんの顔を見たいと思ったに違いないw

やっと読み終えたシリーズ11弾。もう12弾の発売は決まってるのかな?油断してると次々に出るのでマメにチェックしないと!

「横道世之介」 吉田修一

『横道世之介』   

横道世之介

 著者:吉田修一
 出版社:毎日新聞社





<簡単なあらすじ>
1980年代半ば、横道世之介は大学進学のため長崎から東京へ出てきた18歳。あれよあれよと入ってしまったサンバサークルに在籍しながらバイトに明け暮れる毎日。お気楽な性格でどこかぬけているが、我が家のように友人宅に泊まり込む図々しさも持ち合わせてたりもする。年上の女性に憧れつつ現実は浮世離れしたお嬢様がそばに。そんなどこにでもいる平凡な青年の一年を描いたストーリー。

<感想>
世之介のバイトする姿、サンバサークルで腰をフリフリする姿、友人たちとの他愛もない会話、年上の女性に憧れ有頂天になる姿、お嬢様とのお付き合いに戸惑う姿など、普通の大学生でほのぼの系だなーと。吉田修一氏の著書は初めて読んだのですが、著者の描き方がうまいのか世之介のキャラいいのか(←どっちでも同じことか(笑))面白い。
コインランドリーでガラスに映った自分を見ながら腰をフリフリサンバの練習する姿には笑える。世之介って面白い。

淡々としているんだけど読んでいて楽しい♪青春ってイイなと自分の学生時代を思い出しながら読んでいたんですが・・・が・・・、読んでいる途中で思いもしなかったことが。そこからそのことを前提に読むしかないのですが読み終わったあと胸が締め付けられそうに。じわっときます。

1980年代の話の間に20年後の話がところどころ盛り込まれており、主要登場人物たちの現在の生活が描かれておりふとした瞬間に学生時代を思い出してます。

作中の文章のはじめに「○○。これが世之介である」という書き方が何度かありちょっと気になってたんですが、これって20年後が今という形で主要登場人物の今の暮らしを描いており、その中で世之介のことを「そういえば…」と、思い出してるからすぐあとの80年代の話が「○○。これが世之介である」って始まるんだ。読み終わって気付いた!要は回想録みたいな感じ?あれ?いや違うな。80年代の話があり、世之介の現在を知るために20年後の話をインサートしているってことかな。ん、どっちだ?どっちでもいいか^^;

なんできっかり1年間だけなんだろう?大学2年~卒業、その後世之介は誰と出会ったんだろう、どんな恋をしたんだろう。と描かれている1年間以外の世之介も知りたくなっちゃうほどですがこの1年間の世之介だけで十分わかるような気も…。

特に目立つ存在ではない世之介ですが、数十年後、それぞれが自分たちの人生を歩んでいる時がっつりではなく何気にふと思い出した時に「元気にしてるかなー」と目を細めてしまいたくなるそんな存在。いい意味で想像していた雰囲気の内容で、途中からいい意味で想像を裏切られた内容で良い一冊でした。

「天地明察」 冲方丁

『天地明察』   

天地明察

 著者:冲方丁
 出版社:角川書店 角川グループパブリッシング





<簡単なあらすじ>
江戸時代四代将軍・家綱の頃、安井算哲の子である渋川春海は碁打ち衆の1人として公務に就いている。ある日、江戸の神社で絵馬に書かれた算術問題に対し短時間で解答した関という男に対し春海は、感動をおぼえると同時に彼に挑戦すべく算術問題を考える。一方で老中の酒井から指導碁として指名された時、思わず今の生活は退屈だと口を滑らしてしまう。「退屈ではない勝負が望みか」と聞かれ自分がそれを望んでいたことに気付く。その後、酒井から北極出地の公務を与えられ、結果、のちに大事業を行うことになる。800年程前からの暦・宣明歴を日本独自のものに改暦するまでをベースに渋川春海の生涯を描いた作品。

<感想>
1月頃図書館に予約をしており、2010年本屋大賞に選ばれた4月に手元にくるなんてなんてリアルタイムなんだろう!かなり嬉しいぞ。

まず、この本を読むまで暦の由来なんて考えたこともなかった…。難しそうなテーマだなと思ってたのですが暦のことや時代背景、数学や天文学のことがよく分かっていない私でも面白く読めました。正直に言えば数式のくだりや天文のくだりはイマイチついていけてなかったけど(笑)。と、イマイチわかってないのに春海が感動する場面では私も感動。涙する場面では涙。。

神社に奉納される絵馬に算術の発表、宣伝、そして質問&解答し会う算額奉納は全く知りませんでしたがコレって面白いなぁ。この時代の流行や背景、朝廷と幕府の関係なども描かれているので結構勉強にもなったかも^^

最初は淡々とした文章でこのまま進むのかなと思ってたら…途中からびっくりするほど物語に引き込まれてしまった。義兄・安井算知がいるため、春海は長子であり二代目でありながら立場は次男という中間的なポジション。大事業を成し遂げた英雄のような感じではなくちょっとのほほんとして雰囲気。大事業に携わるまで、そしてその後の主人公の気持ちが丁寧に書かれており、最初はあまりパッとせず自分の意志をあまり大きな声で言わないタイプだったのに後半では見違えるように。

一つにはいろんな出会いがあってからこそ。春海にとって算術だけが喜怒哀楽の感情をもたらす存在。それに火をつけたのはまず関孝和。最初はなかなか会うことが出来ず春海の感情は高まるばかり。
あと意欲みなぎる本因坊道策、律儀で気配り抜群で優れた算術の腕前を持つ会津藩の安藤有益、幼い頃からの師である山崎闇斎、民の生活向上を貫いた会津肥後守の保科正之、豪快な水戸光圀、観測隊長の建部昌明、副長の伊東重孝などなど。
解答さんこと関は最初全く姿を出さなかったので、「一体誰だ?」と既に登場している人物の中から探そうとしていました^^;

挫折や失敗、周囲の死、さまざまな葛藤を乗り越えていろんな人から託された夢を諦めずに貫く。春海1人では決して成し遂げることは出来ず多くの人からの助言と叱咤激励、そして多くの人のさまざま分野での知識、支援があったからこそ出来たわけで。

個人的に好きなのは建部昌明と伊東重孝が登場する場面全て。笑ったり悲しくなったり…。学問を深く究めるためなら立場・年齢に関係なく学ぼうとする姿勢、若者に期待を込めて夢を託す、探求心だけでなく会話も面白くて無邪気ですらある。「頼みましたよ」「頼まれました」というセリフには痛いほど想いが込められていたんだなぁ(TT)。

まさに人生を賭けた大仕事をここまで面白く読ませるのには冲方丁氏の力なんだろうな。というか冲方丁氏をこの本で初めて知ったのですが、他にどんな本を書いているんだろう。読み終えて2010年本屋大賞に選ばれたのに納得。この作品はドラマ化したら面白そうだなぁ。渋川春海は…大沢たかお?!ああダメだ、南方仁のイメージがあるからどうしても大沢たかおしか浮かばない…

「ジーヴスの帰還」 ウッドハウス

『ジーヴスの帰還』  JEEVES IN THE OFFING

ジーヴスの帰還 (ウッドハウス・コレクション)

 著者:P・G・ウッドハウス (Pelham Grenville Wodehouse)
 訳者:森村たまき
 出版社:出版社:国書刊行会 ウッドハウス・コレクション




<簡単なあらすじ>
ダリア叔母さんから電話がかかってきブリンクレイ・コートに行くことになったバーティー。滞在客はトム叔父さんの仕事関係のクリームの妻と息子、マルヴァーン・ハウス元学校長のアップジョンとその義理娘フィリス、そしてバーティーの元婚約者ボビー。さらに執事を装った神経科医のグロソップまで。不安はその前にやってきた。タイムズに全く身に覚えがないバーティーとボビーの婚約発表の記事が載っていたのだ。ブリンクレイ・コートでボビーに真相を確かめたところ、彼女なりのあるアイディアがあるとのこと。それだけでなくさらに困難な事が待ち受けていた。シリーズ第10弾で短編『ジーヴスとギトギト男』『ポッター氏の安静療法』も同時収録。

<感想>
ボビーはバーティーの友人であるキッパーと相思相愛で、彼とうまくいくためにバーティーを利用。グロソップはある目的のために執事を装う。バーティーはクリームの息子ウィルバートがフィリスにプロポーズするのを防ぐという任務を与えられるが、なぜかキッパーとフィリスが婚約。推理小説家のクリーム婦人は執事を装ったグロソップを本当の執事ではないと疑っている。トム叔父さんが溺愛しているウシ型クリーマーが紛失しなんでもくすね盗るという噂のウィルバートが犯人とバーティーとグロソップは考える。

これだけでも波乱ずくしなんだけど、しわ寄せはもちろんバーティー。しかしシリーズ第10弾となるとどう感想を書いたらいいのやら…^^;といっても飽きたとかそういうのではなく相変わらず愉快で面白い!というのは変わらず。二転三転し、ひっくり返ってまた二転三転という感じ ←説明しづらい~。

険悪な仲だったグロソップが小学校時代にバーティーと同じいたずらをしたことがあるという事でそれから徐々に仲良しさんに。あとがきにも書かれてますが実は険悪状態から仲良しになるのは今回が初めてではなく『サンキュー、ジーヴス』でもそういう状況だったみたい。そういえばそうだったかも…となんとなく思い出しました^^;自分のブログ内を探してみると3年前にこの本の感想をUPしておりそんな内容を書いてた(笑)。こんな私なので時代設定があやふやでもウッドハウスがキャラクターに対しての無雑作でもさほど気にならず^^

ジーヴスよりインパクトあったのはバーティーの元婚約者ボビー。彼女は自分でちゃんと解決出来る子(やり方は豪快だけど^^;)なのに、なぜか周囲を巻き込んで引っかき回す。さらにここぞという場面で余計なことをしたりその場をさらに悪い方向へ持っていく。それでいて悪いのは全てバーティーのせいに。。いつもと同じくバーティーは損な役回り。そして周囲の者は問題解決し万事OKっと(笑)。
登場する女性陣は、強かったりインパクトある風貌だったりぽわ~んとしてたり。皆特徴あるなぁ。

そのボビーの自分で解決する様は同時収録されてる『ポッター氏の安静療法』で発揮。出版社社主のポッターがレディ・ウィッカムに招待され、そこで令嬢のボビーのある計画に巻き込まれるという話なのですが、ジーヴスとバーティーは登場しないものの、自分で問題解決するボビーの聡明さというかずる賢さというか小悪魔ぶりはなかなか!
『ジーヴスとギトギト男』の方はどこかで読んだことがある…って思っていたらハヤカワミステリマガジンで読んだんだった。←これもあとがきを読んで気付いたんだけど^^;「執事とメイドは見た!」という特集があり購入した記憶がよみがえってきました。

訳出もまだまだ続くらしいので次作は楽しみ♪早く出してくれないとまた登場人物たちや過去の出来事が頭から抜けていっちゃうよ~(><)。

「忙しい死体」 ウェストレイク

『忙しい死体』  THE BUSY BODY

忙しい死体 (論創海外ミステリ)

 著者:ドナルド・E・ウェストレイク (Donald E. Westlake)
 訳者:木村浩美
 出版社:論創社 論創海外ミステリ  




<簡単なあらすじ>
父親の後押しでギャングボスの右腕になったエンジェルは仲間チャーリーの葬儀に出るが、その夜、ボスから埋葬された死体を掘り起こせと命じられる。生前チャーリーは運び屋をしておりヘロインを縫いこんだスーツを着て埋葬されたのだ。いざ墓を掘り起こしてみるとあるはずの死体が消えていた。エンジェルは死体の行方を追うことになるが、葬儀屋は殺される、謎の女性が立ち塞ぐ、警官が執拗に追いかけてき死体探しは難航する。一体どこに何のために死体は消えたのか?

<感想>
ギャングでありながら仲間の死体が消えたことにで探偵のように周囲を調べていくエンジェル。だけど本来探偵じゃないしギャングとしても優秀ってわけじゃない。
要はこの主人公はぱっとしてないんです。。父親以上に出世したことを喜び必要以上に世話を焼きたがる母親がいるぐらい^^;
めちゃくちゃギャングになりたくてなったわけのではないのでこっち方面の能力があるわけでなく、女性にモテるようなタイプでもなく、洒落た会話が出来るわけでもない。ボスにも見放されそうになる始末。かといってヘタレでもなく慌てふためくってわけでもなかったり。。いたって凡人の主人公。

真面目に死体を捜していく上で、凡人エンジェルがトラブルに見舞われる過程はまぁ面白いです。
あとがきによるとこういうパターンを"巻き込まれ型サスペンス"らしい…。ドートマンダーが生まれる前に書かれたこの作品はハード路線からコメディタッチ路線へ変わっていく途中となる位置付けなんだそうな。
うん、確かに軽くハードボイルド調も入ってるし、なんとなくコメディまではいかないけどそっち路線に入ろうとしている雰囲気はある。

でもどうして原書刊行が1966年のこの作品が今頃に出るんだろう?とりあえずウェストレイクの翻訳本が読めたのは嬉しい^^

「泥棒が1ダース」 ウェストレイク

『泥棒が1ダース』 現代短篇の名手たち3   THIEVES' DOZEN 

現代短篇の名手たち3 泥棒が1ダース (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 著者:ドナルド・E・ウェストレイク (Donald E. Westlake)
 訳者:木村二郎
 出版社:早川書房 ハヤカワ・ミステリ文庫




<感想>
・著者による序文
・ドートマンダーシリーズ10編
・ジョン・ラムジー1編 
以上からなる短編集。

冒頭からウェストレイクワールド満載の序文が入ってるのが嬉しい^^序文といってもただの序文ではなく、ドートマンダーがパートナーのように描かれており各編を執筆するにあたったエピソードが書かれています。
お馴染みドートマンダーの仲間であるアンディー・ケルプ、自他共に認める嫌われ者の故買屋アーニー・オルブライトも時折登場。2人ともドートマンダーの脇役だけれどそれぞれちゃんと自分の仕事をしてたりしてなかったり。どっちだよ(笑)。ドートマンダーの同居人メイの登場が少ないのが残念!

依頼主から無理やり連れていかれ強盗を頼まれるが依頼側にトラブル発生したり、銀行の金庫室に盗みに入ったら先約の強盗がいたり、おとり作戦を目の当たりにしたり、犯人じゃないのに犯人扱いされたり、盗んだ宝石を苦労して故買屋に持っていったらガラス玉だったり…
相変わらずトラブルに巻き込まれ一筋縄で泥棒が出来ないドートマンダー。天才なんだかドジなんだか^^;最初から最後まで計画通りに事が進んだことって今まであったっけな?ないよね?それででもそのトラブルを最後には自分の有利な方へ転換したり、ユーモアたっぷりでシメてくれるので読んでていて爽快。

ドートマンダーが時々使うジョン・ディダムズという偽名、他の短編の中でも結構使われてるのかな?んで毎回名前の説明をしてるんだろうな(笑)。

ドートマンダーの仲間たちが大勢登場する長編も面白いですが、登場人物が少ない短編集もシンプルで面白いです^^『ドートマンダーのワークアウト』は序文を読んでないと何の話?って思っちゃう。意味をわかった上で読むと面白いけど(笑)。

お気に入りは短編は、ポーカーのメンバーがローレンス・ブロック、ジャスティン・スコットという面白い設定でタイトル通りユニークな内容の『泥棒はカモである』、アーニーの用心さと冴えない冗談が堪能できる『雑貨特売市』、その日に限り泥棒にとって絶望的と思われるアクシデントにあう『今度は何だ?』、ドートマンダーの分身(?)の話『悪党どものフーガ』かな。

巻末の解説によると主人公のDortmunderを英語読みにするドートマンダー、偶然にもDon't munder(殺すな)というアナグラムでもあるそうな。前からドーマンダーシリーズを読んできましましたが全く気付かなかった…言われてみればそうーだ。今まで気付かなかっただなんて恥ずかしい…

「P・G・ウッドハウスの笑うゴルファー」 ウッドハウス

『P・G・ウッドハウスの笑うゴルファー』  WODEHOUSE ON GOLF

P・G・ウッドハウスの笑うゴルファー

 著者:P・G・ウッドハウス (Pelham Grenville Wodehouse)
 訳者:岩永正勝/坂梨健史郎
 出版社:集英社インターナショナル




<あらすじ>
・「ゴルフは非情」
普段は臆病で内気なラムズデン、とびきり美人で男性から賞賛を浴びるのに慣れているユーニスに恋していたがいつも軽くあしらわれていた。混合競技でペアを組んだ2人。コースに出ると性格がガラリと変わってしまうラムズデンに対しユーニスは…
・「恐怖のティーグランド」
体格のいいシドニーはアグネスを愛していたが、彼女は知力があるジョンとマクマードにゴルフの試合をさせ勝った方と結婚するつもりでいた。だが2人ともアグネスとの結婚は望んでなく彼女の前でいかに自分が負けるかというお粗末なゴルフを展開。果たして勝負の行方は?
・「ルールは厳正」
だらだらプレーしてる前組にボールを投げ込むせっかちなウイルモッド。だがボールが当たったのは彼女の父親だった。その父親が最低レベルで争う理事長杯に出ることになり、案の定だらだらとプレーが続く。後方ではボールを置いてクラブを振り上げる若者の姿が…
・「道化師よさらば」
アンガスの婚約者エヴァンジェリンは手品を披露する軟派なレッグズに夢中。ゴルフ競技に出たエヴァンジェリンはアンガスを追い払いレッグズを伴うことにするが、ゴルフを愛するエヴァンジェリンの前で大失態をやらかしてしまう。
・「ゴルフさえあれば」
冴えないアーネストは絶世の美女クラリスと結婚した。最初は彼のことを嫌っていたクラリス、アーネストはどうやって彼女のハートを射止めたのか?
・「意外な弱点」
婚約したアグネスとシドニー、2人が離れている時にアグネスはそこで出会った大尉と婚約してしまう。落ち込むシドニーだったが彼にも新しい婚約者が出来る。だが互いのパートナーとコースに出た時、ゴルフに対する愛情の差を感じることとなる。

<感想>
主にゴルフ場のクラブハウスで最長老メンバーによって語られています(釣遊亭で語るマリナー氏ものもあり)。真面目に心からゴルフを愛する者たちによる愉快で楽しい恋愛短編集。

ゴルフは生活に欠かせないもの、そこに愛が入ってきてゴルフを通して真実の愛を見つける。ゴルフで男女の仲がまとまったりゴルフ人生をも変えてしまう危機だったり…。でも結果は…ゴルフこそ幸せ!
とにかくゴルフの中に真実の愛があり、そして忘れてはならない笑いもあるのだ。ゴルフのプレーもさることながらそれを面白おかしく描くのはゴルフを愛してるウッドハウスならでは。

文藝春秋社と国書刊行会のお陰でウッドハウスの本を読む機会が多くなった。で、感想もずっと書いてきた。なのでウッドハウス著書がいかにユーモアあり面白いか…という感想はもう書き飽きたかも(笑)。事実どの本を読んでも面白いんだからしょうがない。。

ゴルフものは『ゴルきちの心情』『ゴルフ人生』を読みましたが、まだまだゴルフものは沢山ある!『笑うゴルファー2』『続・笑うゴルファー』出ないかなぁ。もちろんウッドハウス・コレクションやP・G・ウッドハウス選集からでも大歓迎♪

このカテゴリーに該当する記事はありません。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。